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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】グロくてカオスな女の世界、とくとご覧あれ!『かわいそうだね?』

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「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」の二編を収録。どちらもこれでもか!というくらいに女の世界を緻密に描く。女性は大いに共感し、心のもやもやを言語化できる喜びを味わい、男性は驚きと恐怖を感じるかもしれない。

表題作の「かわいそうだね?」は、元彼氏の隆大の家に居候する、求職中の元彼女アキヨと、隆大の現恋人である樹理恵の戦いを描く。

設定からしてもうカオスだ。週刊誌連載時から話題を呼んだというのも納得である。最初はなんとかして自分を納得させようと努めていた樹理恵だったが、とうとう我慢の限界がくる。そして元彼女と同棲中の彼氏の家へと突撃する。

そこからはもう、抱腹絶倒である。本能をむき出しにした女は怖くて面白い。野生に帰った女にとってはもはや男なんてどうでもいい存在になる。タイトルの「かわいそうだね?」の意味を、是非本作から探って楽しんで欲しい。

もやもやとした内容ながらも、最後は明るく痛快で、喜劇として楽しめる作品である。それにしても人間なんて矛盾の塊だから、人を愛することってほんとに難しい。もはや神業な気がする。

二作目の「亜美ちゃんは美人」は、
”さかきちゃんは美人。でも亜美ちゃんはもっと美人。”という文からはじまる。
完璧な容姿をもち、どこへ行っても人気者になってしまう亜美ちゃんと、いつも彼女の影に霞んでしまうさかきちゃん。さかきちゃんは内心亜美ちゃんのことをうっとうしく感じ、嫌いだとさえ思っている。けれどなぜか、高校ではじめて出会った時から、亜美ちゃんはさかきちゃんを心から慕っていて、決してそばを離れようとはしない。

そんな二人の関係性が、多感な少女の時代から大人へと成長していく中でどのように変化していくのか。著者の見事な心理描写と情景描写によって、読者もさかきちゃんと亜美ちゃんそれぞれの目線で、女たちのカオスな世界に没入できる。そして最後は他の作品にはない感動が待っている。

これは本当に読んで欲しい作品だ。久しぶりにものすごく感動してしまった。女同士の複雑な人間関係を見事に描いていて、納得させられる。評者は「なるほど」と思わずため息をついてしまった。

仲良し女子二人組の実態。本音と建前の乖離。高校生女子グループの形なきカースト制。妬み。ひがみ。そして人気者の孤独。女は本音を隠すのがうまい。だから本当の意味で理解し合うにはとても時間と体力が必要なのだ。

どちらも100ページ前後の短い物語なのに、これだけ読者の心をうごかす著者の力量に感服する。こういう、心を揺さぶられる瞬間に出会いたくて、読書してるんだよなあと改めて気づく。とくに評者が気に入った、「亜美ちゃんは美人」はこれからも繰り返し何度も読みたい作品である。

 

かわいそうだね?

かわいそうだね?