HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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小説

【書評】 その木に祈れば願いが叶う 『クスノキの番人』

とある町の名家で育った千舟は、人々が祈りにやって来るクスノキを、長きに渡り、守ってきた。とある事情により、その番人を突然、自身の甥、玲人に託すことになる。 千舟と玲人は、伯母と甥の関係ではあるが、異母妹の息子でもある玲人とは、様々な事情があ…

【書評】 その木に祈れば願いが叶う 『クスノキの番人』

とある町の名家で育った千舟は、人々が祈りにやって来るクスノキを、長きに渡り、守ってきた。とある事情により、その番人を突然、自身の甥、玲人に託すことになる。 千舟と玲人は、伯母と甥の関係ではあるが、異母妹の息子でもある玲人とは、様々な事情があ…

【書評】 その木に祈れば願いが叶う 『クスノキの番人』

とある町の名家で育った千舟は、人々が祈りにやって来るクスノキを、長きに渡り、守ってきた。とある事情により、その番人を突然、自身の甥、玲人に託すことになる。 千舟と玲人は、伯母と甥の関係ではあるが、異母妹の息子でもある玲人とは、様々な事情があ…

【書評】今の日本を予知していた?『河童』

著者である芥川龍之介が自殺した1927年に発表された小説。芥川の晩年の代表作であり、命日である7月24日が「河童忌」と呼ばれるのもこの由縁らしい。世の評価では当時の社会を痛烈に批判した作品のようであるが、私はありのままの人間の姿を河童に見立てて、…

【書評】日々の変化、楽しんでますか?『なずな』

赤ちゃんというのは求心力があり、周りの者を魅了して惹きつける。可愛いから?なずなを読むとそれだけではない何かを感じる。田舎が舞台のなずなと周りの人達との見えない縁の物語。都会のストレスに疲れた方に読んで欲しい。 主人公は40代半ばの新聞記者の…

【書評】例外のあるところに尊厳はない。『装甲騎兵ボトムズ 孤影再び』

32年の眠りからの覚醒。しかしそれは、新たな戦いと、愛する者との別離を招いただけの、彼にとって辛く不幸な出来事であった。その、「異能者」とも「神殺し」とも、或いは「触れ得ざる者」ともあだ名される男の目覚めの物語『赫奕たる異端』で起こした、後…

【書評】例外のあるところに尊厳はない。『装甲騎兵ボトムズ 孤影再び』

32年の眠りからの覚醒。しかしそれは、新たな戦いと、愛する者との別離を招いただけの、彼にとって辛く不幸な出来事であった。その、「異能者」とも「神殺し」とも、或いは「触れ得ざる者」ともあだ名される男の目覚めの物語『赫奕たる異端』で起こした、後…

【書評】そして祈った。自分にも、長い眠りを与えて欲しい、と。『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』

2007年から2008年に掛けて全12話のOVAが発売され、更に2009年1月には劇場版が公開されたアニメ作品のノベライズである本作は、メインで脚本を手掛けた吉川惣司氏の手による。『装甲騎兵ボトムズ』は、体長約4mのATというロボットを駆る主人公キリコ・キュー…

【書評】そうだ。俺の過去をズタズタにしたのは、あいつだった。『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』

放送終了後に制作されたOVAの三作目として、1988年3月に発売された『レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』。本書も、『ザ・ラストレッドショルダー』同様、OVAの脚本を書いた著者が小説化したものである。今回は、テレビシリーズ以前の出来事を描く…

【書評】あのとき俺は、生まれて初めて心から願った。生き続けたいと。『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』

本書の著者である吉川惣司は、アニメ監督、脚本家、演出家、アニメーター、舞台演出家と幅広い才能の持ち主である。劇場版第一作目にして決定版と名高い、『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の監督、脚本、絵コンテ、演出をした人と言えば分かりも早いだろうか…

