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オールタイムベスト書評100|③モテに関する本9選|HIU公式書評ブログ|note

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・Yumi Ishii

  

・守本 桂子

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■HIU書評ブログについて 
本ブログは編集長 野村 公太 および複数のメンバーにより運営を行っています。
そのため、堀江貴文イノベーション大学校(HIU)の運営元であるSNS media&consulting 株式会社や、堀江貴文氏は当ブログの運営元ではございません。
堀江貴文イノベーション大学校の運営元から公式としての運営の許可は頂いております。

 

 

【書評】想定外の稼ぎ方『副業は看板広告で稼ぎなさい』

著者は、広告代理店勤務の経験を活かして、ひとり広告代理店を立ち上げた主婦。
そんな、ひとり社長が提唱する副業は、「看板広告」。
看板の設置までは手間がかかるものの契約後は、毎年、請求書を発送するだけで売り上げが立つという。
もちろん、広告のデザインや設置、権利関連の手続きは自分でするのではなく、プロにお任せ。
代理店が実施することは、看板を必要とするお店に適切な看板設置の提案をすること。
といっても、「デザイン」「大きさ」「どこに設置するか」で効果が変わるので、センスある提案が必要。
一口に看板と言っても、さまざまな種類がある。
電柱に取り付ける「電柱看板」、畑や空き地に設置する「立て看板」、建物の壁面や屋上を利用した「建物看板」。
宣伝したい内容にマッチした看板を適切な場所に設置する提案をして、クライアントの売り上げアップにつなげることが大切。

現在は、情報化社会。広告というと「動画広告」「アフィリエイト」「リスティング」「ライブ配信広告」・・・・・・など、Web関連を思い浮かべるが、実社会において看板は今でも有効な手段。
アナログチックな手法であるが、店にも社会にも役立つアイテムであり、そこから権利収入が得られることは盲点だった。
広告代理店に勤務している人、していた人は、一読すれば始められる副業と考える。
老後の年金作りに看板広告、検討する価値は十分にある。


作者:小宮 絵美
発売日:2024年10月29日
メディア:あさ出版

 

 

【書評】真実は美徳だと買いかぶられている。『流れよわが涙、と警官は言った』

「今までに書いたものの中で最高だし、どうしてこんなものが書けたのか、自分でも見当がつかない」
ディック本人がそう語る本作は、ディック後期の傑作とされている。

三千万人もの視聴者を誇るマルチタレントのジェイスン・タヴァナーは、或る事件で瀕死の状態となるが、目が覚めた時には見知らぬ場末の安ホテルに居た。
昨夜まで超人気タレントだったのに、その世界では誰もタヴァナーを知らない。
IDファイルも、出生記録すら無い、この世に存在しない男になってしまったのだった。
一体、彼はどうなってしまったのか。元の世界を取り戻せるのか。
偽造IDを作ることを考えたタヴァナーは、街へと赴く。そこから様々な人々と出会っていき、やがて、フェリックス・バックマン警察本部長と邂逅するのであった。

巻末の解説によれば、執筆当時の1970年にディックは4人目の妻と子供に逃げられた人生最悪の時だったということだ。その結果、自伝的要素を排除できずに、自らが望んだ訳ではないにしろ自伝的な内容になってしまったらしい。
そして、速書きで知られるディックにしては稀なことに、幾度も推敲を重ね、本書が発表されたのは1974年となっている。
なかなか独創的というか抽象的な作品で、ディック作品なのでSF小説ではあるのだが、全体的にサスペンス色に包まれており、SF的な設定や社会的な背景は存在するものの、それらについて殆ど説明も無く、内容的には人間感や愛について登場人物たちが語る部分が印象に残る、文学的要素の強い一作である。

流れよわが涙、と警官は言った
作者: フィリップ・K・ディック
発売日:1989年2月15日
メディア:文庫本

 

 

