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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評:】劉慈欣『白亜紀往事』 - 恐竜と蟻が紡ぐ共存の物語

皆さんこんにちは。
劉慈欣は、彼の代表作「三体」により世界中のSFファンから高い評価を受けている中国の作家です。しかし、その長大な三部作(続編もあります)に取り組むことに躊躇する読者も少なくありません。そんな読者にぜひお勧めしたいのが、一冊で完結する「白亜紀往事」です。本作は、遠い白亜紀の時代を舞台に、恐竜と蟻という異なる種族が共存する奇想天外な世界を描き出しています。

この物語の始まりは、恐竜の歯に挟まったトカゲ肉を取ってあげたことから始まる、不思議な友情です。これをきっかけに、恐竜と蟻はそれぞれの長所を活かして、力仕事と細かい作業を分担します。そして、コミュニケーションの手段、医学、工業など、様々な面で文明を発展させていきます。しかし、この平和な共存関係に暗雲が立ち込める出来事が起こります。

この物語は劉慈欣の独特な文体とストーリーテリングの技術に感心させられます。彼は科学的な概念と歴史的な事実を織り交ぜながら、読者を完全に異なる世界へと引き込みます。恐竜と蟻の文明が進化する過程は、ただのファンタジーではなく、慎重に構築された宇宙の中での自然な発展として描かれています。これにより、物語は現実味を帯び、読者はこの不思議な共存が実際に存在したかのように感じることができます。
またこの作品では、知性を持つ生命体がどのようにして互いに協力し、共生することができるのか、という問いが掘り下げられています。そして、この問いへの答えは、抑止力としての核兵器、エネルギー問題など、人類自身が直面している多くの課題に対する洞察を提供してくれます。今までSFに興味がなかった人にもおすすめの1冊です。