言わずと知れた水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』は、もう何度もアニメ化され、すっかり世の中的には「鬼太郎 = いい感じのヤツ」になっているが、原作では妙に飄々とした案外とすっとぼけたあんちゃんだ。
1954年の紙芝居から始まり、貸本漫画に居所を変え、『幽霊一家』、続いて『墓場鬼太郎』というタイトルで連載開始された頃に遡ってみての鬼太郎は、すっとぼけたあんちゃんどころか、ううん、ちょっとキモい、あんまりお友達にはなりたくない様なタイプで、人間の味方でもない。いや、むしろ関わった人々に怪奇をもたらす不穏な小僧であった。
1965年には『週刊少年マガジン』で『墓場の鬼太郎』としてメジャー化し、内容も妖怪退治モノに変わった。さらに、テレビアニメ化に際してタイトルから不吉な『墓場』を差し替えて『ゲゲゲの鬼太郎』となった。そして、以後ヒーロー化していくのだ。
本書は、貸本漫画の復刻版だ。怪奇物語らしく、その後の作品とは画風も異なる。人物画も後に見られる様なおとぼけキャラ達ではなく、かなりリアルタッチだ。カラーページを見ると、なんとなく昔のアメコミ風にも見える。
で、鬼太郎の誕生編がまず非道い。
最後の生き残りだった幽霊族の夫婦は、不治の病であえなく死んでしまう。妻は子を宿していたが、その子供は自ら母親の腹を破って、墓の下から土を掘り起こして生まれてきた。それが鬼太郎だ。
目玉おやじとして知られている鬼太郎の父親はどうしたのか。
実は元々は大男であったおやじだが、生後間もない一人息子を案じるあまり、ドロドロに腐った死体から左の目玉だけがボトリと落ちると、そいつに手足が生えて蘇ったのがあの姿なのだった。
鬼太郎は生まれつき隻眼、つまり左目が無く、目玉おやじは丁度良いとばかりに鬼太郎の左目に入って隠れるという手段を度々取ったが、いつしかそれは行なわなくなった。多分気色悪いので。
鬼太郎の片目の姿もあんまり具合が宜しくなかろうと、やがて鬼太郎は髪を伸ばしだし、目出たくご存じのあのスタイルになったのだ。
尚、本作は2008年1月11日から3月21日までで全11話がテレビアニメ化された。なんと、『ゲゲゲの鬼太郎』第5シリーズの放送中にである。
う〜ん。悪趣味だ(笑)。
『墓場鬼太郎 貸本まんが復刻版』
作者: 水木しげる
発売日:2006年8月25日
メディア:文庫本