ライター:浅野智
岡田斗司夫氏が、「オススメするSF小説と言うならこの三作」と掲げた内の一作。なので、ものは試しと手にしてみた。作者のカート・ヴォネガット・ジュニアのことは知らなかった。本作は長篇二作目で、当時無名だったが、後年にはヴォネガット初期の代表作と…
「今までに書いたものの中で最高だし、どうしてこんなものが書けたのか、自分でも見当がつかない」ディック本人がそう語る本作は、ディック後期の傑作とされている。 三千万人もの視聴者を誇るマルチタレントのジェイスン・タヴァナーは、或る事件で瀕死の状…
大昔のSF小説では、近未来には火星くらいには地球人も到達していて、植民地にしているだろうというのがいかにも当たり前的だった。1964年発表の本作の舞台も火星であり、どうやって環境を整備したかは語られはしないが、普通に人類が大気の下に暮らしている…
明治から昭和にかけて活躍し、小説の神様と言われた志賀直哉の短編集。私が本書を手にした動機としては、作家、北方謙三が、小説家になる為に志賀直哉の『城の崎にて』を原稿用紙に書き写したりして学んだということを知ったので、一度読んでみようと思って…
1968年発表の『2001年宇宙の旅』、1982年の『2010年宇宙の旅』に、1987年の『2061年宇宙の旅』ときて、1997年には本作を発表。とうとう一作目から1000年が経ってしまった。どこまで行く気なの? と思ったら、これがシリーズ完結篇である。それにしても、『終…
ヤバい。ウケる。翻訳一つでまさかハードSFの印象があるディック小説がこんなゲスい作風になるとは! (不適切発言 笑)だけど、どこからともなく供給されるドラッグ「物質D」がアメリカ中に蔓延している未来社会が舞台で、皆んながラリパッパなので、これで…
一作目の『2001年宇宙の旅』が1968年、二作目『2010年宇宙の旅』は1982年に、そして本作は1987年に発表されている。タイトルでお分かりの様に、前作『2010年宇宙の旅』から51年も経過しているという奇抜さ。そんな第三作目が一体何を物語ると言うのか。主人…
大ヒットーーーそんな在り来たりの言葉では言い表せない不朽の名画『2001年宇宙の旅』。その続編はあり得ないと長年言い続けていたアーサー・C・クラークが、1977年の引退宣言、そして1979年の作家復活を経て、ついに1982年1月に発表したのが本作である。『2…
デザインはビジネスに役立つ力であるが、まだまだ十分に活用されていない。この解決の為には、デザイナーがデザインの必要性や使い方を論理的に説明し、理解いただける様にする必要がある。電通出身のアートディレクターである著者は、その様に考えて本書を…
本書では、金融・資本市場の成り立ち、金融仲介機能や、ドライバーであるデリバリティブ取引、証券化市場などを詳細に解説する。一方で、リスク管理にも注視し、リスク管理標準としてのVaR(バリュー・アット・リスク)、バーゼル規制、ストレステストといっ…
本作は、スタンリー・キューブリック監督による1968年のSF映画の小説版である。映画公開後に発表されたもののノベライズではなく、先行して書かれたものだ。きっかけはキューブリックからクラークへのアプローチ。「語り草になる様な良いSF映画を作りたいの…
SF史上の大傑作と多くの人々に絶賛されている本作が2015年にアメリカでドラマ化されているのは、なかなか驚きだ。なんといっても本作が最初にアメリカで刊行されたのは1952年なのである。 作者のアーサー・C・クラークといえば、ロバート・A・ハインライン、…
短篇『宇宙の死者』と同様の世界観を持った本作。つまり、人間が死後、或る程度の期間「半生状態」にあるという未来だ。遺体は安息所で冷凍保存され、遺族は棺を通して半生者との脳波の交換、対話が可能だ。そして、「半生期間」が終わると本当の死が訪れる…
私が読む三島由紀夫の作品は、これで二冊目なので良くは存じていないながら、三島作品ではSF的な本作は異色のものだそうだ。三島当人は、どうやら推理小説は全否定しているが、SF小説は好んで読んでいたらしく、こう語っている。「推理小説などと違って、そ…
1956年に発表されたロバート・A・ハインラインによる古典的SF小説であり、代表作ともされている本書。実は今更初めて読んでみた。名作として名高いのは知っていたが、なんの予備知識もなく頁を繰ってみると、最初の頃は一人称の主人公の回りくどい言い回しや…
