HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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ダーク・エンドの無限コンボで脳をジャミング!『パラレルワールド お売りします』

人工知能や生命工学、認知科学、VRといった分野のテクノロジーが高度に進歩した世界を前提とした、(近)未来SF短編集である。

人工知能パラレルワールドといった用語自体は、特にSF小説の分野では既に古典的なものだといえる。人工知能に関しては、過去(とはいっても、ついこないだなのだが)にはSFにしか存在しない夢や妄想であった。しかし現在、その進歩の道筋が理解できないほどのスピードで発展し、その人工知能技術を呆然と眺める「一般人」が不安を覚える筈の要素「人間との関わり」が、不安を覚える間もなく既に実社会に実装されている。その行く末は「人工知能」と一括りにできるものではなく、「人間に認知不能な別のレイヤー」として、この世にもたらされることになるのだろう。

この物語群に登場する人工知能も、高度なテクノロジーが創る「レイヤー」を「人間」が認識可能な情報の形で提示する入り口にすぎない。それ自体が「悪さ」をするわけでも「人類と戦争」するわけでもない。「この世界」を、人間のような、認識能力に限度がある存在に対して「やむなく」分かりやすい形に加工して提示し影響を与えるために存在する媒介物として機能し、「人間にも理解可能な物語」を構成する役回りをしている。そしてそこに「意図」は無い。意図を与えるのは、常に「人間」である。

本書は、従来の「パラレルワールド」からイメージされる、我々が存在する宇宙の座標系に重なる形で存在する平行世界を行き来する物語、という「よくある」スタイルのものではない。しかし最後まで読んだ時に、そのパラレルな「ワールド」が存在するのは、どこなのか、そして、それは「存在する」といえるのか、といった根源的な問題を想起させる一冊である。

あなたはどんな土だろう?『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』

自分の子供がもう少し大きくなったら読ませたいと思ったが、それよりも先に会社で働く仲間に読んでほしいと思った。本書を読むことで、日頃どれだけ多くの既成概念に囲まれているかということに気づかされる。

私も高校生であった当時、特に試験や模試においてはあまり良い思いでがない。同じ授業を受けているにもかかわらず、こうも差が出るものなのかとクラスの友人に対し嫉妬に駆られた。同時にやっぱり自分は・・・と、心のどこかでは自分自身に対するあきらめムードが漂っていた。今では納得のいく進路に進めたとは思っているが、こと勉強に関してはそのような心残りはある。

上記のような経験はこれまでも、そして今このときにも経験をしている方は多いのではないかと思う。本書ではこれらから生まれるコンプレックスを“人間は種ではなく土”という例えによってそぎおとす。個々によって土の性質は異なり、稲が育ちやすい土があれば、トマトやカボチャが育ちやすい土もある。とどのつまり特定の教師から受ける種があり、その種が良く育つか否かは土の性質の違いであり、そこに本質的に優劣はないのだ。

一方で、学ぶには戦略そして原動力が必要ともある。“もともと特別なオンリーワン”という有名な歌詞のような存在はいなく、様々に咲き誇る花屋の花たちは皆そこに至るまでに熾烈な競争を勝ち抜いている。決して芽が出たときから特別だったわけではないのだ。ではどのように目的を達成するべきか、本書は科学と情熱に基づき読者に気付きを与えてくれる。

“人は一生育つ”とはある企業の使っているキャッチコピーだが、まさにその通りだと思う。そこに年齢や性別、あらゆる属性は否定する理由にはならないはずだ。本書は目標を持つ人にぜひ手にとってほしい、そして手にとったからにはぜひ実行に移してほしい。実行こそがあなたの世界を変えるツールだ。

どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法

どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法

入門書として最適!『マーケティングを学ぶ』

本書はタイトルの通り、マーケティングをテーマにしている。同テーマで様々な書籍が世の中に溢れているが、基礎をおさえ王道の事例を扱っている本書から手に取るのをお勧めしたい。

マーケティングの話によく出てくる話がドリルの話だ。ホームセンターにドリルを買いにくる顧客は何がほしいのか。それはもちろんドリルだろうという答えはニーズから外れていて、顧客が本当にほしいものは“穴”なのだ。“穴”をほしいお客にドリルの洗礼されたデザインや握りやすさ、軽さを伝えたところでそれは本質でない。顧客はそのドリルで思っている“穴”が空くかどうかを知りたい。

本書で取り上げているアート引越しセンターの例はとてもわかりやすい例だ。今でこそひとつのサイトに登録すれば山のように見積書が届く引越し業者だが、当時は“引越し業”というものはなく、運送会社が引越しを請け負っていた。しかし“引越し”を前提としていない運送方法ではいくつもの要素が顧客のニーズから離れていた。例えば当時運送会社は家財道具を紐でトラックに括り付け、野ざらしで運んでいたのだ。これでは雨風にさらされることはもちろん、特に女性は自身の生活が他人に見られることは好ましくない。このときにアート引越しセンターは顧客が求めているものは“物の輸送”ではなく“引越し”であると事業を定義し、サービスを作り上げる。今日でいえばそのひとつが“レディースパック”にあたる。

