HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】人の行為はバグってる?『バグトリデザイン』

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バグとは『コンピュータのプログラムにひそむ誤り』という意味になります。

皆さんは初めて東京駅から渋谷に行ったとき、迷わずに山手線に乗れたでしょうか?エレベーターの開閉ボタンを間違えたことは無いでしょうか? 何かしら時間がかかったり、面倒だったり、迷って腹が立ったりした経験があると思います。人の行為には目的がありますが、その過程に滞りがあるとき人はイライラしてしまいます。

本書はこういった行為が阻まれる事象を「バグ」と捉え、本書のタイトル「バグトリデザイン」は、人の行為を観察したり想像体験したりしてとのバグを見つけ出し解消するデザインを考えるということを意味しています。ユーザーが目的に到達するための行為を滞りなく、滑らかに進行できるデザインを「良いデザイン」と定義し、それを目指します。

読者の中で商品開発や企画などに携わっている方がいればおすすめです。新しい視点や発想が本書から得られると思います。考えられたサービスはユーザーの動きや使い方まで想像できていますか?バグを見つけて改善していきましょう! 

 

バグトリデザイン 事例で学ぶ「行為のデザイン」思考
 

 

【書評】私はこの病を宝だと思っている『不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術』

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 著者の山口恵理香氏は14歳の時にいじめが原因で適応障害と診断され引きこもり生活になります。大学卒業後も就職はしますが3ヶ月で退職してしまいます。本書は適応障害を抱えながらWebライターという職と出会いフリーランスとして生きていく著者の物語になります。

 本書のチャプター1では適応障害を抱えた中学から就職までの人生が書かれていますが、現代の様に不登校への理解も浅かったため周りから理解されない辛い時代を過ごします。そして、チャプター2~6までは適応障害を抱えながら生きる著者の仕事術や体調、時間管理術が書かれています。

 適応障害のために辛いことが沢山ありましたが、それでも著者は『私はこの病を宝だと思っている』と言います。文章を書くことはどこか欠けていなければできない仕事であり自分の個性そのものだと表現しています。

 本書は、様々な悩みを抱えている人、またフリーランスのWebライターを理解したい人におすすめします。一歩進むための大きなきっかけになると思います。

 

不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術
 

 

【書評】日大医学部進学まで3浪『熱く生きる』

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2012年の2月、天皇陛下の心臓手術が行われる。
陸下は、『狭心症』心臓に栄養を送る血管である冠動脈3本のうち、2本の血管の狭窄されていた。動脈硬化によって血管が詰まったり狭くなったりすると、心臓の筋肉には必要な栄養や酸素が届かなくなる。
執刀医は冠動脈バイパス手術を行い成功させ、日本中から称賛される。

著者は天野篤先生。
埼玉の進学校では麻雀と深夜放送に夢中になり学校は寝るだけ。大学入試の近づいてもパチンコに通い腕前はプロ級になる。日大の医学部に行くまでに3浪。

それはあくまでも『情熱を手に入れるまでの物語』で序章。情熱を手にいれてからの天野先生は医師道を突っ走る。偏差値も出身校も関係なく手術の腕を磨き天皇陛下の執刀医を任される。

名声に傷がつかないうちに、身を引く方が良い。
そう助言されても著者は断る。
武士道の様な、心臓外科医としての医師道を求めてまだ走り続ける。
タイトル通りです。一読を。 

 

熱く生きる

熱く生きる

  • 作者:天野 篤
  • 発売日: 2014/02/05
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】犯人視点のスピンオフ作品!『-金田一少年の事件簿外伝-犯人たちの事件簿』

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金田一少年の事件簿』って人死に過ぎじゃない?そんな軽いツッコミをしてはいけない。犯人たちは皆それぞれお金や時間をかけて、最後はフィジカルに動き回っているのだ!