【書評】Vol.2〜2章まで読み終わりました〜2024ノーベル文学賞ハン・ガン『すべての白いものたちの』

先日、10月16日掲載の書評で、冒頭の「ドア」の節は要らず、「おくるみ」から、私なら始める、と批評した。つまり、「おくるみ」の節が、ほんとうに見事なのである。詩人らしく、一言一句全て整い正確で、それゆえ破れている。読み進めない理由はない。

つぎの「産着」の衝撃も強い。私も、次女のお産では破水が先で、産婦人科まで送ってくれる夫の車が揺れるたびに冷や汗が出た。羊水が全部出てしまうと、感染症を起こして赤ちゃんに危険が及ぶと聞いていたからだ。運転する夫も、緊張していた。夫の車に乗っていても、なおかつ2回目のお産でも、あれだけ心許なかったのだから、誰一人頼れない状況での初産で、その状況…は、想像を絶する。絶するのに、この文章を読むと、目の前にありありと様子が浮かんできた。

私にとって、「ドア」の節は、読み始めるための枷になった。しかし、作者にとっては、この「ドア」が不可欠なのだろう。自分にとっての、大きなトラウマに触れるとき、通常は安全弁が必要だ。私のように全開にしてしまっては、この世とうまく繋がれなくなってしまう(笑)  しかし私にとっては、このドアは不要だし、資本主義でタイパコスパ重視の消費者たちにとってもまた、おそらく同様であろう。

文学の畑に足を踏み入れたばかりの頃の私は、「文学の役割は終わった」、「文学が果たすべき役割は、すべて精神医学がやってしまった」と感じていた。しかし、私は精神医学に、不完全さがまだ多々あり、文学のーーとりわけ女性の精神についての文学が、人間界をよりよくするために重要な役割をもっている事に気が付いた。それは、ハン・ガンが取り組んでいる"トラウマの癒し"を中核となしている部分だと思われる。私もまた、トラウマ治療を手探りでおこなっている。私のトラウマ治療は未完である。未完であるが故に、この「ドア」の存在を、否定してしまったのだろう。この「ドア」には大切な役割がある。

私は、文学に足を踏み入れたことで、自分が修めた臨床心理学よりも、文学の方が高い位置にあることを学んだ。心理学がまだ新しい学問で、文学の歴史の、足元にも及ばないことから、それはまあ、さもありなん、ということなのかもしれないが…。文学が、まさか科学を牽引しているとは、思ってもみなかった。

それにしても、ノーベル「文学」賞を、受賞者の原文で読めないとは、文学を志す者として、なんたることだろう。それでも、その美しさを再現してくださった、訳者の斎藤真理子氏の偉業を讃えたいです。
韓国語はおそらく、他のどの言語よりも、感覚的な面で日本語と近いはずだ。ノーベル文学賞受賞者の感覚に近い文章で読めるということは、日本語を母国語とする私達にとっても、良質の文学を味わう良い機会になる。
出産は、男性の身には起きないことだけれど、かならず男性もお母さんのお産を経てこの世に生まれたのだから、その事実と無関係ではいられないはず。お産は、全人類にとって、自分事である。

「白い街」の節は、ワルシャワのことであるらしい。世界史については"履修漏れ世代"のため、私には残念ながらあまり地理的な実感が沸かない。それにしても、履修漏れ問題のなんと恥ずべきことか。世界史も倫理も未履修で、学士を気取って恥ずかしい。

筆者は、生まれて2時間で死んだお姉さんの影に取り憑かれて生きてきた。似た境遇をもつ詩人が、日本にもいる。やはり似たような雰囲気の文体で、安定的に少し宙に浮いた、安定的に詩的な文章を書く方だ。彼女らの文章には、死が常にそこら辺に、ナチュラルにふわふわと浮いている。2人とも、「もう1人」を、サバイバーズギルトの上に載せ、二重の五感で生きている。しかしハン・ガンの文章からは、より力強さがーーどうかすると愉快ささえ滲み出ている。
ああ、
この力強さは、第一章第一節の、私が要らないと言った「ドア」の印象が支えているものなのだろう。作者はこの説で、日曜大工を行っている。この節がないと、著者のイメージを、非常に弱い人として、読者に届け兼ねない。その意味で、読者に対する重要な意味をもっていたのだ。私は浅はかだから、その節の存在の意味を、全く予測できなかった。
それにしても2人とも、自分自身を突き離して、ずいぶんと遠くから眺めている。その視線がもう既に、詩的なのだ。

