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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】「漫画というものの本質を、ズバリひと言でいうと、なんでしょう」「風刺ですよ」『マンガの描き方―似顔絵から長編まで』

本誌は1977年初出のものを文庫化したもので、何故今更読んでみたのかと言うと、手塚治虫自体がどういう具合に創作しているのかが知れるであろうと思ったからだ。
漫画の神様の作品作りとは一体どんなものだろうか? そういう次第。
まえがきで、「この本は、いわゆる漫画家の卵とか、漫画グループとか、マニアが見ると、きっと物足りなくてぜんぜんつまらないだろう」と言って退ける。
手塚治虫の真意とはこうだ。
「この本は手ほどきである。この本一冊で、何百人か、何千人かの、今まで描いたこともなかった人たちが漫画をちょっと描いてみる。それで目的が達せられる本である」

そこで本文は、まず落書きから始めよう、まったく絵が描けなくったっていいと説くところから始まる訳だが、即座に、漫画には不満を含んだ欲求を描くものだとか言い出すところが面白い。
そしてその後に続くのが、ものをそっくり書き移すなんて作業は、漫画家にとっても、あんまりほめられたものじゃない。自分の頭の中に浮かんだイメージを描くのだ。その為に色々なものをじっと観察し、覚えこんでしまうという練習をしようとかなり高度なことを促すのである。
実際、手塚治虫はほとんど資料を紐解くことなく、あらゆるものを自在に絵に落とし込んでいたという話をどこかで読んだ覚えがある。やはり神様なのだ。

ということで、大きく分けて、「絵をつくる」「アイデアをつくる」「漫画をつくる」と展開する本書だが、書籍名から連想すると、アレレ? となるかもしれないほど、テキスト主体の本である。
道具のあれこれとか、作例や表情集とかといった作画のテクニックがどうとか、そういう類のことも書かれてはいるが、漫画家になる覚悟とか、アイデアを生む苦しさについてなど、厳しいメッセージも語られている。
なんと言おうか、教科書の様な、手塚治虫指南書なのである。

マンガの描き方―似顔絵から長編まで
作者: 手塚治虫
発売日:1996年7月20日
メディア:文庫本