HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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小説

【書評】またもジャンルを飛び越えた怒涛の荒技。『あ・じゃ・ぱん』

1990年代以降、従来のハードボイルド小説作家の枠から抜け出した矢作俊彦が1997年に刊行した本書は、ハードボイルドどころか、もうSF作品である。改変歴史(オルタネートヒストリー)モノだ。 第二次世界大戦の終わりっ端の1945年7月18日、ソビエト軍が満州…

【書評】ハードボイルド作家のこれまたびっくりなる転身。『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』

矢作俊彦は1972年に小説家デビューした。流麗な文体、レイモンド・チャンドラーを彷彿とさせる比喩表現などを絶賛され、ネオ・ハードボイルドの旗手として名を馳せた。小説以外でもラジオドラマの脚本、漫画の原作、ラジオのパーソナリティーや、映画監督な…

【書評】横浜がまだ特別な街だった頃。『さまよう薔薇のように』

げげげ。なるほどそうか、もう約40年前の作品になるのか。矢作俊彦の割りかし初期の名作の一つ。ハードボイルド小説である。であるので、事件が起こってそれが物語の中心となるのであるが、なかなか変わった主人公設定がまず記憶に残る一冊だ。主人公の「私…

【書評】死は恐れるものではない『優しい死神の飼い方』

遅ればせながら人気の死神シリーズ第一弾を読んでみた。どこかファンタジーであり、どこか現実的でもあった。医師が紡ぐ生と死のボーダー。医師だからこそ表現できる狭間の世界である。後悔があるから人は死を恐れるんじゃないだろうか。 死神が犬の姿を借り…

【書評】40歳で無くても読もう!『40 翼ふたたび』

40歳、人生の半分が終わった。いいほうの半分が。40歳で会社を辞めてプロデュース業を始めた喜一の元を訪れる40代の依頼人たちが人生の後半に希望を見出す感動小説。 もうすぐ不惑の40歳。会社も家でも日常は惑わされっぱなし。この先何を楽しみに生きたら良…

【書評】反捕鯨の背景『白鯨』

白い巨鯨「モビー・ディック」を追う「ピークォド号」の物語。乗組員である主人公「イシュメール」の手記という形式で描かれているが、彼自身は殆ど登場せず、事実上船長「エイハブ」の復讐劇と言える。途中鯨や船についての蘊蓄が入るなどして話が脱線する…

【書評】こんな世界観を持っていたなんて。『累々』

元SKE48の松井玲奈さんが書いたこの小説は、5つの短編で構成されている。かと思いきや、最後はすべての伏線が回収され、一つの物語に大変身。久しぶりにあっと言わされてしまった。 マリッジブルーのコーヒーショップ店員、彼氏の友達とセフレになってしまう…

【書評】8ページで孤独を語る村上春樹の世界『スパゲティーの年に』

村上春樹ほど好き嫌いが分かれる作家はいないだろう。人間の心の中をこれでもかと抉る描写の数々によって、まるで自分の心の内を見透かされるような気がしてくる。この著書は人間の孤独をたった8ページで読者にたたきつけてくる名著である。 「一九七一年、…

【書評】名作家の創作秘話っぷりに驚く一冊。『ブルー・ダリア』

本書は、1946年制作のアメリカ映画『青い戦慄』(The Blue Dahlia)の脚本を書籍化したものである。執筆したのは、ハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラー。チャンドラーは、作家としての活動の或る時期、ハリウッド映画界に於いてシナリオライターを…

【書評】人は常に何かを盲信したがる。『23分間の奇跡』

国とか学校とか会社とか宗教とか親とか。人はなぜ何か一つのことや、誰かを盲信したがるのだろう。たしかに、身を委ねられる相手がいると楽だ。自分は何も考えなくていいんだから。けれど思考することを放棄したら、果たしてそれは自分の人生を生きていると…

