HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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小説

【書評】今の日本を予知していた?『河童』

著者である芥川龍之介が自殺した1927年に発表された小説。芥川の晩年の代表作であり、命日である7月24日が「河童忌」と呼ばれるのもこの由縁らしい。世の評価では当時の社会を痛烈に批判した作品のようであるが、私はありのままの人間の姿を河童に見立てて、…

【書評】日々の変化、楽しんでますか?『なずな』

赤ちゃんというのは求心力があり、周りの者を魅了して惹きつける。可愛いから?なずなを読むとそれだけではない何かを感じる。田舎が舞台のなずなと周りの人達との見えない縁の物語。都会のストレスに疲れた方に読んで欲しい。 主人公は40代半ばの新聞記者の…

【書評】例外のあるところに尊厳はない。『装甲騎兵ボトムズ 孤影再び』

32年の眠りからの覚醒。しかしそれは、新たな戦いと、愛する者との別離を招いただけの、彼にとって辛く不幸な出来事であった。その、「異能者」とも「神殺し」とも、或いは「触れ得ざる者」ともあだ名される男の目覚めの物語『赫奕たる異端』で起こした、後…

【書評】例外のあるところに尊厳はない。『装甲騎兵ボトムズ 孤影再び』

32年の眠りからの覚醒。しかしそれは、新たな戦いと、愛する者との別離を招いただけの、彼にとって辛く不幸な出来事であった。その、「異能者」とも「神殺し」とも、或いは「触れ得ざる者」ともあだ名される男の目覚めの物語『赫奕たる異端』で起こした、後…

【書評】そして祈った。自分にも、長い眠りを与えて欲しい、と。『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』

2007年から2008年に掛けて全12話のOVAが発売され、更に2009年1月には劇場版が公開されたアニメ作品のノベライズである本作は、メインで脚本を手掛けた吉川惣司氏の手による。『装甲騎兵ボトムズ』は、体長約4mのATというロボットを駆る主人公キリコ・キュー…

【書評】そうだ。俺の過去をズタズタにしたのは、あいつだった。『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』

放送終了後に制作されたOVAの三作目として、1988年3月に発売された『レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』。本書も、『ザ・ラストレッドショルダー』同様、OVAの脚本を書いた著者が小説化したものである。今回は、テレビシリーズ以前の出来事を描く…

【書評】あのとき俺は、生まれて初めて心から願った。生き続けたいと。『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』

本書の著者である吉川惣司は、アニメ監督、脚本家、演出家、アニメーター、舞台演出家と幅広い才能の持ち主である。劇場版第一作目にして決定版と名高い、『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の監督、脚本、絵コンテ、演出をした人と言えば分かりも早いだろうか…

【書評】俺の安息の場所は、戦いの中にしかないんだ。『装甲騎兵ボトムズ III サンサ編』

「どこだ・・・・・・ここは」追い求めたフィアナをその手にし、キリコ・キュービーは神聖クメン王国の崩壊時、大気圏脱出用小型機で炎熱の古都から脱出した筈だった。しかし、漆黒の宇宙に飛び込んだとき、行く手に現れた巨大な光の塊に脱出機ごと二人は取…

【書評】ここへ来たのは、なにもかも忘れるためだ。『装甲騎兵ボトムズ II クメン編』

「気の狂うような熱さと湿気、熱病と死を運ぶ虫共、緑に塗り込められてはいるが・・・・・・ここは地獄に違いない」映画『ブレードランナー』の街並みを模した様なウドの街から一転。今度の舞台は、映画『地獄の黙示録』がモチーフと判然できる。だが、その…

【書評】あれは俺の運命に深く関わっているらしい。そいつはどんなさだめだ?『装甲騎兵ボトムズ I ウド編』

『装甲騎兵ボトムズ』は、1983年4月1日から1984年3月23日まで、全52話がテレビ東京系で放送されたテレビアニメであり、そのノベライズ第一弾が本書だ。しかし、出版されたのは2002年で、なんと放送終了18年後。何故、わざわざ、いまさら? しかも、執筆して…

