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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】恐怖の爪痕: 『羆嵐』に見る自然の猛威

こんにちは皆さん。先日、映画『ゴールデン・カムイ』を見てきました。明治時代の北海道を舞台としたストーリーです。
そこで今日は以前読んだ本、『羆嵐』についお話しします。

自然の中には、我々人間が理解し、制御することのできない力が存在します。それは、時に我々を恐怖に陥れ、自身の無力さを痛感させます。吉村 昭の『羆嵐』は、そのような自然の力と人間の無力さを描いた作品です。

羆嵐』は、北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻き込んだ一頭の羆(ヒグマ)の出現について描かれています。日本獣害史上最大の惨事とされ、大正4年12月に起こった事件を基にしています。冬眠の時期を逸した羆が、わずか5日間に7名の死亡者、3名の負傷者を出しました。
この事件は、読者に自然の厳しさと人間の生存への意志を深く考えさせます。また、羆が女性や子供を優先的に襲うという描写は、羆の行動パターンや人間社会の脆弱性を浮き彫りにしています。
さらに、この作品を通じて、アイヌの人々やマタギ(狩猟の専門家)といった、自然との深いつながりを持つ人々の知識や視点を学ぶことができます。彼らは自然と直接対峙し、その中で生き抜くための知識と経験を持っています。彼らの生き方や価値観は、自然との共存や生態系の理解について私たちに多くのことを教えてくれます。
しかし、新たに開拓された地域や集落では、アイヌの知識が十分に理解されていなかった可能性があります。また、文化的な違いや言語の壁、当時の社会的な状況などが、アイヌの知識の共有を難しくしていた可能性もあります。これは、自分たちの文化や価値観を他者に押し付ける傾向(エスノセントリズム)や、自分たちと異なるものを理解しようとする努力が不足していることが原因となります。
羆嵐』は、自然との共存方法や異文化理解の重要性について考える良い機会となる作品です。自然の力と人間の無力さを描いたこの作品を通じて、我々は自然との関係や生態系のバランス、人間社会の対応など、多くの重要な問題を考えることができます。

以上、吉村 昭の『羆嵐』についての考察でした。この作品を読むことで、自然と人間との関係、異文化理解の重要性など、多くの重要なテーマについて考えることができます。自然との共存、異文化間の理解、そして人間社会の対応という視点から、我々は自然との関係を再考し、より良い共存を目指すべきです。