【書評】生きていかなきゃならない夜がまだいっぱいありすぎる。『過去ある女―プレイバック』

ハードボイルド小説作家の大家であるレイモンド・チャンドラーは、その活動期間の中盤の或る時期に於いて、シナリオライターとしてハリウッド映画界にその身を置いていた。とは言え、自らの小説の映画化に携わったことは殆ど無かった。他の作家の映画化のた…

【書評】タフでなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない。『プレイバック』

前作『長いお別れ』から4年半を経て、1959年に刊行された本作は、レイモンド・チャンドラーの七作目にして、最後の長編である。 私立探偵のフィリップ・マーロウが、朝っぱらからかかってきた電話で叩き起こされるところから物語は始まる。電話の主は非道く…

【書評】さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。『長いお別れ』

1953年に刊行されたレイモンド・チャンドラーの長編六作目である。アメリカ推理小説作家クラブで1955年の最優秀長編にも推薦されており、チャンドラーの作品の中でも代表的傑作との呼び声も高い本作は、一番ページ数の多い著作でもあり、読み応えも十分。そ…

【書評】あの小豆色の車体を見ると、なぜか心が落ち着く。『阪急電車』

阪急電車が好きだ。平日の昼間、電車の先頭車両に乗って、車掌室ごしに移りゆく風景を眺める。くるりの「赤い電車」なんて聴きながら、カタンコトンと優しく揺られていると、なんとも贅沢で、幸福な気持ちになる。(あの曲の舞台は東京だけど) 冒頭からつい愛…

【書評】こんな日があるものだ。出っくわす人間がみんな一人前ではない。鏡で自分の顔を見直したくなる。『かわいい女』

レイモンド・チャンドラーの長編五作目である本書は、前作『湖中の女』から6年を経た1949年に世に出たものだ。その間、著者はハリウッド映画に携わっていたという。そこで得た経験を活かしたかったのか、それとも映画界のきらびやかな表面に隠された虚飾に満…

【書評】1968年8月21日ついにソ連からワルシャワ条約軍がやってきた、改革崩壊までの一部始終『プラハの春 下』

元外交官である著者が1968年チェコスロヴァキア日本国大使館在勤中に遭遇した民主化運動「プラハの春」を小説化。上巻は1967年からプラハの春改革前夜1968年3月まで、下巻は改革を進めるチェコスロヴァキアをソ連が軍事介入、改革崩壊までの一部始終が描か…

【書評】私立探偵を軽く見てはいけない。執念深くて、どんな嫌味をいわれても感じないんだ。『湖中の女』

或る会社経営者から、行方知らずになって一ヶ月になる妻を探す様に依頼された主人公 私立探偵フィリップ・マーロウ。彼女の最後の手がかりは、エルパソから送ってきた電報で、「メキシコデ離婚スルタメ国境ヲコエル クリスト結婚スル」という内容だった。ま…

【書評】チャンドラー長編三作目は意外にウェット?『高い窓』

本書は、レイモンド・チャンドラーの三作目の長編である。『さらば愛しき女よ』に続く流れで、これも何十年か振りに再読したが、非常に楽しく読めた。 同じく、私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とし、彼は或る依頼事に関わるうちに、例によって立て続け…

【書評】あなたの周りの若くて美しくおしゃれなあの人は魔女かもしれない『魔女がいっぱい』

本作はイギリスの小説家であり脚本家でもあるロアルド・ダール氏の児童文学をもとにロバート・ゼメキス氏がユーモラスで不思議な世界を映画化した作品である。また、『チャーリーとチョコレート工場』も著者による原作のため、本作にも随所にストーリーを彷…

【書評】人生は虚無感との戦いだ。『トカトントン』

太宰治が感じていた虚無感がひしひしと伝わってくる作品である。読中は悲劇っぽく感じるのだが、読後、全体を俯瞰してみてみるとやはり喜劇に思える。なんとも中毒性がある作品だ。 本作は1947年に発表された、太宰治の短編である。主人公の青年がある小説家…

