HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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小説

【書評】警官だが今日はフリー・ランスなんだ。『リンゴォ・キッドの休日』

「神奈川県警二村刑事のお宅ですね」そ奴は言った。舌先でとろりと溶かしたチョコレートみたいな女の声だった。しかし、警官には違いない。警官は揃って、どこの地図にも載っていない方言をはなすのだ。 舞台は横須賀、銃はトカレフが一丁、死体は三つ。そ…

【書評】本は人よりずいぶん長く生きる『という、はなし』

読書をテーマに、フジモトマサル氏が描いた絵に答えるかたちで、吉田篤弘氏が考えた小咄を集めたものである。 人はなぜ読書をするのだろう?評者も本好きだが、「本の虫」とか「活字中毒」ってほどではないと思う。今までに読んだ本の数だって、そんなに多く…

【書評】台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。『台所のラジオ』

小説に出てくる食べ物って、なんであんなに美味しそうなんだろう。写真とか、映像で見るよりも、言葉でさらっと説明される方が美味しそうに感じる。 本書は台所とラジオをテーマにした、短編集である。十二編の短編に、ちょっと変わった人たちと、美味しそう…

【書評】いつか飽きる、いつか終わる、しかし今つかんでいる。『ひらいて』

「なんだ、女子高生が主人公の甘酸っぱい恋愛ものか。」初めの数ページを読んでそう思った。だけど、読み進めていくと、どうも雲行きが怪しい。あまりにも緻密な描写で、心を深く深く抉ってくるのである。 主人公は受験を間近に控えた女子高生の愛。そんな彼…

【書評】今夏公開映画の原作、ひと夏の不思議な物語『宇宙でいちばんあかるい屋根』

夏といえば、海や花火といった様々な風物詩を味わう季節。忘れられない思い出がたくさんあるでしょう。一方で今年はコロナの影響で夏を思うように過ごせない方が多いかと思います。本書はそんな皆さんの夏に彩りを与える美しい作品です! [あらすじ]中学2…

【書評】今夏公開映画の原作、ひと夏の不思議な物語『宇宙でいちばんあかるい屋根』

夏といえば、海や花火といった様々な風物詩を味わう季節。忘れられない思い出がたくさんあるでしょう。一方で今年はコロナの影響で夏を思うように過ごせない方が多いかと思います。本書はそんな皆さんの夏に彩りを与える美しい作品です! [あらすじ]中学2…

【書評】目の前で、夜が壊れた。『死ぬには手頃な日』

ハードボイルド小説を、探偵小説や犯罪小説、ましてや暴力小説と解するのは間違いだ。ハードボイルドの世界を押し開いたと言われるアーネスト・ヘミングウェイの作品を読んでみれば、それは明らかとされるだろう。ハードボイルドとは、感傷や叙情から遠く離…

【書評】凍りついた摩天楼、名なしの探偵が行く。『凝った死顔(マンハッタン・オプ1)』

矢作俊彦を語るには、やはりマンハッタン・オプを外すことは出来ない。以前にデビュー作を含めた短編集の書評でも書いたことではあるが、私が著者を知ったのは、1980年5月から1983年9月にかけて月~金の深夜にFM東京で放送されたラジオ・ドラマの作者として…

【書評】ガンダム誕生にも関わったSF小説。『宇宙の戦士』

ヒューゴ賞受賞!と、高らかに表紙に謳われ続けている本作の評価は高い。一般には、『スターシップ・トゥルーパーズ』というしょうもないハリウッド映画の原作と言えば分かり易いかもしれない。 主人公ジョニーは、高校を卒業するに際し、両親の反対を押し切…

【書評】はい。これでお仕舞い。『日本以外全部沈没 パニック短編集』

ここのところビジネス書ばかりで、何年も小説を読んでいなかったのだが、突如40年振りに筒井康隆が読みたくなった。 しかし、この人の捉えどころの無さと言ったら半端無い。スタイルが作品毎で全く変わるので、読み出すまでどんな作風の話なのか分からないの…

