タイトルだけで選んで手にした本書であったが、その内容は予測していたものとはちょっと違っていた。
というのが、著者の職種がかなり特殊で、コンビニチェーンに置くカップ飲料の企画、製造を行なう会社の社長さんであり、奇抜なアイデア商品、コラボ商品を次々と作ることが主業務だからだ。
私としては、どう仕事というものを「面白く」するかといったマインドセット的なものを予想していた訳であったが、180度異なるとまでは言わないまでも、どちらかと言えば「面白い」ものをどんどん作っていこうという内容なものだから、そこには自ずと乖離が生じてくるのであった。
とは言っても、期待した様なものではなかったとしても、それはそれでレアケースなお仕事や著者の生き方、考え方を知ることに学びはあった。
多くの人々が直感的に「面白い」と思うことは、その人の意識の中で「顕在化されていないこと」なのではないか。
「見たこともない新商品」「読んだことのないストーリー」「いままでに会ったことのないような人」といった、情報として新鮮なものに出会ったときに「面白い」と感じる。世の中にありそうでなかったものに出会ったときに、相手は「面白い」と感じてくれるのではないか。
そう定義する著者は、一方で身勝手な主観による面白さだけを求めてはいけないと注意を促す。
「その商品は、自分たちのお客様のための商品か?」
「面白い」という概念は、いつも「相手を喜ばせたい」とい意識で作られるべきなのだ。
また、「面白い」仕事とは、これまでに実現されていないから「面白い」と感じるものなのだが、実現されていないのには理由がある。コストの問題、設備の問題、人手の問題、人材の問題。アイデアが浮かんだは良いものの、様々な問題が立ちはだかったために実現できないと思わせられる時があるが、それらの問題をクリアして実現させる「実行力」が、「面白い」仕事のためには必要なのだと言う。
具体的に、これまで作ってきた商品の開発事例が続々と紹介されている。
「常識に縛られず、まずやってみる」
「シンプルに考える」
「できることから小さくはじめる」
「中途半端な商品を作らない」「果敢に挑戦する」
などなど、それぞれの実例に於ける突破口が披露されていて面白い。
その中には失敗例も含まれているが、それさえも糧にして困難を乗り越えてヒット商品を世の中に生んできた著者の知恵や工夫、失敗を恐れぬ行動力は一見に値する。
これからは「主体的に成長できる人」と、「受け身のまま衰退していく人」の二極化がますます進むのではないかと著者は予想する。それはつまり、「面白い」仕事をして人生そのものを面白くできる人と、それができない人の二極化とも言っている。
主体的に成長するにはどうするべきか?
サラリーマン時代を振り返っての著者の考えはこうだ。
「成功とは、周りの人から認められることであり、そのためには積極的に行動し、周囲にアピールすることが大切なのだと思う。まずは、周りの人に積極的に関わりましょう」
とは言え、本書の中でも書かれている著者の生い立ちやこれまでの生き方によれば、その活動によって社内で孤立し、逆に社外からは信頼を得て、結果的に独立を選んだのであるから、それ相応の独歩の覚悟や気概が無ければ安易にお薦めできるやり方ではないかもしれない。
その辺りも含めて一読を乞う。
面白くなければ仕事じゃない
作者: 熊谷 聡
発売日:2023年9月1日
メディア:単行本