本書の節の区切り方は、たくましい女性のそれらしく、非常に潔い。冒頭の「おくるみ」もとても短い節だが、負けず劣らず短い「乳」の節も、私には衝撃的であった。
赤ん坊の存在を感じると、おっぱいが張る。自分の人生とは一切無関係な、生命の本能を、自分の中にじんじん感じる瞬間である。およそ人生などというものを、相対化させてしまうあの瞬間が、こんなにも厳しく女性の精神を打ちのめす。

===

第2章の「雪片」は、私は好きではない。小説家の父のもとで育った筆者に、資本主義のにおいが染み付いているのを感じた。孤独は、ぞっとすると書くほどのものでもない。筆者がぞっと感じたのはほんとうだろうし、読んでいる私もぞっに感染した。だが言葉を持たない方が優れていることもある。あなたは本物の孤独を感じたことがない。

では、目に映る全てを詩にしているあなたの行動に、どれほどの生産性があろうか。それは無駄な時間ではないのか。たまたま、あなたには天賦の才能があり、あなたの作品が評価されることになり、売れて消費される品物となったかもしれないが、彼がもしその瞬間、詩をつくっていたらどうする。あなたが過ごした時間と、本質的には同じではないのか。
生産性がある行為といえば、例えばブドウ球菌が増殖するのは生産性があるだろうか。子孫を残したら生産性があるのだとすれば、ブドウ球菌業界では「評価」されるのだろうか。確かに彼はあなたを不快な思いにさせたかもしれないが、それはあなたの感覚でしかない。何の危害も加えてこない、別の認識世界を生きている、国籍も違う1体のオスのホモサピエンスの時間を、「無駄」と推し量るのはいかがなものだろうか。

===

「万年雪」と「砂」、そして「白く笑う」が好きである(「白い石」「灯たち」「ハンカチ」「息」「レースのカーテン」も。迂闊に好きとは言えない苦しい推し節もある)
共通したテーマをもつ散文詩の作品群は、内容的にずいぶんとバラエティに富んでいても、心地良い通低音が絶えず流れている。その洞察の発露は、かなりの長い期間、拘りを持ち続けた筆者によって書かれているので、繊細かつ発見に満ちている。

糖衣錠」の節に、急に堂々と顔を出したトラウマに対する脱皮には、あっと驚かされた。その次の「角砂糖」では少し明るささえ湛えている。この引っ込んではひょこりと顔を出す、行きつ戻りつの過程こそが、トラウマの根本的な性質なのだ。
私がそう精神医学的な解説を加えてしまうと、するりと皆の目の前を通り過ぎていってしまうけれど、これほどの質量の作品群からは、彼女の過ごすひとつひとつの時が、ゆっくりと読者の胸に降り積もりながら、読者のこころの奥に堆積してゆく。

作品群のひとつひとつが、筆者がトラウマを乗り越え、自己を象(かたち)造っていく癒しの道だった。心なしか、読み進めていくと、だんだんと著者の文体に、元気を感じるようになる。

それでもトラウマは、しつこく、ねちねちとことあるごとに顔を出す。
だけど私達読者がこの道をなぞることで、さらに確実に、彼女の傷は癒えていくだろう。そして彼女の傷は、人の倫を造るだろう。

 

 

【書評】早目の準備が肝心『老後資産はドルで増やしなさい』

著者は、外資系の証券会社を20年間渡り歩いた日本人女性。
現在は、将来のお金に不安を抱いている方々に、お金の管理や増やし方について教える学校を主催するお金の先生。

