とある町の名家で育った千舟は、人々が祈りにやって来るクスノキを、長きに渡り、守ってきた。とある事情により、その番人を突然、自身の甥、玲人に託すことになる。
千舟と玲人は、伯母と甥の関係ではあるが、異母妹の息子でもある玲人とは、様々な事情があり、互いに疎遠だった。しかし、盗みを働き警察のやっかいになったやんちゃな若者玲人は、刑務所を出た矢先、クスノキの番人を引き受けることになる。
そのクスノキに訪れる人はいろいろで、その木に祈れば願いが叶うと言われている。例えば、息子を精神病で亡くした、母の苦悩。息子が頻繁に奏でていたピアノを、兄弟が、クスノキの祈りにより再現し、母に聴かせたのは、圧巻のシーンだった。
また、千舟と玲人の、伯母と甥の関係について、実は、千舟は、自らの意志をクスノキに祈っており、それを玲人が受念し、千舟の今の心根を知ってしまった。それは千舟自身の人生の最期の迎え方についてだが、それについて、玲人は、千舟にある言葉を伝える。
千舟は、その言葉を聞き、心底、玲人に敬意を払い、瞳を充血させた。玲人の母、異母妹にしてきた自分の行動を、心から悔やみ、後悔し、こんな息子を持てたき玲人の母を妬むくらい、千舟の心に響かせた。
東野圭吾作品は、毎回泣く、ジーンとくる、わたしの東野圭吾作品は、毎回そうだ。人の優しさに触れる。