【書評】俺の安息の場所は、戦いの中にしかないんだ。『装甲騎兵ボトムズ III サンサ編』

「どこだ・・・・・・ここは」追い求めたフィアナをその手にし、キリコ・キュービーは神聖クメン王国の崩壊時、大気圏脱出用小型機で炎熱の古都から脱出した筈だった。しかし、漆黒の宇宙に飛び込んだとき、行く手に現れた巨大な光の塊に脱出機ごと二人は取…

【書評】ここへ来たのは、なにもかも忘れるためだ。『装甲騎兵ボトムズ II クメン編』

「気の狂うような熱さと湿気、熱病と死を運ぶ虫共、緑に塗り込められてはいるが・・・・・・ここは地獄に違いない」映画『ブレードランナー』の街並みを模した様なウドの街から一転。今度の舞台は、映画『地獄の黙示録』がモチーフと判然できる。だが、その…

【書評】あれは俺の運命に深く関わっているらしい。そいつはどんなさだめだ?『装甲騎兵ボトムズ I ウド編』

『装甲騎兵ボトムズ』は、1983年4月1日から1984年3月23日まで、全52話がテレビ東京系で放送されたテレビアニメであり、そのノベライズ第一弾が本書だ。しかし、出版されたのは2002年で、なんと放送終了18年後。何故、わざわざ、いまさら? しかも、執筆して…

【書評】いや、認知症小説って、そんなばかな。『世界はゴ冗談』

処女作品集『東海道戦争』を読んだ直後、今度は最新作をと思い手にした本書の初出は2015年4月。当時の筒井康隆は御年80歳である。2021年に『ジャックポット』という本も出ているのだが、そちらはどうやら私小説っぽいので本書を選んだのだ。 初っ端からいき…

【書評】どうせなら最も古い作品を読んだろか。ということで、『東海道戦争』

ここ数年、改めて筒井康隆の短編集をぽつらぽつらと散発的に読んでいる。しかし、あまりにも長い執筆年数、あまりにも多い作品の数に途方に暮れたおれは、いっそのこと最古と最新を読んでやろうと決めた。そこで、1965年に刊行された処女作品集『東海道戦争…

【書評】村上 春樹作品を読んで『海辺のカフカ 上・下』

主人公「カフカ」ともう一人の主人公「ナカタさん」の物語、読者の想像力を掻き立てる、とても不思議で壮大なファンタジー小説。 物語は、主人公である15歳の少年「カフカ」が父親との関係に悩み、家出をし、四国に向かう冒険旅から始まる。 一方、もう一人…

【書評】どっちかって言われたら、好きなものを語っていたい。『麦本三歩の好きなもの 第一集 』

『君の膵臓をたべたい』でおなじみの住野よるの作品。麦本三歩は天然で忘れっぽく、怒られてはへこみ、褒められると調子にのる。彼氏と別れて悲しんだと思えば、独り身の身軽さを楽しんだりもする。特別なことは何もない、平凡で愛おしい三歩の日常に、つい…

【書評】四面楚歌の語源とは?『項羽と劉邦』

あれ? 司馬遼太郎なのに中国の歴史小説? そう思いながら読み始めたらこれが滅法面白い。上・中・下と結構な長さであるが一気に読める。紀元前の中国。大陸を初めて統一した秦の始皇帝であったが、その非情なる圧政は民を疲弊させていた。不平不満が募る中…

【書評】四面楚歌の語源とは?『項羽と劉邦』

あれ? 司馬遼太郎なのに中国の歴史小説? そう思いながら読み始めたらこれが滅法面白い。上・中・下と結構な長さであるが一気に読める。紀元前の中国。大陸を初めて統一した秦の始皇帝であったが、その非情なる圧政は民を疲弊させていた。不平不満が募る中…

【書評】またもジャンルを飛び越えた怒涛の荒技。『あ・じゃ・ぱん』

1990年代以降、従来のハードボイルド小説作家の枠から抜け出した矢作俊彦が1997年に刊行した本書は、ハードボイルドどころか、もうSF作品である。改変歴史(オルタネートヒストリー)モノだ。 第二次世界大戦の終わりっ端の1945年7月18日、ソビエト軍が満州…

