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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】かつて逃れたはずの地球。郷愁は募り、苦難の旅を経てでも人々はそこに戻ろうとする。『火の鳥 望郷編』

第8部『望郷編』は、STUDIO4℃によって『火の鳥 エデンの宙(そら)』としてアニメ化され、2023年9月にディズニープラスが世界独占配信し、且つ、同年11月には『火の鳥 エデンの花』というタイトルで映画も公開された。タイトルが異なるのは、ラストが違う作りになっている所為らしい。
私は、その映画を2023年11月9日に観にいった。
なんというか、STUDIO4℃っぽいなぁという印象で、呑気な物語を観せられている気にさせられた。
正直に言うと、まどろっこしさや盛り上がりの無さしか感じられなかったのだが、あの手塚作品のテンポの早さはあんまり現代的ではないのだろうな。でも、少しは手塚治虫風味も欲しかった。
内容も大胆な改変が為されているが、原作通りって訳にもいかないのは分かる。何故なら、原作では冒頭でいきなり近親相姦のお話になるからだ。
その理由は、極限状態に於いて子孫を残す為であり、『黎明編』でも登場人物が同様の選択肢を採ったりしているのである。
ま、それはともかくとしてもだ。この映画の最大の難点は、火の鳥の存在意義が全く無い様に思えるところだ。原作では、火の鳥は主人公たちの為に幾つかの操作を施しているのである。
だが、映画の話はこれくらいにしておいて、原作についてもう少々語ろう。

地球を離れ、エデン17という無人の小さな惑星に移り住んだジョージとロミという一夫婦がいた。子供を身ごもった時、ジョージは事故で死んだ。産まれた男の子をカインと名付けたロミは、子孫を残す為に20年間のコールド・スリープで眠りについた。
ロミとカインとの間に何人かの子供が産まれた。しかし、それらはすべて男の子であった。
地震で怪我をしたカインは、ロミにもう一度眠りについて欲しいと願う。
二世代に亘る近親相姦。しかしそれでも産まれてくる子供は男ばかりであった。
火の鳥はどの様な物にでも形を変えられる不定形生物ムーピーを一体だけエデン17に持ち込んだ。そして人間とムーピーの混血児が産まれた。
三度眠りから覚めたロミは、新人類たちの街を目にする。
エデンの女王になったロミは、次第に地球へ帰りたいと想いを募らせ、エデン人の少年コムと共に、かつてムーピーをこの星へと運んできた岩で作られた不思議な宇宙船で地球へと向かうのであった。

本作には、『未来編』のムーピー以外にも、『宇宙編』の牧村や『復活編』のチヒロ、それからブラックジャック風の男も登場する。
本作のテーマはなんだろう。
懸命に命を繋ぐ人々の姿か。
人口増加によって宇宙を飛び出した人々の望郷の念か。
その念の対象である地球の荒廃した醜さか。
悪の概念に取り憑かれ、平和であったエデン人たちが自ら滅びの道を選ぶことの愚かさか。
火の鳥は言った。
「愛に生き、試練に耐えた人々がいた。ロミという名の女のことを私は永遠に忘れないでしょう」

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火の鳥 望郷編
作者:手塚治虫
発売日:1992年12月10日
メディア:文庫本