【書評】信用力で天下を取った家康『関ヶ原』

天下分け目の戦いが行われた『関ヶ原』。そこには、石田三成VS徳川家康をめぐる諸侯の複雑な思惑が絡んでいました。歴史の転換点を往年の名作家、司馬遼太郎が描いた時代小説です。 それだけだと名作とはいえ、普通の時代小説です。僕も10年ぶりにこの本を…

【書評】失敗作にみるシェイクスピアの真骨頂『ハムレット』

言わずと知れたシェイクスピアの傑作。彼の作品の中で最も長いものとされている。 モデルは12世紀の歴史家サクソ・グラマティクスによって書かれた「デンマーク人の事績」に登場する「アムレート」。実在した人物であるかどうかは定かではない。 シェイクス…

【書評】シェイクスピアが現代に突き付けたテーゼ『オセロー』

シェイクスピア四大悲劇の一つ。原典はチンティオという作家の作品「百話集」の中の一話と言われている。ただ、この「百話集」は現実的な不都合を描いた教訓話で、人間心理の根源に迫るシェイクスピアの悲劇とはだいぶトーンが異なっていたようだ。 原典から…

【書評】美しいスコットランドの舞台で起こる悲劇『マクベス』

十一世紀のスコットランド王マクベスがモデル。シェイクスピア四大悲劇のひとつであり、そのなかでも最後に書かれたものとされている。 シェイクスピアはイングランドのストラトフォードで生まれた。そのイングランドの王家の血筋はマクベスと対立したダンカ…

【書評】大文豪が完膚なきまでに否定した名作『リア王』

複数の話を絡めてストーリーを展開するのがシェイクスピア作品の特徴の一つある。「リア王」でもケルトの伝承を原文とし、リア王を軸とする主流と、グロスター伯を軸とする傍流の二つが平行してストーリーが展開する。 日本ではシェイクスピア作品といえば「…

【書評】我執、エゴイズムという薄気味悪いものの力で生きている人間とは一体何なのだろう。『こころ』

則天去私…小さな私にとらわれず、身を天地自然に委ねて生きていくこと。夏目漱石が晩年に理想とした境地を表した言葉。宗教的な悟りを意味するとも、漱石の文学観とも解されている。 主人公である学生の私は、鎌倉の海岸で先生に出会う。周りの大人とは違っ…

【書評】誰かの記憶に残り続けるということ『幼なじみ』

本書は、佐藤正午氏がデビュー直後に書いた、幻の未発表作品である。本屋をふらついている時に、表紙の雰囲気と、帯に書かれていた「あなたの心の中に生きているのは、誰ですか?」という文章に惹きつけられて、手に取った。 50代の男性が、幼なじみの訃報を…

【書評】グロくてカオスな女の世界、とくとご覧あれ!『かわいそうだね?』

「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」の二編を収録。どちらもこれでもか!というくらいに女の世界を緻密に描く。女性は大いに共感し、心のもやもやを言語化できる喜びを味わい、男性は驚きと恐怖を感じるかもしれない。 表題作の「かわいそうだね?」は…

【書評】人生は選択の連続であり、大切なのは何をしたかではなく、それをどう受け取るか『君の膵臓をたべたい』

「残り少ない私の人生の手助けをさせてあげてもいいよ」内向的で、自分の世界に閉じこもりがちな「僕」と、僕とは正反対の性格の、いつもクラスの中心で笑っている「君」。今までも、これからも、きっと関わることのないはずだった二人は、ある日彼女が落と…

【書評】Farewell, My Lovely 『さらば愛しき女よ』

本書は、レイモンド・チャンドラーの二作目の長編で、1940年の作品である。著者の二大傑作と言われているうちの一冊だ。もう一冊は1953年の作品『長いお別れ』で、両作品共、最近になって村上春樹の新訳版が出版されたりもしている。主人公は、言わずと知れ…