HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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小説

【書評】失敗作にみるシェイクスピアの真骨頂『ハムレット』

言わずと知れたシェイクスピアの傑作。彼の作品の中で最も長いものとされている。 モデルは12世紀の歴史家サクソ・グラマティクスによって書かれた「デンマーク人の事績」に登場する「アムレート」。実在した人物であるかどうかは定かではない。 シェイクス…

【書評】シェイクスピアが現代に突き付けたテーゼ『オセロー』

シェイクスピア四大悲劇の一つ。原典はチンティオという作家の作品「百話集」の中の一話と言われている。ただ、この「百話集」は現実的な不都合を描いた教訓話で、人間心理の根源に迫るシェイクスピアの悲劇とはだいぶトーンが異なっていたようだ。 原典から…

【書評】美しいスコットランドの舞台で起こる悲劇『マクベス』

十一世紀のスコットランド王マクベスがモデル。シェイクスピア四大悲劇のひとつであり、そのなかでも最後に書かれたものとされている。 シェイクスピアはイングランドのストラトフォードで生まれた。そのイングランドの王家の血筋はマクベスと対立したダンカ…

【書評】大文豪が完膚なきまでに否定した名作『リア王』

複数の話を絡めてストーリーを展開するのがシェイクスピア作品の特徴の一つある。「リア王」でもケルトの伝承を原文とし、リア王を軸とする主流と、グロスター伯を軸とする傍流の二つが平行してストーリーが展開する。 日本ではシェイクスピア作品といえば「…

【書評】我執、エゴイズムという薄気味悪いものの力で生きている人間とは一体何なのだろう。『こころ』

則天去私…小さな私にとらわれず、身を天地自然に委ねて生きていくこと。夏目漱石が晩年に理想とした境地を表した言葉。宗教的な悟りを意味するとも、漱石の文学観とも解されている。 主人公である学生の私は、鎌倉の海岸で先生に出会う。周りの大人とは違っ…

【書評】誰かの記憶に残り続けるということ『幼なじみ』

本書は、佐藤正午氏がデビュー直後に書いた、幻の未発表作品である。本屋をふらついている時に、表紙の雰囲気と、帯に書かれていた「あなたの心の中に生きているのは、誰ですか?」という文章に惹きつけられて、手に取った。 50代の男性が、幼なじみの訃報を…

【書評】グロくてカオスな女の世界、とくとご覧あれ!『かわいそうだね?』

「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」の二編を収録。どちらもこれでもか!というくらいに女の世界を緻密に描く。女性は大いに共感し、心のもやもやを言語化できる喜びを味わい、男性は驚きと恐怖を感じるかもしれない。 表題作の「かわいそうだね?」は…

【書評】人生は選択の連続であり、大切なのは何をしたかではなく、それをどう受け取るか『君の膵臓をたべたい』

「残り少ない私の人生の手助けをさせてあげてもいいよ」内向的で、自分の世界に閉じこもりがちな「僕」と、僕とは正反対の性格の、いつもクラスの中心で笑っている「君」。今までも、これからも、きっと関わることのないはずだった二人は、ある日彼女が落と…

【書評】Farewell, My Lovely 『さらば愛しき女よ』

本書は、レイモンド・チャンドラーの二作目の長編で、1940年の作品である。著者の二大傑作と言われているうちの一冊だ。もう一冊は1953年の作品『長いお別れ』で、両作品共、最近になって村上春樹の新訳版が出版されたりもしている。主人公は、言わずと知れ…

【書評】時間とはすなわち生活であり、人間の生きる生活は、その人の心の中にある。『モモ』

「時間」とは、いったい何だろう?機械的にはかることのできる時間が問題ではない。そうではなくて、人間の心のうちの時間、人間が人間らしく生きることを可能にする時間、そういう時間が私たちからだんだんと失われてきた。このとらえどころのない、謎のよ…

