HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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ライター:浅野智

【書評】疑ってはいません。誰も平等に信じていないだけです。 『フィルムノワール/黒色影片』

久し振りの二村永爾シリーズ。作家デビュー間もない頃、1972年の短編に於いて神奈川県警の刑事として登場した二村永爾は、矢作俊彦としては異例で、他に類を見ないことなのだが、その後長らく登場することになった人物だ。三作の短編を経て、1978年に長編一…

【書評】おとうさん。人類のためにばかり奉仕していたら、しまいにはベトナム和平にまで手を出さなきゃならなくなるよ。『決定版 ゲゲゲの鬼太郎2 吸血鬼エリート・妖怪獣』

水木しげる 生誕100周年を受けて、中公文庫から毎月1冊ずつ刊行中の全集の第2巻。この全集は、1965年から1987年にかけて『週刊少年マガジン』『別冊少年マガジン』『月刊少年マガジン』、そして『週刊少年サンデー』で連載されたものを、原則として掲載誌別…

【書評】それら全てが混じり合うことはない、ディックらしい複雑な群像劇。『シミュラクラ(新訳版)』

1980年、米中間で起きた衝突により勃発した第三次世界大戦。戦後、世界はワルシャワを中心とする共産主義体制と、ヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)とに二極化された。90年代には、USEAでは大統領ではなくそのファーストレディの方が民衆の圧倒的な信頼と…

【書評】SFなんだけどメインは夫婦の不仲のお話という変わり種小説。『去年を待ちながら』

ハードで形而上的な作品が多い印象のフィリップ・K・ディックであるが、これはなかなか手強い小説だった。舞台設定、状況説明が殆ど無いまま、様々な人々が現れ、複数の箇所に於いて話が進んでいくので、何が行なわれているのか、何を描こうとしているのか、…

【書評】現実と虚構の世界を描くサスペンス性の高いSF小説。『高い城の男』

小説というものは、アイデアと設定が重要なのは当然だが、分けてもSF作品というジャンルにとっては尚更と言えるだろう。フィリップ・K・ディックという作家は、優れたアイデア・ストーリーを作ることにかけての手腕は確かで、どの作品に於いても彼の描く世界…

【書評】多数派の存在が論理的に意味するものは、それと対応する少数派の存在である。『マイノリティ・リポート―ディック作品集』

SF界の鬼才フィリップ・K・ディックは、優れたアイデア・ストーリーを多数著した。表題作「マイノリティ・リポート」は、トム・クルーズ主演、スティーブン・スピルバーグ監督で2002年に映画化されたが、その設定はやはり特異なアイデアによって成り立ってい…

【書評】そこに立ち尽くした長い長い時間、私の目は何も追ってはいなかった。見るべきものは何もなかったからだ。『トラブル・イズ・マイ・ビジネス チャンドラー短篇全集 4』

全集の最終巻である。レイモンド・チャンドラーの全中短篇を、何名かの翻訳者に割り振っての新訳を施して年代順に編集した全集もいよいよ完結だ。1938年から1939年前半にかけて発表した五篇の中短編が収められた第3巻は既読の作品のみであったので、流石に目…

【書評】だが、よく聞け。あいにく説明はないのじゃ。うむ。説明は、何もないのじゃ。『最後の喫煙者 自選ドタバタ傑作集1』

非常に作品数が多い筒井康隆には、数多くの傑作集が存在するので、過去に読んだ作品と再び鉢合わせする機会も度々あるのだが、再録されるのはやはり面白いからであって、まぁどっちみち短編なんだから気にせずパーっともう一回読んでやってしまえということ…

【書評】「手を挙げなさい。天井に届くかどうかやってみるのよ」『トライ・ザ・ガール チャンドラー短篇全集 2』

ハードボイルド探偵小説界に於ける希代の名作家レイモンド・チャンドラー。その全中短篇を網羅しようという短篇全集の第2巻目に収録されているのは、1936年から1937年にかけて発表された七篇である。今回も、一作毎に翻訳者を変えており、読み比べてみれば、…

