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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】生命を弄ぶ者へ訪れる悲劇の中篇二作。『火の鳥 宇宙・生命編』

『宇宙編』は第4部で、『ヤマト編』と『鳳凰編』の間に、『生命編』は第10部なので、『乱世編』と『異形編』に挟まれている作品だ。
作品発表順に読みたいこの身からすれば、どうにも少々意地悪な編集である。例え作品間の関連性が殆ど無く、作風もそれぞれで全く異なるにしても、作者の何らかの意図があるかもしれないし、読み側の受け取り方にも変化が生じることもあるのでないかと思うからだ。
なので、初見時には気が付かず巻数順のそのままで読んでしまったのだが、再読の今回は発表順に読んだ。つまり、『宇宙編』を『ヤマト編』の後に読んで、『生命編』は『乱世編』を読むまで持ち越した訳だ。

『宇宙編』は、西暦2577年、ペテルギウス第3惑星ザルツから地球までの五百光年の旅路についていたロケットが、宇宙塵に衝突して故障したところから始まる。
事故の衝撃で人口冬眠から目覚めた搭乗員の四名。亜光速船でも地球までは622年間もかかる為、搭乗員の五人は交代で一人が一年間起きていて、他の四人は眠る規則なのであった。
四人がブリッジで見たものは、手足や体を椅子に縛り付け、ミイラの様に干からびて死んでいる牧村の姿だった。
孤独からのノイローゼによる自殺。一同はそう判断したが、隊長の城之内は「ぼくはころされる」という牧村のダイイング・メッセージを見つけた。
事故によってロケットは完全に機能を失っていた。この船に乗っていることは死を待つだけ。四人は一人乗りの救命ボートで各自脱出した。
無線での語り合いで、生前の牧村に関する不思議な出来事が明らかになっていく。そして死んだ筈の牧村のボートが皆の跡を追ってきた。

なかなかミステリアスな展開を見せる本作。宇宙を漂う四人の会話の見せ方が実験的なコマ割りで面白い。
さて、本作のテーマはなんだろう。さしずめ「罪と罰」といったところか。
牧村の罪と、その代償に火の鳥が与えた永遠に続く罰。
また、火の鳥シリーズでは必ず物語に関わる猿田という人物。本作では火の鳥は彼にも罰を与えるのである。それは、何世代にも及ぶ終わり無き罰なのだ。

『生命編』は第10部。終わり無き戦乱の世を荒々しく描いた前作『乱世編』に対して、本作は2155年の未来が舞台だ。
クローン動物をターゲットにした狩猟。それをテレビショーとして放送していたプロデューサーの青居は、飽きられ始めた番組の視聴率回復の為に、クローン人間を用いた人間狩りを企画する。
番組スポンサーのクローン食品会社の社長と共に、世界で唯一のクローン研究所があるというアンデス山中を訪れた青居だったが、研究所からは人間のクローンなどは不要だと一蹴されてしまう。
研究員の一人で、かつて日本からこの地へ移ってきていた猿田は、クローン人間の技術は人里離れた山に住む”鳥”と呼ばれる人物から与えられたものだと打ち明ける。
”鳥”なら人間のクローンも作れるに違いない。そう言う猿田と共に青居は”鳥”に会いに行った。
それは鳥の仮面を被った女?
だが、仮面の下は本当に鳥の顔をしていた。そして鳥はテレパシーで青居に話しかけてきた。
本作に於いては火の鳥は登場しない。その代わりとして鳥女が不可思議な役割を受け持つ。
鳥女は何十人もの青居のクローンを作った。
そしてスタートした番組で、初回にターゲットにされてしまった二人のうちの一人は、本物の青居だった。
それは、生命を軽んじた青居に与えられた罰なのだ。
生命の尊厳を強く訴える本作は、バッドエンドであり、ハッピーエンドでもある。

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火の鳥 宇宙・生命編
作者:手塚治虫
発売日:1992年12月10日
メディア:文庫本