【書評】いかに軌道修正を繰り返して、目的地に向かっていくか。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 下』

「やってみなはれ」。鳥井信治郎の愛用語である。著者によれば、三つの意味があるらしい。一つは「やってみなければ何も始まらない」、二つ目は「それで失敗しても構わない」、三つ目が「失敗の中に必ず成功につながる何かがある」。これほど愛情深い言葉が…

【書評】いかに軌道修正を繰り返して、目的地に向かっていくか。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 下』

「やってみなはれ」。鳥井信治郎の愛用語である。著者によれば、三つの意味があるらしい。一つは「やってみなければ何も始まらない」、二つ目は「それで失敗しても構わない」、三つ目が「失敗の中に必ず成功につながる何かがある」。これほど愛情深い言葉が…

【書評】その船に乗るも乗らぬも、やってみるしかない。国産ウイスキー造りに命を捧げた男、鳥井信治郎。『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 上』

経営の神様、松下幸之助。世界でトップの家電製品の企業を築き上げた人物が、生涯その恩を忘れず、”商いの師”とした人物が、本書の主人公である、サントリー創業者、鳥井信治郎であった。 そんな鳥井信治郎が生まれたところから、物語ははじまる。”商いの都”…

【書評】正解のない世界で、それでも美しいものを求め続ける。『羊と鋼の森』

主人公は、北海道の田舎に住む青年の外村。高校時代、体育館のピアノを調律する現場に立ち会ったことがきっかけで、ピアノの調律師を目指すことになる。 ひたすら音と向き合い、壁にぶつかり、悩む新人外村。個性的な先輩からたくさんのアドバイスをもらった…

【書評】なぜ、あの年、あの時に逗子の海を歩いたのだろうか。『なぎさホテル』

「いいんですよ、部屋代なんていつだって」著者が作家として今日まで生きてこれたのは、「逗子なぎさホテル」で過ごした日々があったからだった。その七年余りの日々は、時折、思い起こしても、夢のような時間であった。 本書は、作家、伊集院静さんが、今は…

【書評】それは正しい胸の痛みであり、正しい息苦しさだった。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

大学二年生の頃、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。 きっかけははっきりしている。彼はそれまで長く親密に交際していた四人の友人たちからある時、唐突に絶縁を突きつけられた。理由も告げられずに。 あのとき死んでおけばよかったのか…

【書評】小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です。『神様のボート』

過去の恋人のことを忘れられず、あちこち転々として暮らす自らのことを「旅がらす」だという母と、娘の物語。 ふわふわと、まるで夢の中を生きているような、過去に縛られている母。それに反するように、すくすくと成長し、しっかりと時を刻んでいく娘。 仲…

【書評】雨のせいで、二人殺した。O・K!そうしておこう。雨のせいにしておけばいいさ。『神様のピンチヒッター』

矢作俊彦の存在を私が知ったのは、FM東京の『マンハッタン・オプ』という私立探偵物のラジオドラマの作者としてだった。洒落たセリフと、ハメットの名無しの探偵を彷彿とさせる味付け、チャンドラーを意識した様な文体で、いっぺんに気に入ったものだった。…

【書評】工藤俊作、最後の事件。『新・探偵物語Ⅱ 国境のコヨーテ』

前作から10ヶ月後、S・クドーはアリゾナに舞い戻る。それは相変わらずの法律事務所の臨時調査員としての仕事の為だ。しかし、胸中には以前の事件で淡いロマンスと生死の境を共にした日系アメリカ人の美女との再会への期待もあった。 物語の冒頭は、クドーが…

【書評】工藤俊作はLAで生きていた。『新・探偵物語』

小鷹信光オリジナル作品の続編である。あれから15年ほど経ったロサンジェルス郊外に、S・クドーは居た。自宅兼事務所の借家へ訪れた日系アメリカ人の若い女性が、「わたしを一週間守ってくれませんか」と依頼を持ちかけるところから物語が始まる。探偵小説と…

