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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】こんな世界観を持っていたなんて。『累々』

 

 元SKE48松井玲奈さんが書いたこの小説は、5つの短編で構成されている。かと思いきや、最後はすべての伏線が回収され、一つの物語に大変身。久しぶりにあっと言わされてしまった。

 マリッジブルーのコーヒーショップ店員、彼氏の友達とセフレになってしまう女性、パパ活をする女子、先輩に恋する女子大学生。短編では、それぞれの主人公にまつわる物語が描かれている。一人ひとりの女性に見え隠れするのは、誰かに認められたいという思い。その思いに振り回され、時に傷つき、上手く生きていけない女性にどこかもどかしさを覚えてしまう。

 しかし、それぞれの短編に出てくる女性は同一人物だった。4つ目の短編あたりから、まさか?とは思いつつ読み進めていくと、最後の章でビタッとすべてが一致し、気持ちよく伏線が回収されていった。それぞれの主人公に、もどかしさと少しの同情を感じていたが、一気に冷め、主人公に闇を感じた瞬間だった。

 本作では、松井玲奈さんの世界観を存分に味わえる。あるシーンで、「女の子に幻想を抱いちゃだめですよ。」というセリフが出てくる。アイドル時代の松井玲奈さんは、いつもニコニコしてて、ノリがよく明るい。そんなイメージを勝手に持っていたが、本作で松井玲奈さんの、また違う少しダークな魅力に気づかされた。

 女の子に幻想を抱いちゃだめですよ、か。この言葉は僕の心に小さな傷を残している。