自粛派、ノーガード派。コロナ禍において様々な派閥が議論する。『ペスト』の世界においても様々な思想をもった人物が登場する。ペストと戦う者、脱出を試みる者、混乱に乗じて利益を得る者など。
「事実は小説よりも奇なり」とは言うが、淡々と事実を述べるのではなく登場人物を通してそれぞれの思想を交錯させる。ロックダウンした際、どのような行動が正しいのか?
利益を得る者。密売人・コタールは過去に罪を犯したが、ペストの混乱に乗じて安穏な生活を手にする。脱出の手助けを始めて、さらに利益を増やす。現代に置き換えると、マスクの買い占め・転売といったところだろうか。
原作『ペスト』が出版されたのは戦後間もない、1947年。2020年、世界中でベストセラーとなった。日本では3.11のときも売れた。
本書は「予言書」とも言われる。どの登場人物に共感するか?原作に挫折した人もそのあらすじを確認して欲しい。