2019年に世間をざわつかせた「老後2000万円問題」、老後資金が足りなくなる根拠は下記の通り。
年金の受け取り額22万1227円、月の支出27万円。
不足する月額5万円×12ヵ月=年間60万円。
65歳で定年退職したあと、100歳まで生きると60万円×35年=2100万円。
「毎月不足する5万円は自助努力で何とかしてください」

著者は、以下2つの理由により倍の老後資金を準備することを推奨している。
①    総務省の公表している支出額に遊興費が含まれていない上に全国平均を採用しているため、都会で生活する人はそれ以上の生活費が必要となる。
②    月22万円の年金を受給できる人は、現役時代に相当な高所得者であり、厚生年金の平均受給額は男性17万円、女性11万円弱。
現状と乖離している金額であるため、現実はさらに厳しくなる。

これに対抗するための対策は以下の2つ
①    日本年金機構から送付されてくる「ねんきん定期便」で自分の受給できる年額を確認する。
②    不足分を補うために、できるだけ早く「米ドル建て終身保険に加入する」。
毎年、保険料控除を使うことで支払う税金を軽減しながら、基軸通貨である米ドルで資産を形成する。

本書では、米ドルに資産を預ける理由はもちろん、引き出すとき、ドル安だった場合の考え方などが分かりやすい言葉で書かれている。
個人的に読み応えがあったのが、4章「何が為替を動かすのか」である。
為替の仕組み、価格が変動する要因、金利と為替の関係など、外国為替の仕組みがとても理解しやすかった。

老後の準備は早ければ早いほど、有利にことが運ぶ。
まずは、現状を知るためにも一読し、対処する方法を頭に入れておきたいものである。

作  者:浦井 麻美
発売日:2021年3月1日
メディア: かんき出版

 

 

【書評】ノーベル文学賞、発表ほやほや!『全ての白いものたちの』

先週、2024年10月、韓国で初のノーベル文学賞作家が誕生しました。日本では村上春樹の受賞が長年期待されてきただけに、隣国のライバルである韓国人の受賞は、私たち日本人にとっていくらかモヤる結果だったと推察されます。SNS上では急に村上春樹の作品批判が始まり、作家志望者としては胸が苦しくなりました。
しかし、作品の批判はむしろ作家の存在感を照らすので、村上作品はしばらくこの逆風の中で読まれるでしょうし、村上氏がその現象にインスパイアされる流れを私は期待します。

ハン・ガンの受賞を聞いたとき、私個人としては、韓流POP文化が世界のエンタメを席巻していることと合点が行き、答え合わせができたような気持ちになりました。また、同じアジア人女性として勇気づけられました。ここ最近、ノーベル文学賞は女性の受賞が続いています。私もぜひそれに続きたいです、笑。

本書を手にとったものの、どなたかの書評を読んで、既に満足してしまった感があり、すぐには、入ってゆけませんでした。でもさ、購入したから、読んでなくても書評を書くことを許して欲しい。これからはさ、一を聞いて十を知っちゃうスピード感が必要な時代なんだし、私は「積読書評」を推進していきたいと勝手に思っています。
読むより、積読が大事じゃない?!

白にすら、なる前の。

購入は、読むことよりも、作家にコミットしていると思うから。

===

って、書いた後に、ご本人のノーベル賞受賞インタビュー記事を読み、彼女が子供の頃から韓国文学に囲まれて育ち、またこの作品が自伝的小説であることを知りました。そしてこの本の題材は、日本で今、ケアの声が広がりはじめたばかりの「周産期喪失(ペリネイタルロス)」です。これらの認識を踏まえて、もう一度スタートをきって、読んでみました。

「ドア」は要らない。
「おくるみ」から始めればいい。
その次に「私」。
私なら、そういう風に置く。

初学者の、初見の、感想。

これから、ゆっくり滋養(あじ)わいながら、読みたい作品です。

 

