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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】むなしい。権力はむなしいものよ。『火の鳥 乱世編(上下)』

第9部は12世紀末、平安時代の終わり頃の時代を描く。
作中では『鳳凰編』の我王のその後も描かれている。我王は、居座った権力の座はいずれのっとられる定めと、その冷酷さをむなしいと嘆く。
その言葉の通り、本作では物語の前半こそ平清盛が絶対的な権力を振るっている様を描くが、後半では権勢は次々に変わりゆく。まさに乱世である。
そして面白いことに、本作には火の鳥は登場しない。代わりに現れるのは、宗の国より贈られてきた火焔鳥である。生き血を飲めば永遠の生命を得るという言い伝えを信じ、清盛はどこまでも生き続け、平家一族を栄えさせたいと、この火焔鳥に望みを託す。
清盛に止まらず、その後の移り変わりゆく権力者たちもまた、火焔鳥の伝説に翻弄され、無情に果てていくのである。
つまり、キャラクターとしての火の鳥は登場しないのにもかかわらず、その伝説のみで物語に影響を与えるという、シリーズ上でもユニークなアプローチをしているのである。

また、キャラクターたちの配置もなかなか多重的であり、権力者たちを描く一方で、平民たちのパートも並行して進んでいく。
山で木こりをしていた弁太は、さむらいに家を焼かれ、親を殺され、許嫁のおぶうはさらわれた。
巡り巡っておぶうは平清盛に仕えることになった。
おぶうを追って京の都に出てきていた弁太は、街の浮浪児たち、我王、そして身を隠していた牛若こと源義経と出会う。
どうやら弁太が本作の主人公なのらしいのだが、他にも魅力的なキャラクターが多く、見どころは多岐に亘る。それらの中でも上巻に於ける最大の活躍を見せてくれるのは平清盛であろう。その行ない自体も面白いが、その人物像が極めて魅力的だ。
圧倒的な権勢を誇る非情な権力者でありながら、砕けた表情も見せる。殊におぶうとのやりとりには人間味を感じさせる。
そして、清盛亡き後の都は、騒然とした乱世の様相を呈していく。
次々と変わりゆく権力者たちに対して、戦いを嫌い、逞しく生き延びていく弁太。やはり彼が主人公と言えるのか。
本作のテーマとは何か?
永遠の権力、飽くなき欲望。だが、平等に皆に死は訪れる。そしてそれは、望みに反して無慈悲にもあっさりと。

火の鳥』シリーズをここまで時系列に読んできたが、本作では画風の変化を大きく感じた。モブシーンなどの細かい描写も相変わらず達者ながら、大コマや人物のアップが目立って多い。劇画から受けたる影響というのはこういうことなのであろうか。

上下巻の長丁場のお供には、『火の鳥 サプリメント in ウォーター編』をどうぞ。
https://mcm-megumi.com/special/hinotori/
特許取得のサプリメントを配合した、飲むサプリというオンリーワンで新感覚のお水『サプリメント in ウォーター MCM のめぐみ』が火の鳥パッケージとなったもので、手塚プロダクションのコラボ作です。決してパチモンではないので、よろしくお願い申し上げます。

火の鳥 乱世編(上下)
作者:手塚治虫
発売日:1992年12月10日
メディア:文庫本