『君の膵臓をたべたい』でおなじみの住野よるの作品。麦本三歩は天然で忘れっぽく、怒られてはへこみ、褒められると調子にのる。彼氏と別れて悲しんだと思えば、独り身の身軽さを楽しんだりもする。特別なことは何もない、平凡で愛おしい三歩の日常に、ついホッコリしてしまう。
三歩自身、自分は天然だと認めていない。だが、その天然を可愛いと思ってくれる人がいて、三歩だから許されてきたってことが多いのは確かだ。天然がゆえに得をする。そんな三歩に先輩が、天然を演じるのとはまた違うけど、自分はそういう性なんだと受け止めて生きなよ、ってアドバイスをする。まさに言い得て妙で、個人的に1番グッと来たポイントだ。
この物語は、三歩本人ではなく、語り手が三歩の行動を説明しながら進んでいく。そのテンポが癖になり、つい自分の私生活でもどこかに語り手がいるような気さえする。やたらと独り言が増えたのも、これを読み始めてからだ。
ネットの感想では、実際に三歩のキャラのような子がいたらイラつくかも、って意見が多かった。あざといと思うんだろうな。まあ先輩の言うとおりで、天然な人はそれも含めて受け止めなければならないのだろう。
僕は三歩が大好きになったので、麦本三歩関連の他のシリーズも読んでみようと思う。