【書評】いや、認知症小説って、そんなばかな。『世界はゴ冗談』

処女作品集『東海道戦争』を読んだ直後、今度は最新作をと思い手にした本書の初出は2015年4月。当時の筒井康隆は御年80歳である。2021年に『ジャックポット』という本も出ているのだが、そちらはどうやら私小説っぽいので本書を選んだのだ。 初っ端からいき…

【書評】どうせなら最も古い作品を読んだろか。ということで、『東海道戦争』

ここ数年、改めて筒井康隆の短編集をぽつらぽつらと散発的に読んでいる。しかし、あまりにも長い執筆年数、あまりにも多い作品の数に途方に暮れたおれは、いっそのこと最古と最新を読んでやろうと決めた。そこで、1965年に刊行された処女作品集『東海道戦争…

【書評】村上 春樹作品を読んで『海辺のカフカ 上・下』

主人公「カフカ」ともう一人の主人公「ナカタさん」の物語、読者の想像力を掻き立てる、とても不思議で壮大なファンタジー小説。 物語は、主人公である15歳の少年「カフカ」が父親との関係に悩み、家出をし、四国に向かう冒険旅から始まる。 一方、もう一人…

【書評】どっちかって言われたら、好きなものを語っていたい。『麦本三歩の好きなもの 第一集 』

『君の膵臓をたべたい』でおなじみの住野よるの作品。麦本三歩は天然で忘れっぽく、怒られてはへこみ、褒められると調子にのる。彼氏と別れて悲しんだと思えば、独り身の身軽さを楽しんだりもする。特別なことは何もない、平凡で愛おしい三歩の日常に、つい…

【書評】四面楚歌の語源とは?『項羽と劉邦』

あれ? 司馬遼太郎なのに中国の歴史小説? そう思いながら読み始めたらこれが滅法面白い。上・中・下と結構な長さであるが一気に読める。紀元前の中国。大陸を初めて統一した秦の始皇帝であったが、その非情なる圧政は民を疲弊させていた。不平不満が募る中…

【書評】四面楚歌の語源とは?『項羽と劉邦』

あれ? 司馬遼太郎なのに中国の歴史小説? そう思いながら読み始めたらこれが滅法面白い。上・中・下と結構な長さであるが一気に読める。紀元前の中国。大陸を初めて統一した秦の始皇帝であったが、その非情なる圧政は民を疲弊させていた。不平不満が募る中…

【書評】またもジャンルを飛び越えた怒涛の荒技。『あ・じゃ・ぱん』

1990年代以降、従来のハードボイルド小説作家の枠から抜け出した矢作俊彦が1997年に刊行した本書は、ハードボイルドどころか、もうSF作品である。改変歴史(オルタネートヒストリー)モノだ。 第二次世界大戦の終わりっ端の1945年7月18日、ソビエト軍が満州…

【書評】ハードボイルド作家のこれまたびっくりなる転身。『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』

矢作俊彦は1972年に小説家デビューした。流麗な文体、レイモンド・チャンドラーを彷彿とさせる比喩表現などを絶賛され、ネオ・ハードボイルドの旗手として名を馳せた。小説以外でもラジオドラマの脚本、漫画の原作、ラジオのパーソナリティーや、映画監督な…

【書評】横浜がまだ特別な街だった頃。『さまよう薔薇のように』

げげげ。なるほどそうか、もう約40年前の作品になるのか。矢作俊彦の割りかし初期の名作の一つ。ハードボイルド小説である。であるので、事件が起こってそれが物語の中心となるのであるが、なかなか変わった主人公設定がまず記憶に残る一冊だ。主人公の「私…

【書評】死は恐れるものではない『優しい死神の飼い方』

遅ればせながら人気の死神シリーズ第一弾を読んでみた。どこかファンタジーであり、どこか現実的でもあった。医師が紡ぐ生と死のボーダー。医師だからこそ表現できる狭間の世界である。後悔があるから人は死を恐れるんじゃないだろうか。 死神が犬の姿を借り…

