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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】人間とロボットの境界を曖昧とさせる長篇と、奇妙な短篇の取り合わせ。『火の鳥 復活・羽衣編』

第6部は西暦2482年の未来を描く『復活編』。
エア・カーから一人の少年が墜落死した。内臓は破裂、骨は砕け、もちろん即死だった。しかし物語はここから始まる。
少年の名はレオナ。彼が目を覚ました時、視界は完全に異様なものになっていた。縞模様だけの世界。物の形もはっきりとしない。そして化け物としか思えない土くれで出来た様な生き物。
ここは地球じゃないのか?
だが、レオナが目覚めた場所は病院の再生ドック。土くれたちは人間で、彼を手術した医者だと言う。
再手術によって、景色は元通りに見える様にはなったが、人間や動物は無機質な醜いガラクタにしか見えない。
どうやら小脳全部と大脳の大半を人工頭脳に交換、という前例のない処置の結果らしい。具体的な原因は不明で手の施しようがない。
或る日、レオナはガラクタ人間たちの中に、ただ一人美しい女性を見付けた。追いかけて声を掛けたレオナに対し、彼女はチヒロ61298号と名乗った。事務用のロボット。しかしレオナには人間としか思えない。
レオナはチヒロを求め続けた。一年後にはチヒロにも感情が芽ばえ始め、二人は愛し合っていることを互いに自覚した。
「ぼくらの元素は愛の力で溶けて混じり合う」

レオナは、自分は事故死ではない。誰かに殺されたと考えだした。
誰が? 何故?
謎を追う内にフェニックスの伝説が浮かび上がって来る。そしてレオナは火の鳥に出会う。
「僕はもう普通の人間じゃないんだ。人工的に作られた作り物の生命なんだ。こんな復活ならぼくはもうごめんだっ!!」
そうレオナは火の鳥に言い放った。

一方、西暦3030年では、生産労働作業や育児などをアシストするロビタ型ロボットに異常が発生する。3万体以上ものロビタが高熱炉に投身自殺をしたのだ。そして一体だけ残ったロビタはこう言った。
「ワタシハ人間デス」
本作では、生き物と無機物の存在や、互いの垣根が曖昧になっていく。
人間でもロボットでもないレオナと、自分を人間だと自覚し始めたロビタ。二つの生命はどう生きるのか。

もう一作の『羽衣編』は第7部。シリーズ唯一の読み切り短篇である。
本作では、 客席から舞台を見る様な構図で固定されている。手塚作品ではたまに見る手法ではあるものの、全編を通じているのは実験的に思える。
時代は『乱世編』より70〜80年ほど前の頃。
物語は、いわゆる羽衣伝説を元にしながら、キッチリSF要素を盛り込んでいる。
実は、雑誌に掲載した当初は、核戦争の犠牲者が主人公で、放射線障害の表現もあり、長らく単行本化はされていなかったが、1980年に科白を全面的に改めたという経緯がある。そう知った上で読み返してみると、また感じるものも変わるだろう。

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火の鳥 復活・羽衣編
作者:手塚治虫
発売日:1992年12月10日
メディア:文庫本