時には殺すはずじゃない人を殺してしまうこともある。けれども、犯人たちは時間が無い中、必死にトリックを考えるのである。

また犯人たちには、自分でやったことに驚き、戸惑い、恐怖する演技力も欠かせない。芸人がドッキリを予告されてから、ドッキリを仕掛けられるようなものと「オペラ座館殺人事件」の犯人・有森裕二は説明する。

制作舞台裏を描いた、後書きも面白い!というのも原作・原案、作画は既に存在しているので、著者の船津紳平さんは「ほぼ模写」して、犯人視点を付け加えるだけとコミカルに解説する。

犯人たちの一世一代の大勝負を笑ってはいけないが、思わず笑ってしまう。

 

 

 

【書評】しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事を見れば、道はつねに幾通りもある。『竜馬がゆく一』 

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坂本竜馬は、不思議な人物だった。
決して欲というものがなく、周りが勤王だ、攘夷だ、と熱に浮かされ騒いでいる中で、一人冷静に自分の考えを持ち、かといって自分の中にはしっかりと熱く燃えるものをもっている。
周りに流されなければ生きづらい世の中でも、生涯を通して決して世間の流れに身をまかせることはなかった。

竜馬は死への恐怖心が驚くほどになかった。
この時代の武士たちは、いかに美しく死ぬかということを考えていた。
いざという時の切腹の仕方まで考えているということが普通だったが、竜馬にはそういうところがなかった。
自分の生への関心が全くと言っていいほどなく、常に自分の好きなこと、目の前のことのみを考えて生きていた。

評者の心に残った文章がある。

竜馬は、議論しない。
議論などは、よほど重大なときでないかぎり、
してはならぬ、と自分にいいきかせている。
もし議論に勝ったとせよ。
相手の名誉を奪うだけのことである。
通常、人間は議論に負けても自分の所論や生きかたは変えぬ生き物だし、負けたあと、持つのは、負けた恨みだけである。

竜馬の人間性がよく表れているように思う。
常に私心を捨てて物事を判断できるところが、竜馬に人が集まってくる所以だったのだろう。
そして何よりも、明るく、周りの人を愛せる優しさをもった人だった。
どんなに聞こえの良い言葉を並べても、暗いと人は集まらない。
自分の興味のあることに没頭し、人生を前向きに楽しんでいたところが竜馬の魅力だったように感じる。

ここで、坂本竜馬について少しだけ説明しておく。
坂本竜馬は江戸時代末期の志士。土佐で、下級武士である郷士の家に生まれた。
土佐藩を脱藩した後、志士として活動する。日本最初の商社といわれる亀山社中を結成。薩長同盟を仲介して大政奉還につなげ、近代日本の誕生に決定的な役割を果たすが、明治の新国家を見ることなく暗殺され、その生涯を終える。

時代が混乱するとき、人はやたらと議論したがる。
そして同調圧力がどんどん強くなっていく。
けれど、そんななかでも、坂本竜馬のように、自分の目の前にあるやるべきことをやり遂げられる人もいる。
今だからこそ、読む価値のある本ではないだろうか。

 

竜馬がゆく(一) (文春文庫)

竜馬がゆく(一) (文春文庫)

 

 

【書評】現在というのは、どんな過去にも勝る。『何もかも憂鬱な夜に』

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何かを破壊したい、と思ったことはないだろうか。
誰にでも、ある時期には、どうしようもない破壊衝動のようなものが沸き起こってはこないだろうか。
こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。

ラベリング理論というものがある。
前科のレッテルを貼られた人が、社会で上手く生きていけずに、また犯罪者になる。そういう学説だ。

施設育ちの刑務官である「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚、山井を担当することになる。
彼は、一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定する。
「僕」は山井の中に自分と似た混沌としたものを見つけながら、自殺した友人を助けられなかったことへの無力感、大切な恩師との過去のやりとり、死刑制度に対する葛藤、そして生と死と、真正面から向き合っていく。

本作では、思春期特有の、ドロドロとした感情が鮮明に描かれる。
何もかもどうでもよくて、この世から消えてしまいたい。いっそ駄目になってしまいたい。何か別のものになりたい。解放されたい。
けれど本当はどこかに救いを求めている。助けてくれる大人を探している。
 