本書では様々な事例を取り上げることはもちろん、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)に分解しマーケティングの観点で解説してくれる。自社(個人)の事業と対峙する前に、まずは本書の事例からマーケティングのセオリーを読み取ってみるのはいかがだろうか。成功に法則は無いが論理はあるはずだ。繰り返しになるがこれからマーケティングを学ぶ方にはぜひお勧めしたい。

 

マーケティングを学ぶ (ちくま新書)

マーケティングを学ぶ (ちくま新書)

 

 

新しい波に乗り遅れるな!『VRビジネスの衝撃「仮想世界」が巨大マネーを生む』

「VR元年」と称される2016年、フェイスブックやグーグルの参入や新たなHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の発売等、VR市場の拡大が勢いを増している。

VRというとゲームを想像する人は多いが、その最前線ではメディア産業、医療業界等、あらゆる業界がVRを利用したビジネスをスタートさせようとしている。
本書では、VRの歴史からVRビジネスの最前線、そして日本独自のVRビジネスを紹介すると共に、さらにその先のMR時代にはどんなことが可能になるのかを紹介してくれている。

実はVRは1990年代に一度ブームになったが、しばらくして収束している。
しかし、今起きているブームは単なるブームでは終わらず革命を起こすはずだ。
その理由は、技術の発展に伴う圧倒的な没入感の実現とデバイスの低コスト化である。
VRの最終目標は、人間の五感に働きかけて、現実世界と実質的には同じ空間を作ることであり、そこから感じられる没入感はテレビの解像度がいくら高くなっても得られるものではない。単に「観る」のではなく、「体験」するようになるのである。

例えば、映画産業ではスターウォーズが360度パノラマの動画を作成し、HMDをつけることで360度見渡しながら鑑賞できる。また、様々なキャラクターの視点に切り替えることもでき、同じストーリーでも異なる視点から鑑賞することができる。まさにその世界を「体験」することができるのである。
その他にも、観光、遠隔手術、建築設計、住宅展示場、結婚式場の下見等、ゲーム以外の分野でもVRを起点としてかつてのビジネスモデルを変えようとしている。
そんな中、日本ではプレステーションVRや、初音ミクと擬似握手、そしてバンダイナムコの「サマーレッスン」等、コミュニケーションを特性とするVRコンテンツが開発されている。
この先、VRは視覚だけではなく、VRの中での感覚を実際に感じられるようにもなる。
コミュニケーションもでき、感覚も感じられるようになれば、文字通り「仮想空間」が出来上がる。
その世界も自分で設計できるようになれば、現実世界よりも仮想空間の方で過ごす時間が長くなる人も出てくるかもしれないし、本当にマトリックスのような世界がくるのかもしれない。
本書はVRの最新事情だけでなく、そんな妄想をも広げてくれる本である。

健康的に飲みまくれ!!!『酒好き医師が教える最高の飲み方』

休肝日を増やせ!」「適量を飲め!」そんなもの守れるわけがない。本書は飲兵衛医者による飲み方本である。

本書の内容はざっくり、正しい飲み方、酒と病気、酒と健康、NGな飲み方である。全て最新の医学をもとに医者が書いているところが非常に良い。

評者も飲兵衛であるが、役に立った知識をいくつか紹介しようと思う。

大事なのは休肝日でなく総量。なんとなく休肝日を作れなど聞くが、最新医学によると酒を抜くことは関係なく、総量が問題なようだ。日本酒で言えば1日2合、週に14合だ(笑)。これを聞いてから無駄な飲みを健康のために辞めることにした。その分週に何度か堂々といっぱい飲めるわけだ(笑)。

二日酔いを避ける手法も色々ある。胃に溜まりやすい食べ物、例えば油などをはじめに入れとくと吸収されにくく酔いにくくなるという。マヨネーズたっぷりのポテトサラダをはじめに頼むのがオススメ。

他にはオシッコの色のチェック。尿の量は飲んだ酒の1.5倍になるようだが、脱水してくると色が濃く少量になってくる。これをセルフチェックすると良い。また、飲んだ量以上の水を飲む必要があるのもよくわかるだろう。

さて、本書ではこのような調子で科学的根拠を持った酒の情報が多く紹介されている。人によっては病気の章を読むともう飲めなくなるかもしれない。しかし、読んでも辞めれないのがまた酒である。知識を知って意識するだけでも付き合い方は上手になるだろう

成功とか失敗の価値観から抜け出そう『論語と算盤』

本書は幕末から明治、大正、昭和と生き抜いた起業家の著者が「人間とは論語で人格を磨く」、「算盤で資本主義で利益を追求」この2つを追求が大切と説いた書籍である。

人が世の中を渡っていくためには、成り行きを広く眺めつつ、気長にチャンスが来るのを待つということも忘れてはならない心がけである。不正を犯すもの、信じることを踏みつけにしようとする者とは争わなければならない。また気長にチャンスが来るのを待つ忍耐もなければならない。

