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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】なによりも怖いのは、恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうこと。『レキシントンの幽霊』

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真夜中のリビングではじまる幽霊たちのパーティ。
穴の中から出てくる緑色の獣。
氷男と結婚した女。
本書では、不思議な世界が、七つの短編で繰り広げられます。

胸がざわざわするような恐怖感を感じるけれど、どこか心地よい世界観。わけがわからないけど、何か深く心に刺さるものがある。そんな不思議な世界に、あなたも迷い込んでみませんか?

評者のお気に入りは、「トニー滝谷」です。
トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった。」という文章から物語は始まります。
孤独な男、トニー滝谷が出会い、恋に落ちたのは、ただただ服を愛する女性だった。彼女はいつも、とても自然にとても優美に服をまとっていた。
トニー滝谷は、彼女との出会いによって、これまで自分の人生がどれほど孤独でどれほど多くのものを失ってきたかということに気付かされた。
けれどその幸せも、長くは続かなかった、、、。

この物語では、ひたすらに孤独感を味わうことができます。
絶望的なはずなのに、なぜか中毒性があります。
そしてこの作品は実は映画化もされていて、イッセー尾形さんの演技がまた素晴らしいのです。

「七番目の男」では、実体のない恐怖について、考えさせられます。
親友を波にさらわれてなくしてしまった男。
それからの彼の人生は目に見えない恐怖との戦いだった。

この私たちの人生で真実怖いのは、恐怖そのものではないのかもしれない。
それは様々なかたちをとって現れ、ときとして私たちの存在を圧倒する。
しかしなによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうこと。
そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲り渡してしまうのかもしれない。

評者は著者の短編集がものすごく好きです。
著者は短編集を書くとき、あちこちに切れ切れに書くのではなく、だいたい本一冊分くらいをまとめて書くんだとか。そうして作品のグループにそれなりの一貫性や繋がりをあたえるそうです。そうすると本書のテーマは「さまざまな形の恐怖」といったところでしょうか。他にも著者の短編集はたくさん出ていて、「東京奇譚集」「女のいない男たち」などが読みやすくておすすめです。

不思議な世界の中に散りばめられた、ものごとの核心をついた言葉たちにドキリとさせられます。真正面から言われるよりも、心に深く染み渡っていくように感じます。何度でも読み返したくなる本です。

 

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)