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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】死は恐れるものではない『優しい死神の飼い方』

 

遅ればせながら人気の死神シリーズ第一弾を読んでみた。どこかファンタジーであり、どこか現実的でもあった。医師が紡ぐ生と死のボーダー。医師だからこそ表現できる狭間の世界である。後悔があるから人は死を恐れるんじゃないだろうか。

死神が犬の姿を借りてホスピスに降臨したことから物語は始まる。『吾輩は猫である』っぽく始まるところがまたおもしろい。そして、浮世離れしていて世間慣れしていない死神の純粋な感情に気が付けば引き込まれていく。死神の性格を一言で表現するのであれば、映画『ジョー・ブラックをよろしく』の死神を思い出させるようなピュアさである。死神は私たちが思い描くおどろおどろしいイメージと常にかけ離れているようだ。純粋無垢で常に一心不乱である。

ホスピスと言えば死と向き合う場所と言っても過言ではない。
この小説では世を忍ぶ仮の姿の犬のレオは死が近い方の気持ちに寄り添い過去にさかのぼり、死んだ後に地縛霊にならないよう奮闘するのである。さすが医師だと思った。ホスピスにおける支援とは、実際に過去に遡れなくても、その人に寄り添い、その人のストーリーを聞き、その人自身が過去を受け止めることである。
後悔があると生きることに執着を持ち、死を恐れていく。そのためレオはその後悔を残さないために存在しているのである。後悔を乗り越えるのは簡単ではないが案外難しいことではないのかもしれない。読み終わった後に多幸感を与えてくれるそんな小説であった。