【書評】警官だが今日はフリー・ランスなんだ。『リンゴォ・キッドの休日』

「神奈川県警二村刑事のお宅ですね」そ奴は言った。舌先でとろりと溶かしたチョコレートみたいな女の声だった。しかし、警官には違いない。警官は揃って、どこの地図にも載っていない方言をはなすのだ。 舞台は横須賀、銃はトカレフが一丁、死体は三つ。そ…

【書評】本は人よりずいぶん長く生きる『という、はなし』

読書をテーマに、フジモトマサル氏が描いた絵に答えるかたちで、吉田篤弘氏が考えた小咄を集めたものである。 人はなぜ読書をするのだろう?評者も本好きだが、「本の虫」とか「活字中毒」ってほどではないと思う。今までに読んだ本の数だって、そんなに多く…

【書評】台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。『台所のラジオ』

小説に出てくる食べ物って、なんであんなに美味しそうなんだろう。写真とか、映像で見るよりも、言葉でさらっと説明される方が美味しそうに感じる。 本書は台所とラジオをテーマにした、短編集である。十二編の短編に、ちょっと変わった人たちと、美味しそう…

【書評】いつか飽きる、いつか終わる、しかし今つかんでいる。『ひらいて』

「なんだ、女子高生が主人公の甘酸っぱい恋愛ものか。」初めの数ページを読んでそう思った。だけど、読み進めていくと、どうも雲行きが怪しい。あまりにも緻密な描写で、心を深く深く抉ってくるのである。 主人公は受験を間近に控えた女子高生の愛。そんな彼…

【書評】今夏公開映画の原作、ひと夏の不思議な物語『宇宙でいちばんあかるい屋根』

夏といえば、海や花火といった様々な風物詩を味わう季節。忘れられない思い出がたくさんあるでしょう。一方で今年はコロナの影響で夏を思うように過ごせない方が多いかと思います。本書はそんな皆さんの夏に彩りを与える美しい作品です! [あらすじ]中学2…

【書評】今夏公開映画の原作、ひと夏の不思議な物語『宇宙でいちばんあかるい屋根』

夏といえば、海や花火といった様々な風物詩を味わう季節。忘れられない思い出がたくさんあるでしょう。一方で今年はコロナの影響で夏を思うように過ごせない方が多いかと思います。本書はそんな皆さんの夏に彩りを与える美しい作品です! [あらすじ]中学2…

【書評】目の前で、夜が壊れた。『死ぬには手頃な日』

ハードボイルド小説を、探偵小説や犯罪小説、ましてや暴力小説と解するのは間違いだ。ハードボイルドの世界を押し開いたと言われるアーネスト・ヘミングウェイの作品を読んでみれば、それは明らかとされるだろう。ハードボイルドとは、感傷や叙情から遠く離…

【書評】凍りついた摩天楼、名なしの探偵が行く。『凝った死顔(マンハッタン・オプ1)』

矢作俊彦を語るには、やはりマンハッタン・オプを外すことは出来ない。以前にデビュー作を含めた短編集の書評でも書いたことではあるが、私が著者を知ったのは、1980年5月から1983年9月にかけて月~金の深夜にFM東京で放送されたラジオ・ドラマの作者として…

【書評】ガンダム誕生にも関わったSF小説。『宇宙の戦士』

ヒューゴ賞受賞!と、高らかに表紙に謳われ続けている本作の評価は高い。一般には、『スターシップ・トゥルーパーズ』というしょうもないハリウッド映画の原作と言えば分かり易いかもしれない。 主人公ジョニーは、高校を卒業するに際し、両親の反対を押し切…

【書評】はい。これでお仕舞い。『日本以外全部沈没 パニック短編集』

ここのところビジネス書ばかりで、何年も小説を読んでいなかったのだが、突如40年振りに筒井康隆が読みたくなった。 しかし、この人の捉えどころの無さと言ったら半端無い。スタイルが作品毎で全く変わるので、読み出すまでどんな作風の話なのか分からないの…

