特定の企業に雇用されて働くということをせずに、若手芸人の下積み期間と呼ばれる長い長いモラトリアムを過ごした著者は、随分世間離れした人間になっていた。
そんな著者だからこその「社会」という場所で起こる様々な出来事への驚きの連続。
著者がピカピカ社会人一年生(当時三十歳)から二年生、三年生になり、とうとう真社会人になるまでの、著者独特の皮肉でユーモア溢れる目線で社会を見た日々が綴られる。
自分には楽しいと思う能力や限られた条件の中で楽しむ能力が欠落しているのではないかと思う著者。
一方、金もなく、親から呆れられ、事務所からも見放されファンもいない時期でも努力もせず、それでもどうしたって幸せそうな相方。
コンテストで落ちても、「M-1」の予選で落ちても相方はヘラヘラしていて。
けれど、テレビに出てある程度お金をもらえるようになっても、著者の幸福感はさほど上昇しなかった。
相方みたいに、とことんマトモになって幸福だと思ってみたい。
そんなふうに思っていた時期もあったそう。
どうしたってポジティブな相方とどうしたってネガティブな著者。
けれど達した結論は、自分たちのような人間はネガティブで考えすぎな性格のまま楽しく生きられるようにならなきゃいけないってこと。
性格は形状記憶合金のようなもので、なかなか変えられない。
だから、変えるんじゃなくてコントロールできるようになればいい。一人でいる暇な時に限ってネガティブの穴にはまることが多い。そんな時は自分と思考を繋ぐクラッチを外して趣味や家事に没頭してみたり。
そういったことを繰り返すうちに癖になって、なんとなくネガティブと良い付き合いができるようになる。
著者は自分を変えるなんてめんどくさいこと、だいぶ前に投げ出しちゃったそうだ。
著者は1978年、東京生まれ。漫才師、俳優、お笑いタレント、司会者であり、お笑いコンビ「オードリー」のツッコミ担当。2008年の「M-1グランプリ」で総合2位となり、大ブレイクする。
岡本太郎に深く傾倒しており、オードリーの今のスタイルである春日の胸を張ったポーズは大阪万博の太陽の塔がモデルなんだとか。
評者は、根暗で面白い人の書く文章って最高だと思っている。
共感できる部分が多々あるということは、評者も根暗なのかも。笑
あと、本書では著者の厨二病ぶりも存分に味わうことができるので、厨二病の方々にもおすすめです。
あなたも著者の考え方に共感できるかどうか、試してみては?