 

【書評】人生を好転させる、一瞬で相手を引き込む『奇跡の声トレ』

著者は、累計4万人の受講生の声と人生を好転させてきたボイストレーニングスクール代表。
「声を変えるだけで、人生が変わるの?」と思う方もいると思うが、声が変わると間違いなく人生は変わる。
蚊の鳴くような声で高額商品を売る営業マンが、やり手営業マンの話し方に変わるだけで、成約率が高まり収入も高くなる。つまり、人生が変わるのである。
そもそも、アメリカ大統領に立候補する人でボソボソと話す人はいない。
大衆は力強い声と共に発せられる言葉に感銘を受けるから、候補者に票を投じるのである。

本書は、冒頭に読者の声のタイプを3つに分け、本編でタイプ別の問題点と解決策を提示している。
例えば、「虚弱声タイプ」の人は、腹式呼吸を意識することで、遠くへ通る声を意識して使うことで説得力のある声に変える。
「もごもご声タイプ」の人は、表情筋や舌を鍛えて、噛まずに話せるようにする。
「不愛想声タイプ」の人は、一本調子で話すのではなく、言葉に緩急や大きさを持たせることで、聞きやすくする。

人と人がコミュニケーションを図る際、相手に与える影響を数値化した“メラビアンの法則”によると、「見た目・表情・しぐさ」55%に対して、誰もが気にしている「話す内容」は7%。
多くのビジネスパーソンが、第一印象を良くするために服装や見た目に気を使っているが、“メラビアンの法則”で「声の質・口調」の割合は38%。
ライバルと差をつけるのに、声を磨くことが効率のよい改善策であることがわかる。
こっそりと一読して差をつけたいものである。

作  者:秋竹 朋子
発売日:2024年9月26日
メディア:Gakken

 

 

【書評】京都の洛中ではこう伝える!?『エレガントな毒の吐き方)』

京都の伝え方で、近所のピアノが毎日聞こえてくる時に「ピアノ上達しましたね。」なんて伝えます。
ピアノがうるさいのですが、直接はっきり伝えません。

家を買って、これからもローンが長いのであまり隣と仲を悪くするのが嫌で伝えられない。
そんな時には、京都式の伝え方を学べばいいんですよ。

京都のいけず文化、嫌味を伝える文化は同じ関西でも嫌われることもあるんですが、本書を読めば理由はわかります。(※嫌われる理由もわかります)
京都の嫌味はにこりと笑顔で相手の心に届いて離れません。もし、伝わらないのであれば、後で笑われることになります。(だから嫌いな人もいます。)本書では、脳科学者の中野信子が京都のいけず文化をわかりやすく解説しています。なるほどなぁ・・。でも私も笑われているんだろうなぁと。納得してました。

京都の文化的な背景からなぜ今、京都のいけず文化を本にしたのかを解説してますが、ロンパ王が流行っている中での真反対のマーケティングをしている本書は書店で思わず手に取ってしまいました。
考え方が分かれば、今までの嫌味を思い出せますね。反省もできます。
うーん、と一汗かきながら思い出を堪能しました。

本書は、コミュニケーションをしっかりととる実業家には必要な内容です。もっと早く知っていればと。
著者はテレビでもよく見る「中野信子先生」です。脳科学者です。YouTubeでも検索したら出るので、私がここで書かなくても大丈夫な知名度です。脳科学者の視点で解説するのですが、思わず2度ミスるような話かと思いきや、普通の話をされるタイプです。お時間がある方は一度試聴をお勧めします。ちなみに、丸と三角のメガネをかけた方といい、科学者でテレビに出られる方は、結論がまともですね。話始めが驚きますが。

昨今のコミュニケーションが取れずに家出している少年少女たちに学校の授業としてお届けしてほしい。まず、腹が立っても誉めるなんてしたことない人も多いでしょう。受験勉強には必要ないですが、学校教育には必要な知識と技術です。本書を読んでコミュニケーションを活発化させたいので、本書でのスローリーディングをぜひ。

 

 

【書評】日本文学の権威としての『坊ちゃん』

こんなものを子どものうちから読ませるなんて、日本の教育者はばかなんだろうか。こんなものから学ぶから、「女には学がない方が尊い」だとか、「田舎はださい」だとか、自称インテリたちの間で価値観が醸成され続けてきたのではないか。教育学部附属の生徒が実習の先生をいびる例が後をたたなかったのも、本の読み過ぎでばかになっていることの好例なのではないか?