私が初めて読んだ北方謙三の小説。今でこそ『三国志』や『水滸伝』などと言った『中国歴史小説のアツいヤツ版』の作家になっているが、元々は『逃がれの街』『友よ、静かに瞑れ』といったハードボイルド作家として鳴らしていた。何故現代劇から身を引いてし…
私が初めて読んだ北方謙三の小説。今でこそ『三国志』や『水滸伝』などと言った『中国歴史小説のアツいヤツ版』の作家になっているが、元々は『逃がれの街』『友よ、静かに瞑れ』といったハードボイルド作家として鳴らしていた。何故現代劇から身を引いてし…
本誌は1977年初出のものを文庫化したもので、何故今更読んでみたのかと言うと、手塚治虫自体がどういう具合に創作しているのかが知れるであろうと思ったからだ。漫画の神様の作品作りとは一体どんなものだろうか? そういう次第。まえがきで、「この本は、い…
本作は、私が初めて読んだディックの小説だ。手にした動機は無論、映画『ブレードランナー』の原作だったからだ。その映画は、私に非常なショックを与えた。その頃のSF映画と言えば、ピュンピュンとレーザー光線が飛び交う様なスペースオペラ的なものが当た…
1986年から1988年にかけて小説雑誌の『野性時代』に連載された第12部は、作品として発表されたものとしては最後のエピソードで、実質的なシリーズ最終話となっている。これまで各話毎に表現方法や作風、火の鳥の扱い方など様々な変化や工夫を凝らしてきてい…
事情はよく知らないが、近年になって改めて連続刊行されたディック短篇傑作選も本書で6冊目。2014年に発刊されたものだが、とうやらこれでひと段落らしい。ディックの全短篇約120篇の内、64篇を編纂したことになるのだと言う。だから以前読んだことのある短…
『宇宙編』は第4部で、『ヤマト編』と『鳳凰編』の間に、『生命編』は第10部なので、『乱世編』と『異形編』に挟まれている作品だ。作品発表順に読みたいこの身からすれば、どうにも少々意地悪な編集である。例え作品間の関連性が殆ど無く、作風もそれぞれで…
第9部は12世紀末、平安時代の終わり頃の時代を描く。作中では『鳳凰編』の我王のその後も描かれている。我王は、居座った権力の座はいずれのっとられる定めと、その冷酷さをむなしいと嘆く。その言葉の通り、本作では物語の前半こそ平清盛が絶対的な権力を振…
本書では、前半が短めでスッと読める短篇が続く。アイデア・ストーリーの達者なディックらしく、ユニークな設定やシチュエーションの連続で、中にはコメディとしか思えないおバカネタもちらほら。しかし、後半には超能力アクションSF中篇などが控えており、…
本書では、前半が短めでスッと読める短篇が続く。アイデア・ストーリーの達者なディックらしく、ユニークな設定やシチュエーションの連続で、中にはコメディとしか思えないおバカネタもちらほら。しかし、後半には超能力アクションSF中篇などが控えており、…
第8部『望郷編』は、STUDIO4℃によって『火の鳥 エデンの宙(そら)』としてアニメ化され、2023年9月にディズニープラスが世界独占配信し、且つ、同年11月には『火の鳥 エデンの花』というタイトルで映画も公開された。タイトルが異なるのは、ラストが違う作…
第6部は西暦2482年の未来を描く『復活編』。エア・カーから一人の少年が墜落死した。内臓は破裂、骨は砕け、もちろん即死だった。しかし物語はここから始まる。少年の名はレオナ。彼が目を覚ました時、視界は完全に異様なものになっていた。縞模様だけの世界…
シリーズ第5部の『鳳凰編』は第2部以来になる長篇作であるが、火の鳥は長篇作の方が評価が高い様に思う。本作はその中でも特に人気があるのではないだろうか。個人的にもかなり面白い作品と思っている。 舞台は8世紀、奈良時代の日本。シリーズを通して重要…
短篇集というものは割と奇抜なものに出会い易い。長篇作とは異なり、作者も何かしらのチャレンジを行なうのにハードルが低いのだ。初っ端の『待機員』がその一つ。舞台設定自体がふざけていて、コンピュータが大統領を勤める未来の合衆国で、主人公は失業者…
短篇集というものは割と奇抜なものに出会い易い。長篇作とは異なり、作者も何かしらのチャレンジを行なうのにハードルが低いのだ。初っ端の『待機員』がその一つ。舞台設定自体がふざけていて、コンピュータが大統領を勤める未来の合衆国で、主人公は失業者…