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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】おとうさん。人類のためにばかり奉仕していたら、しまいにはベトナム和平にまで手を出さなきゃならなくなるよ。『決定版 ゲゲゲの鬼太郎2 吸血鬼エリート・妖怪獣』

水木しげる 生誕100周年を受けて、中公文庫から毎月1冊ずつ刊行中の全集の第2巻。
この全集は、1965年から1987年にかけて『週刊少年マガジン』『別冊少年マガジン』『月刊少年マガジン』、そして『週刊少年サンデー』で連載されたものを、原則として掲載誌別の発表順に一挙収録するシリーズとして全10巻を予定しているらしい。

この全集により改めて鬼太郎を読み返すに際し、どうせならばと、前身である『墓場鬼太郎(貸本版)』にまで遡って読んでみてみたのであるが、思っていたよりディープで毒気の強い作風にすっかり当てられたらしく、そのまま続けて読んだ少年誌版鬼太郎には、ちゃっかり正義の主人公に収まってしまっていて、ややあっさりと化した画風とも相まって、却って違和感を覚えてしまう羽目となった。
また、第1巻、第2巻では、貸本版のリメイク作品による長編作も割合に多いことに気付かされた。尚、本書掲載作でリメイクされている「吸血鬼エリート」では、貸本時代の様に普通にタバコを吸う鬼太郎がちょこっと描かれていて、原典を知る身としてはムズムズとさせられるが、唐突にこんなことを鬼太郎にさせてしまって、少年少女に対して大丈夫なのか? 水木先生、少年マガジンと、余計な心配をするのであった。ま、大きなお世話か。

にしても、やはり水木作品のすっとぼけたユーモアのある作風は中毒性が強い。この独特さは真似しようとしてもなかなか出来ることではない。まさにオンリーワンだ。
さて、本巻で猫娘も登場、その後お馴染みとなる妖怪たちも出揃った感ありだ。長年に亘る大人気シリーズ作はまだまだ序盤。ここからどう進化、変遷して面白さを増していくのか。このまま時系列に読み進めるのが嬉しい。

決定版 ゲゲゲの鬼太郎2 吸血鬼エリート・妖怪獣
作者: 水木しげる
発売日:2023年2月25日
メディア:文庫本