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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】獣人たちの革命は成るか?『バンパイヤ』

本作のことは、狼男モノとしてその存在は知っていたが、内容まではよく知らなかった。
主人公のバンパイヤ トッペイ役を水谷豊が担当してテレビドラマ化もされ、バンパイヤの変身シーンや変身後の姿はアニメーションで描いたものを合成という変わった作り方だったが、このドラマを、たま〜に「懐かしのあの番組」的な特集とかで断片を観た程度の認知であったのだ。
それを、古本屋で全3巻セットを見掛け、中途半端にしか知っていない状況を是正しておこうじゃないかと買い求めた。

物語冒頭でトッペイは手塚治虫を訪ねて「マンガ映画が好きなんです」と言い虫プロに就職する。自然と手塚治虫当人が重要な登場人物になり、テレビドラマにも本人が主演したり、虫プロも撮影されたりしているのも特徴的である。
その手塚治虫は、まえがきに於いて、「本作の骨ぐみはシェイクスピアマクベスです。わたしはマクベスに、バイタリティにあふれた現代悪の権化を見る気がします」と述べている。
その象徴が、登場人物の一人である間久部緑郎(まくべろくろう)、アダ名はロック。
所謂スターシステムにより、ロックはそれ以前から手塚漫画には登場していたが、屈折したニヒルなキャラクターはそれほど人気を得ていなかったのだが、物語を引っ張る事実上の主演となった本作により、強烈なカリスマ性を発揮して大ブレイクした。アンチヒーローとしてその存在を確立させ、二枚目から悪役まで複雑で幅広い活動を重ねていくのである。

その才を活かして富を得ようと悪事を働くロック。人目を憚り目立たぬ様に生きながら、ひっそりと連帯を築いてきたバンパイヤ族は、革命を実現するに際してロックと手を組む。
ロックの目的はこの世の王者の座を得ること。では、バンパイヤ族の狙いとは何か? そして、ロックの兇状を嫌い、バンパイヤ族とも反目し、単身行動するトッペイの運命は如何に?

本作の第1部は『週刊少年サンデー』にて1966年から1967年に連載された。
第2部はテレビドラマ放映開始時に『少年ブック』にて1968年から1969年にかけて連載されたが、掲載誌の休刊により未完に終わってしまった。
テレビドラマは、1968年10月3日から1969年3月29日まで全26話が放送されたのであった。

バンパイヤ
作者: 手塚治虫
発売日:1968年5月10日
メディア:単行本