【書評】ハードボイルド作家のこれまたびっくりなる転身。『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』

矢作俊彦は1972年に小説家デビューした。流麗な文体、レイモンド・チャンドラーを彷彿とさせる比喩表現などを絶賛され、ネオ・ハードボイルドの旗手として名を馳せた。小説以外でもラジオドラマの脚本、漫画の原作、ラジオのパーソナリティーや、映画監督な…

【書評】横浜がまだ特別な街だった頃。『さまよう薔薇のように』

げげげ。なるほどそうか、もう約40年前の作品になるのか。矢作俊彦の割りかし初期の名作の一つ。ハードボイルド小説である。であるので、事件が起こってそれが物語の中心となるのであるが、なかなか変わった主人公設定がまず記憶に残る一冊だ。主人公の「私…

【書評】死は恐れるものではない『優しい死神の飼い方』

遅ればせながら人気の死神シリーズ第一弾を読んでみた。どこかファンタジーであり、どこか現実的でもあった。医師が紡ぐ生と死のボーダー。医師だからこそ表現できる狭間の世界である。後悔があるから人は死を恐れるんじゃないだろうか。 死神が犬の姿を借り…

【書評】40歳で無くても読もう!『40 翼ふたたび』

40歳、人生の半分が終わった。いいほうの半分が。40歳で会社を辞めてプロデュース業を始めた喜一の元を訪れる40代の依頼人たちが人生の後半に希望を見出す感動小説。 もうすぐ不惑の40歳。会社も家でも日常は惑わされっぱなし。この先何を楽しみに生きたら良…

【書評】反捕鯨の背景『白鯨』

白い巨鯨「モビー・ディック」を追う「ピークォド号」の物語。乗組員である主人公「イシュメール」の手記という形式で描かれているが、彼自身は殆ど登場せず、事実上船長「エイハブ」の復讐劇と言える。途中鯨や船についての蘊蓄が入るなどして話が脱線する…

【書評】こんな世界観を持っていたなんて。『累々』

元SKE48の松井玲奈さんが書いたこの小説は、5つの短編で構成されている。かと思いきや、最後はすべての伏線が回収され、一つの物語に大変身。久しぶりにあっと言わされてしまった。 マリッジブルーのコーヒーショップ店員、彼氏の友達とセフレになってしまう…

【書評】8ページで孤独を語る村上春樹の世界『スパゲティーの年に』

村上春樹ほど好き嫌いが分かれる作家はいないだろう。人間の心の中をこれでもかと抉る描写の数々によって、まるで自分の心の内を見透かされるような気がしてくる。この著書は人間の孤独をたった8ページで読者にたたきつけてくる名著である。 「一九七一年、…

【書評】名作家の創作秘話っぷりに驚く一冊。『ブルー・ダリア』

本書は、1946年制作のアメリカ映画『青い戦慄』(The Blue Dahlia)の脚本を書籍化したものである。執筆したのは、ハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラー。チャンドラーは、作家としての活動の或る時期、ハリウッド映画界に於いてシナリオライターを…

【書評】人は常に何かを盲信したがる。『23分間の奇跡』

国とか学校とか会社とか宗教とか親とか。人はなぜ何か一つのことや、誰かを盲信したがるのだろう。たしかに、身を委ねられる相手がいると楽だ。自分は何も考えなくていいんだから。けれど思考することを放棄したら、果たしてそれは自分の人生を生きていると…

【書評】生きていかなきゃならない夜がまだいっぱいありすぎる。『過去ある女―プレイバック』

ハードボイルド小説作家の大家であるレイモンド・チャンドラーは、その活動期間の中盤の或る時期に於いて、シナリオライターとしてハリウッド映画界にその身を置いていた。とは言え、自らの小説の映画化に携わったことは殆ど無かった。他の作家の映画化のた…