物語の中で、雨が多く降っている。
著者は、水というものを、文体に溶け込ませるように書いたそうだ。
水は命を連想させる。透明で、掴みどころがない。

そしてこの物語の様々な部分が、著者の個人的な部分に属しているそう。
著者もまた、混乱の多い子供時代を過ごしたそうだ。

平和な子供時代を送った人間に、最悪な子供時代を送った人間の気持ちをわかれと言っても、それは難しい。
最大限の想像力を働かせ、生活する上では自分とは無関係だと思えるような人の立場になる。
これが、小説を読む醍醐味なのではないだろうか。
自分の好みや狭い了見で、作品を簡単に判断してはいけない。
自分の判断で物語をくくるのではなく、自分の了見を、物語を使って広げる努力をする。
そうすることで、少しずつ自分の枠が広がっていくことを願いながら。

 

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

  • 作者:中村 文則
  • 発売日: 2012/02/17
  • メディア: 文庫
 

 

【ランキング】今週読まれた書評【2020/5/3-9】

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1位

 

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bookrev.horiemon.com

 

 

 2位

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bookrev.horiemon.com

イケズの構造 (新潮文庫)

イケズの構造 (新潮文庫)

 

 

 

 3位

bookrev.horiemon.com

 

 4位

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 5位

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 6位

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7位 

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 8位

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9位 

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 10位

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【書評】"殺人鬼の息子"という呪われた運命を背負った主人公『親愛なる僕へ殺意をこめて』

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童貞でうだつの上がらない大学生の主人公・浦島エイジ。朝起きると、隣にミスキャン候補の美女・雪村京花が寝ていた。

15年前女子大生達が行方不明になって、惨殺死体で発見された事件の犯人"八野衣"真は彼の本当の父親である、とデートの帰りを待ち伏せしていた記者に暴かれてしまう。
時を同じくして、15年前と全く同じ方法で惨殺された遺体が発見された。

これだけでも充分な設定にも関わらず、エイジには"二重人格"というもう一つの秘密がある。身に覚えのない3000万円、血まみれの金属バットが部屋の押し入れから見つかる。

死体や拷問の描写は想像以上の残虐さである。極稀にありそうな感じが恐怖心を騒ぎ立てる。

"子供は親を選べない"に留まらない、早い展開で思わず一気読みしてしまう!

 

 

【書評】名作アラジンはここから生まれた!『千夜一夜物語-まんがで読破-』

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妻の浮気を目撃してしまった王は、女性への不信感から毎晩処女を求めては翌朝には殺してしまう。最期の晩、王に媚を売る者、従順な者、諦める者がいる中、翌朝殺されるシェハラザードは物語を語り始める...。

最初は「せむし男の物語」。夜が明けると、「他にもとっておきのお話を致しますが...」とシェハラザードは言う。王は「その話を聞くまで余はそちは殺しはせぬ」と返事をする。

また別の夜には「この話にはまだ続きがありまして...」と言う。王は「また明晩も話してはくれぬか?」と返事をする。千と一の夜明けを迎えた頃、シェハラザードの持てる話は底をついてしまう。

別称「アラビアン・ナイト」。アラジンは『千夜一夜物語』の「アラジンと魔法のランプ」の物語が基となっている。

もともと中東地域で口伝えで語られていて、原著者不詳。そこがまた神秘的で、驚嘆と教えに満ちた作品である。

 

千夜一夜物語 ―まんがで読破―

千夜一夜物語 ―まんがで読破―

  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: Kindle
 

 

【書評】世の中、金か?それとも愛か?『クリスマス・キャロル-まんがで読破-』

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「大好きな年収200万の男?好きでもない年収1億の男?」「愛は金で買えるか?」お金と愛について、誰しも一度は考えたことがあるかもしれません。

自分ひとりだけが幸せになれることはない。幸福を皆で分かち合ってこそ本当の幸せが訪れる。その本当の幸せの象徴としてクリスマスが描かれます。

主人公は守銭奴スクルージ。或るクリスマスの晩、彼のもとに3人の精霊が訪れます。それぞれの精霊は彼の過去、彼が知る由も無い現在、そして彼の未来の姿を見せることで彼を欲の鎖から救い出そうとします。

格差が広がる産業革命渦中、19世紀のロンドン。イギリスの国民的作家、チャールズ・ディケンズが金と愛、人間の尊厳に挑んだ作品をまんが一冊、30分で読むことが出来ます。

人はいつでも生まれ変わることが出来る。そのためには、自分から相手に心を開き、歩み寄ることから始めなくてはならない。