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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】この夢もない欲望と金だけの世の中には他愛ないドラキュラなんて必要じゃないんだ! 『I.L(アイエル)』

その時、伊万里大作は映画監督の引退を考えていた。
かつて一流の映画監督として鳴らしていた彼だったが、もはや時代が変わってしまったことを嘆いていたのだ。
今の映画ファンは現実的で、やたらに理屈をつけたがる。おとぎ話や伝説や怪奇や夢物語より、三億円使った方がずっと楽しいんだ。
あの、人間が月に到着した日から・・・・・・。

1969年から1970年にビッグコミックで連載された手塚治虫の大人向け漫画である。
タイトルのI.L(アイエル)は、変幻自在に姿形を化けられる謎の美女の名前だ。
街をふらついていた大作は、呼び止められた占い師に言われるまま或る洋館を訪れる。そこでは、謎の伯爵と不気味な人たちが、大作を待ち構えていた。
「あなたを見込んで、ひとつチャンスを差し上げます」
伯爵は大作に、現実の世界の監督を、つまり、この世を演出してもらいたいと依頼する。
「幻想と夢の世界であった月すらも、征服によって現実に引き戻らされてしまった。日一日と味も潤いも無くなっていくこの世に抵抗して、理屈で割り切れない事件をうんとでっちあげて欲しい。あなたの思い付くままにな」
そして、資金と洋館、それと棺桶を大作に譲り渡した。棺桶の中にはアイエルが横たわっていた。伯爵は、彼女は大作に仕える女優であり、大作には絶対服従すると言った。
大作とアイエルの元には様々な依頼事が持ち込まれる様になった。
棺に入ればなんにでも姿を変えられるアイエルは、その不思議な能力を駆使して事件を解決に導く。だが、果たして彼女の正体は?
大作は伯爵の望みに応えることは出来るのか?
人の世の背徳と罪を描いた全十三話のアダルトファンタジー

I.L(アイエル)
作者: 手塚治虫
発売日:1977年1月15日
メディア:単行本