【書評】いかに軌道修正を繰り返して、目的地に向かっていくか。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 下』

「やってみなはれ」。鳥井信治郎の愛用語である。著者によれば、三つの意味があるらしい。一つは「やってみなければ何も始まらない」、二つ目は「それで失敗しても構わない」、三つ目が「失敗の中に必ず成功につながる何かがある」。これほど愛情深い言葉が…

【書評】いかに軌道修正を繰り返して、目的地に向かっていくか。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 下』

「やってみなはれ」。鳥井信治郎の愛用語である。著者によれば、三つの意味があるらしい。一つは「やってみなければ何も始まらない」、二つ目は「それで失敗しても構わない」、三つ目が「失敗の中に必ず成功につながる何かがある」。これほど愛情深い言葉が…

【書評】その船に乗るも乗らぬも、やってみるしかない。国産ウイスキー造りに命を捧げた男、鳥井信治郎。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 上』

経営の神様、松下幸之助。世界でトップの家電製品の企業を築き上げた人物が、生涯その恩を忘れず、”商いの師”とした人物が、本書の主人公である、サントリー創業者、鳥井信治郎であった。 そんな鳥井信治郎が生まれたところから、物語ははじまる。”商いの都”…

【書評】正解のない世界で、それでも美しいものを求め続ける。『羊と鋼の森』

主人公は、北海道の田舎に住む青年の外村。高校時代、体育館のピアノを調律する現場に立ち会ったことがきっかけで、ピアノの調律師を目指すことになる。 ひたすら音と向き合い、壁にぶつかり、悩む新人外村。個性的な先輩からたくさんのアドバイスをもらった…

【書評】なぜ、あの年、あの時に逗子の海を歩いたのだろうか。『なぎさホテル』

「いいんですよ、部屋代なんていつだって」著者が作家として今日まで生きてこれたのは、「逗子なぎさホテル」で過ごした日々があったからだった。その七年余りの日々は、時折、思い起こしても、夢のような時間であった。 本書は、作家、伊集院静さんが、今は…

【書評】それは正しい胸の痛みであり、正しい息苦しさだった。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

大学二年生の頃、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。 きっかけははっきりしている。彼はそれまで長く親密に交際していた四人の友人たちからある時、唐突に絶縁を突きつけられた。理由も告げられずに。 あのとき死んでおけばよかったのか…

【書評】小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です。『神様のボート』

過去の恋人のことを忘れられず、あちこち転々として暮らす自らのことを「旅がらす」だという母と、娘の物語。 ふわふわと、まるで夢の中を生きているような、過去に縛られている母。それに反するように、すくすくと成長し、しっかりと時を刻んでいく娘。 仲…

【書評】雨のせいで、二人殺した。O・K!そうしておこう。雨のせいにしておけばいいさ。『神様のピンチヒッター』

矢作俊彦の存在を私が知ったのは、FM東京の『マンハッタン・オプ』という私立探偵物のラジオドラマの作者としてだった。洒落たセリフと、ハメットの名無しの探偵を彷彿とさせる味付け、チャンドラーを意識した様な文体で、いっぺんに気に入ったものだった。…

【書評】工藤俊作、最後の事件。『新・探偵物語Ⅱ 国境のコヨーテ』

前作から10ヶ月後、S・クドーはアリゾナに舞い戻る。それは相変わらずの法律事務所の臨時調査員としての仕事の為だ。しかし、胸中には以前の事件で淡いロマンスと生死の境を共にした日系アメリカ人の美女との再会への期待もあった。 物語の冒頭は、クドーが…

【書評】工藤俊作はLAで生きていた。『新・探偵物語』

小鷹信光オリジナル作品の続編である。あれから15年ほど経ったロサンジェルス郊外に、S・クドーは居た。自宅兼事務所の借家へ訪れた日系アメリカ人の若い女性が、「わたしを一週間守ってくれませんか」と依頼を持ちかけるところから物語が始まる。探偵小説と…