そもそも、坪内逍遥の『小説神髄』で必死の小説擁護が唱えられる以前には、小説は子どもに読ませるべきでないと言われていた。資本主義における、刺激的で新しいメディアは、ーー漫画もテレビも、ゲームもYouTubeも、「教育によくない」と言われながらも、寄り切って社会に受け入れられてきた。

もしも、若いうちから小説を読みたいのなら、先に小説、すくなくとも物語を書いてみることだ。そしたら作者がどんな計算をもって書いているかが少しわかるだろう。小説を読んで得られた感情のほとんどは、緻密に計算された、させられ体験でしかない。自分がたぶらかされ、洗脳されそうになっていることに、いつもハリセンボンみたいに針をおっ立てながら読むことだ。殊、自己の体験が少なく、批判的能力がない子どものうちから、顔がお札になったり、ノーベル文学賞を貰っているような文学者の小説を、ありがたかって読むのは危険が伴うと思う。物語に酔いしれるって素敵なことではあるけれど…。

誤解は新たな誤解を産み、言葉は新たな思考回路を産み出し、私達の価値観は進化しているように見えて、ある側面では、訳のわからない所に着地しているようにも思える。私たちの価値観や美意識、あるいは本能さえも、言葉によって更新されつづけている。
こんな時代に、変わらないものなんてない。あるとすればそれは、小説に書いてあることなんかじゃなくて、石や、樹や、水だ。ある時代において先端にいた文学者を神格化するのは、程々にしておいた方がいい。私たちをたぶらかす、悪魔である。しかもどうせただの「坊ちゃん」である。

 

 

【書評】普遍性を感じる『現代語訳 学問のすすめ』

約150年前の明治に70万部も売れた名著を教育学者の斉藤孝さんが現代語訳され、スッと入ってくる内容です。
訳者は「学問のすすめ」は現代を生きる我々にも読む意義が十分にあると力説されてます。

まず男尊女卑の色濃い明治下で福澤諭吉は女性に不公平な社会を徹底的に不合理な事だと批判し、現代のSDGs的な情勢を見極める目を持ってるところは意義深いです。

またAIなどの技術革新で仕事しなくても済むような現代を福澤流に言えば「衣食住を得るだけでは蟻と同じ」とバッサリ斬り「独立の気概ない者は、必ず人に頼るようになり、その人を忘れ、へつらうようになる」と説き、生活維持するだけではダメで社会参加の意識は必要なことを明言してます。

さらに現代のSNS社会において福澤流に言えば「交際」ということになり「関心を様々にもち偏らず色んな人から刺激を受けながら、多方面で人と接しよう」と説いているのは、まさにHIUの行動指針に似た内容と言えます。

最後に翻訳者斉藤孝さんの解説として福澤諭吉の言葉は、学校の教科書とは違い一個人が責任をもって自分の声、体ごとで表現されている。また温かさと迫力があり親しみがもてる文体は権威を振りかざさず、美辞麗句を嫌い論理的。さらに人柄はざっくりとして快活、保身や嫉妬なく、是々非々で物事を考える本質を見極める「筋力」があると評してます。

読めば読むほど現代版ビジネス書としても捉えられる一冊で、数ある堀江さん本にも通じる所が随所にあり普遍性を感じさせます。

発売日:2009/02/10
著者:福澤諭吉
訳者:斉藤孝
筑摩書房