【書評】何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。『うつくしい人』

全然自分のことを見てない、自分にまったく興味のない変な人が、それぞれ勝手に変なことで悩んでたり変なことしてたら。それだけで、なんだか楽になるのかもしれない。 周りのするようにし、周囲から浮かないように、社会からはみ出ないように、「普通」の生…

【書評】誰も知らなかった探偵の過去が明かされる。『赤き馬の使者 探偵物語Ⅱ』

小鷹信光著の「探偵物語」シリーズの第二弾である。前作から約四ヶ月後。舞台は北海道。一仕事を終えた私立探偵 工藤俊作が、札幌のホテルの部屋へ戻った途端、3人の暴漢に容赦無く痛めつけられ意識を失くすところから物語は始まる。一日半後、病院のベッド…

【書評】名作ドラマの原典に辿り着く。『探偵物語』

1979年から1980年にかけて放送されたテレビドラマ『探偵物語』。俳優 松田優作の代表作の一つとも言われるこの作品に原案者がいた。ハードボイルドミステリーの評論家であり、翻訳家でもある小鷹信光氏だ。ドラマ『探偵物語』は、好評だった『大都会』シリー…

【書評】人生の師と呼べる人はいますか?『リーチ先生』

「好いものは好い」日本とイギリスの架け橋になるべく、若くして芸術を学びに来日したバーナード・リーチ。彼の生涯を捧げることになる陶芸との出会いや、日本の芸術家たちとの熱い友情劇などを描いたアート小説。 絵の才能があったものの、学費が払えず芸術…

【書評】恋愛もビジネスも同じ。粘り強さが最後に勝つ『私はスカーレット Ⅱ』

本書は、名作「風と共に去りぬ」を著者、林真理子氏流にアレンジされた作品の第二巻。南北戦争がさらに激化するアメリカ南部で、激動の日々を送る恋愛ストーリー。 著者が作家になるきっかけとなった『風と共に去りぬ』そこまで著者を魅了した理由の一つが、…

【書評】愛するものを守り抜く『~小説で読む名作戯曲~ 桜の園』

本書は、日本で初めて世界の名作戯曲を小説化したシリーズの第一弾。ロシアを代表する作家チェーホフ氏の四大戯曲の一つを、二時間で読めるように現代の言葉でわかりやすくまとめられている。 主人公であるラネーフスカヤは、貴族としてなに不自由なく育ち、…

【書評】諦めずに想いを継続できる人は、かけがえのない人『私はスカーレット Ⅰ』

本書は名作「風と共に去りぬ」を著者、林真理子氏のアレンジにより主人公スカーレット・オハラを一人称にして新たに生まれ変わらせたストーリーである。 世界的な有名作品にもかかわらず、評者自身は、小説や恋愛ものはあまり読まないため、ストーリーを知ら…

【書評】しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事を見れば、道はつねに幾通りもある。『竜馬がゆく一』 

坂本竜馬は、不思議な人物だった。決して欲というものがなく、周りが勤王だ、攘夷だ、と熱に浮かされ騒いでいる中で、一人冷静に自分の考えを持ち、かといって自分の中にはしっかりと熱く燃えるものをもっている。周りに流されなければ生きづらい世の中でも…

【書評】現在というのは、どんな過去にも勝る。『何もかも憂鬱な夜に』

何かを破壊したい、と思ったことはないだろうか。誰にでも、ある時期には、どうしようもない破壊衝動のようなものが沸き起こってはこないだろうか。こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。 ラベリング理論というものがある。前科のレッテ…

【書評】なによりも怖いのは、恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうこと。『レキシントンの幽霊』

真夜中のリビングではじまる幽霊たちのパーティ。穴の中から出てくる緑色の獣。氷男と結婚した女。本書では、不思議な世界が、七つの短編で繰り広げられます。 胸がざわざわするような恐怖感を感じるけれど、どこか心地よい世界観。わけがわからないけど、何…