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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】今の日本を予知していた?『河童』

 

 著者である芥川龍之介が自殺した1927年に発表された小説。芥川の晩年の代表作であり、命日である7月24日が「河童忌」と呼ばれるのもこの由縁らしい。世の評価では当時の社会を痛烈に批判した作品のようであるが、私はありのままの人間の姿を河童に見立てて、ある種の願望のようなものを感じた。

 内容はかなり過激であるが、現代の問題を投影してるようなものもある。例えば河童の出産のシーンがある。まだ母体にいる赤ちゃんに対して父親が産まれたいかどうか問う、すると赤ちゃんは産まれたくないと答える。理由が2つあり、まずは父親の遺伝子に精神疾患がある、そして河童として産まれたくないとの事。産まれてくる子供に対して選択肢はない「親ガチャ」を彷彿させる。

 69ページという短い小説であるが、芥川龍之介の想いがぎゅっと詰まった作品。河童という伝説的な生き物を人に見立てたのは、当時の人が人らしく生きるためには非現実的だったと思わせる。しかし、小説に出てくる内容がまるで現代を予知してるかのように感じるのは、人が少しずつ人らしく生きられるようになったからだと思う。