【書評】「何に乾杯しようか?」「いいから、だまって飲もうぜ」『キラー・イン・ザ・レイン チャンドラー短篇全集 1』

村上春樹による『ロング・グッドバイ』の新訳が刊行された影響で、改めてレイモンド・チャンドラーの作品が再評価されたのを機に、新訳で編まれた短中篇全集全4巻が発刊された。なかなかの商売上手ではないか。しかも、一作毎に翻訳者を変えるという凝りよう…

【書評】ユニークでサスペンスフルなアイデア・ストーリーの数々。『地図にない町 - ディック幻想短篇集』

「現代で最も重要なSF作家の一人」と呼ばれる迄になったフィリップ・K・ディックであるが、最も有名な作品は、映画『ブレードランナー』の原作として知られる『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であろう。自作の初映画化であった『ブレードランナー』…

【書評】未来をも生成するAI。『生成AI 社会を激変させるAIの創造力』

著者の肩書きは新サービス探検家だそうだ。IT業界で仕事をしながら、夏の雑草のように登場する新サービスの中で、将来性を感じるものについて調べてみたことを書籍としてまとめていることを指したものだ。本書は、「ChatGPT」や「Stable Diffusion」といった…

【書評】「マーロウ、あんたは依頼人には正直だって評判だな」「だから貧乏しているよ」『マーロウ最後の事件』

1930年代の社会・風俗面を最もよく象徴する一人。そう訳者が紹介する作家レイモンド・チャンドラーは、たとえアルコール中毒の悪癖が私的にはあったにせよ、ハードボイルド推理小説をいっぱしの文学にまで確立させた立役者である。本書は、彼が描いた代表的…

【書評】「マーロウ、あんたは依頼人には正直だって評判だな」「だから貧乏しているよ」『マーロウ最後の事件』

1930年代の社会・風俗面を最もよく象徴する一人。そう訳者が紹介する作家レイモンド・チャンドラーは、たとえアルコール中毒の悪癖が私的にはあったにせよ、ハードボイルド推理小説をいっぱしの文学にまで確立させた立役者である。本書は、彼が描いた代表的…

【書評】名作家の俳優業。『筒井康隆劇場 ジーザス・クライスト・トリックスター』

表題作の題名になんか聞き覚えがあるなぁ、と手にしてみた本書。なんだこりゃ。演劇などのシナリオ集ではないか。と思って、Wikipediaで調べてみれば、作者はかつて劇団「筒井康隆大一座」を立ち上げたことがあるのだそうだ。1981年8月9日に東京日比谷野外音…

【書評】ハードボイルド私立探偵の代名詞、フィリップ・マーロウの登場作。『大いなる眠り』

1922年にデビューし、アーネスト・ヘミングウェイを祖とするハードボイルド手法を、推理小説に持ち込んで成功させたのはサミュエル・ダシール・ハメットであったが、続いて1933年にハメットと同じく、推理小説パルプ・マガジン『ブラック・マスク』誌でデビ…

【書評】射たれたら死ぬんだって覚悟なら、いつでもできている。『チャンドラー短編全集4 雨の殺人者』

この短編全集シリーズには各々巻末に訳者あとがきが掲載されているが、本書では特別にあとがきの他に、訳者による「フィリップ・マーロウ誕生の前夜」が寄せられているのだが、これがいかにもこの全集の最終巻に相応しい。 レイモンド・チャンドラーの長編作…

【書評】人生はたった一度なのに、あやまちは何度でもくり返せるものなのね。『チャンドラー短編全集3 待っている』

「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。レイモ…

【書評】人生はたった一度なのに、あやまちは何度でもくり返せるものなのね。『チャンドラー短編全集3 待っている』

「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。レイモ…

【書評】大切なことは継続的な投稿。『ビジネスYouTube入門 その2 ショート動画ビジネス革命!』

自社の商品・サービスの価値を正確に伝えることが出来れば、価格競争からの脱却を実現出来ることになる。1分間の動画は、1分間で読める文章と比べて、4500倍の情報量があると言われている。YouTubeを活用した動画マーケティングは有効な価値訴求の手段である…

