本書は2004年から不定期に放送されているテレビ番組「逃走中」をもとに小説化された。逃走中とは、テーマパーク、ショッピングセンター、街中などの限られたエリアが舞台となる壮大な鬼ごっこだ。その鬼となるハンターは、全員真っ黒なスーツを身に纏い、サングラスをかけ表情ひとつ変えずに素早い動きで挑戦者の行く手を阻む。挑戦者には、プロスポーツ選手や現役のオリンピック選手がいても涼しい顔で後も簡単に捕らえてしまう。ターゲットになってしまったらそこから逃げ切ることはほぼ不可能なのだ。
ゲーム中には様々なミッションが出されクリアできないと、何10体ものハンターがエリア内に放出され観ているだけでもハラハラが止まらない。挑戦者は時間内に複数のハンターから逃げきることができれば賞金を獲得できる。評者はなぜだがこの「逃走中」に無性に取り憑かれいつも夢中になって観てしまう。
「逃走中」はゲームバラエティではあるのだが、そこには挑戦者たちの様々な人間模様が見え隠れする。自分の身を盾にしてでも仲間を守る者、仲間を裏切っても自分の利益を得ようとする者、チームプレイで助け合うものなど、平常心では起こり得ないことでも切羽詰まると人は本心からの行動をとる。刻々と時間が迫り追手が近づいてくる中、自分は何を軸に生きていくのか?一秒一秒を必死に生き抜く挑戦者たち。それはまるで一人一人の人生を観ているかのようだ。
すでに映像で観ているものを改めて文字で読むとどのような感情を抱くのかと気になったが、小説化されたストーリーも臨場感がありなかなかいいものだ。