【書評】40歳で無くても読もう!『40 翼ふたたび』

40歳、人生の半分が終わった。いいほうの半分が。40歳で会社を辞めてプロデュース業を始めた喜一の元を訪れる40代の依頼人たちが人生の後半に希望を見出す感動小説。 もうすぐ不惑の40歳。会社も家でも日常は惑わされっぱなし。この先何を楽しみに生きたら良…

【書評】反捕鯨の背景『白鯨』

白い巨鯨「モビー・ディック」を追う「ピークォド号」の物語。乗組員である主人公「イシュメール」の手記という形式で描かれているが、彼自身は殆ど登場せず、事実上船長「エイハブ」の復讐劇と言える。途中鯨や船についての蘊蓄が入るなどして話が脱線する…

【書評】こんな世界観を持っていたなんて。『累々』

元SKE48の松井玲奈さんが書いたこの小説は、5つの短編で構成されている。かと思いきや、最後はすべての伏線が回収され、一つの物語に大変身。久しぶりにあっと言わされてしまった。 マリッジブルーのコーヒーショップ店員、彼氏の友達とセフレになってしまう…

【書評】8ページで孤独を語る村上春樹の世界『スパゲティーの年に』

村上春樹ほど好き嫌いが分かれる作家はいないだろう。人間の心の中をこれでもかと抉る描写の数々によって、まるで自分の心の内を見透かされるような気がしてくる。この著書は人間の孤独をたった8ページで読者にたたきつけてくる名著である。 「一九七一年、…

【書評】名作家の創作秘話っぷりに驚く一冊。『ブルー・ダリア』

本書は、1946年制作のアメリカ映画『青い戦慄』(The Blue Dahlia)の脚本を書籍化したものである。執筆したのは、ハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラー。チャンドラーは、作家としての活動の或る時期、ハリウッド映画界に於いてシナリオライターを…

【書評】人は常に何かを盲信したがる。『23分間の奇跡』

国とか学校とか会社とか宗教とか親とか。人はなぜ何か一つのことや、誰かを盲信したがるのだろう。たしかに、身を委ねられる相手がいると楽だ。自分は何も考えなくていいんだから。けれど思考することを放棄したら、果たしてそれは自分の人生を生きていると…

【書評】生きていかなきゃならない夜がまだいっぱいありすぎる。『過去ある女―プレイバック』

ハードボイルド小説作家の大家であるレイモンド・チャンドラーは、その活動期間の中盤の或る時期に於いて、シナリオライターとしてハリウッド映画界にその身を置いていた。とは言え、自らの小説の映画化に携わったことは殆ど無かった。他の作家の映画化のた…

【書評】タフでなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない。『プレイバック』

前作『長いお別れ』から4年半を経て、1959年に刊行された本作は、レイモンド・チャンドラーの七作目にして、最後の長編である。 私立探偵のフィリップ・マーロウが、朝っぱらからかかってきた電話で叩き起こされるところから物語は始まる。電話の主は非道く…

【書評】さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。『長いお別れ』

1953年に刊行されたレイモンド・チャンドラーの長編六作目である。アメリカ推理小説作家クラブで1955年の最優秀長編にも推薦されており、チャンドラーの作品の中でも代表的傑作との呼び声も高い本作は、一番ページ数の多い著作でもあり、読み応えも十分。そ…

【書評】あの小豆色の車体を見ると、なぜか心が落ち着く。『阪急電車』

阪急電車が好きだ。平日の昼間、電車の先頭車両に乗って、車掌室ごしに移りゆく風景を眺める。くるりの「赤い電車」なんて聴きながら、カタンコトンと優しく揺られていると、なんとも贅沢で、幸福な気持ちになる。(あの曲の舞台は東京だけど) 冒頭からつい愛…