【書評】もめごとは僕の商売さ。『チャンドラー短編全集2 事件屋稼業』

「事件屋稼業」ダサかっこいい絶妙な和訳と思う。原題は「Trouble Is My Business」である。この表題作の中で、主人公は別の節回しでしばしば軽口を叩いてみせる。「もめごとは僕の商売さ」彼の商売とは私立探偵。その仕事を、いや彼の生き方そのものを指し…

【書評】たしかに俺は約束した、神の子を育てると・・・・・。『装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇』

超長生きロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』。時系列的な最新作OVA『幻影篇』の続きはどうするんだ? そのファンの声に応えて、高橋良輔監督が2020年9月から2022年12月にかけて電撃ホビーウェブ上でウェブ連載した、オトシマエ的小説が本作である。『幻影篇…

【書評】正真正銘、最後の新作。『リバースエッジ 大川端探偵社』

原作者のひじかた憂峰は、狩撫麻礼の別ペンネームである。画はたなか亜希夫が担当し、週刊漫画ゴラクで2007年12月から2022年7月まで、各話読み切りのスタイルで不定期連載された。ひじかた憂峰、つまり狩撫麻礼は2018年1月に死去したが、生前に残した原作の…

【書評】風の音が聞こえる。おれはこの広い世界にただひとりなのだ。『石ノ森章太郎デジタル大全 仮面ライダー』

『シン・仮面ライダー』を観た。公開2日目に観た。『シン・ウルトラマン』を最初は観るかどうか決めていなかったら、なんだか評判が割と良さげだったので、余計なネタバレが氾濫する前に慌てて観たのだったが、それと同じ理由だ。『シン・ウルトラマン』は結…

【書評】やっぱこれがオレの好きな鬼太郎なのよ。『決定版-ゲゲゲの鬼太郎1-妖怪大戦争・大海獣』

本書は、1965年に『週刊少年マガジン』でメジャー化してからの鬼太郎のお話バージョンである。メジャー化とは言っても、テレビアニメ第3シリーズ(1985年〜1988年、全108回)以降のイメージしかない方がこの原作を読んだら、違和感バリバリであろうと思う。…

【書評】かなりエグかった頃の鬼太郎。『墓場鬼太郎 貸本まんが復刻版』

言わずと知れた水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』は、もう何度もアニメ化され、すっかり世の中的には「鬼太郎 = いい感じのヤツ」になっているが、原作では妙に飄々とした案外とすっとぼけたあんちゃんだ。1954年の紙芝居から始まり、貸本漫画に居所を変…

【書評】殺人をヴェニス製の花瓶から取りだして路地裏に投げだした人々のチャンピオン。『チャンドラー短編全集1 赤い風』

「ハードボイルド小説の情緒的基盤は、あきらかに、殺人は発覚し正義が行なわれるということを信じない点にある」本書の序文で、作者であるレイモンド・チャンドラーはこう述べている。チャンドラーは、ハードボイルド探偵小説というスタイルを確立したと言…

【書評】獣人たちの革命は成るか?『バンパイヤ』

本作のことは、狼男モノとしてその存在は知っていたが、内容まではよく知らなかった。主人公のバンパイヤ トッペイ役を水谷豊が担当してテレビドラマ化もされ、バンパイヤの変身シーンや変身後の姿はアニメーションで描いたものを合成という変わった作り方だ…

【書評】大陸雄飛の夢に誘われて。『馬賊戦記』

誰からだったかはすっかりポンっと忘れてしまっているが、薦められるまま読んでみたら、これがやたらめったらとんでもなく面白い冒険活劇一大浪漫小説だった。嘘だと思ったら読んでみてちょーだい。戦前の満州を舞台に、日本人でありながら馬賊の攬把(ラン…

【書評】大陸雄飛の夢に誘われて。『馬賊戦記』

誰からだったかはすっかりポンっと忘れてしまっているが、薦められるまま読んでみたら、これがやたらめったらとんでもなく面白い冒険活劇一大浪漫小説だった。嘘だと思ったら読んでみてちょーだい。戦前の満州を舞台に、日本人でありながら馬賊の攬把(ラン…