それから不自由なのが当たり前だと思っていれば、足りないことなどない。心に欲望が芽生えたなら、自分が苦しんでいた時を思い出し、耐え忍ぶことだ。怒りは自分にとっての敵だと思わなければならない。

さらに追求するならば、商業道徳の要であり、国家においても、世界においても直接的に大きな影響のある「信用」の威力。商業に関わるすべての者に、「信用こそすべてのもと。わずか1つの信用も、その力はすべてに匹敵する」ということを理解させ、経済界の基盤を固めていくことこそ急いで取り組まなければならない。

また成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋にそって行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる。

ならば成功など、人として為すべきことを果たした結果生まれるカスにすぎない以上、気にする必要などまったくないのである。

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 

 

シャネルスタイルという生き方『ココ・シャネルの言葉』

シャネルといえば、自力でシャネル帝国を築き、さらに女性の社会進出が難しかったその時代に「女性の生き方に革命を起こした人」とも言われている。莫大な富と名声を手にし「シャネル自身の生き方」についても当時から注目を集め、シャネルに関する書籍は多く出版されているが、本書ではシャネルが残してきた多くの「言葉」をとりあげている。

シャネルは生涯を通して「かけがえのない人間でありたい」「人と違っていること」にこだわりを持っていた。それが、まさに成功の秘訣だと語っている。

実際にシャネルは、様々な場面において革命を起こしてきたが、その代表的なものは「シャネル」というスタイルにこだわったことである。

今では、当たり前となっている「黒い服」黒といえば定番色、カラーバリエーションが多くあっても、常に人気があり、コーディネートしやすい色として親しまれている。しかし当時は「黒=喪服の色」だったものを「シックでモードの色」としたのは、まさにシャネルのおかげだ。

さらに、シャネルはビジネスチャンスを常に見極めていた。例え戦争勃発時であってもかわらない。高級リゾート地に新店舗をオープンした直後、第一次世界対戦にみまわれ、戦争をも「非常事態」ではなく「ビジネスチャンス」ととらえ、疎開してきた多くの上流階級女性のために、自分が作り始めていた服「おしゃれで動きやすい服」を量産し、それが成功への第一歩となった。

しかし、このような成功とは裏腹に、シャネルの生いたちは華麗なものではなく、12歳の時に母は病死し、孤児院で育った。「お金持ちになって自由を手に入れる」ことを夢見て、17歳で歌手となり、「ココ」という愛称で親しまれ、25歳で帽子店を開いた。

さらに、シャネルは業界では異例の修行経験なしの我流デザイナーである。修行なしでも、あれだけの地位を築けたという証明でもあるが、自己流とはいえ、デッサンも描けず、縫うこともできないが、自分流のやり方をここでも貫いた。

本書では、シャネルならではの生き方について、美、恋愛、ファッション、仕事、人生など様々な分野ごとに書かれている。現代とは違い、女性というだけで、差別されたその時代に、自分自身を貫いてきた「シャネル」というスタイルには、現代でも共感できる部分は多くある。

人と同じであることに疑問を持つ人には、是非読んでほしい一冊である。

 

ココ・シャネルの言葉 (だいわ文庫)

ココ・シャネルの言葉 (だいわ文庫)

 

 

人間は恐怖と感謝という2つの感情を同時には持てない『一瞬で恐怖を消す技術』

本書は、拒絶や失敗を乗り越えるというテーマで書かれています。

ここでは、拒絶や失敗の数を減らすことではなく、それらへの対応や解釈について述べられています。

本書ではカーネル・サンダースシルベスター・スタローンを成功者として挙げ、彼らと他人との差は非常に多くの拒絶や失敗を重ねていること、失敗や拒絶をフィードバックにして様々な方法でアプローチしてきたことであると指摘します。

失敗や拒絶されることを恐れないためには、こられの対処法や受け入れ方を学ばなければなりません。また、物事の成功率を推定し、成功するまでに必要な失敗や拒絶の数を設定することも受け入れるための方法になります。

恐怖がなぜ生まれるのかという問いに対し、「恐怖とは感情であり、人は先が見えず、計画がないものに対して恐怖を感じる」とし、未来に対する不安があると自分が望まないことに考えを集中してしまうことで出現すると考えています。そのためには用意周到な計画を立て、実行することに集中すること。そして、失敗したという結果ではなく行動したという過程を称賛し自分を慰め、そのフィードバックを受け取ったら、すぐに次の目標へ移動することが大事であると説きます。

挑戦すれば、当然、拒絶や失敗がありますが、成功するためには挑戦し、拒絶や失敗と向き合わなければなりません。その時、“どこに集中するか”ということが重要になります。

恐怖心とは自分で作り上げている感情であり、恐怖心以外の具体的な行動に集中していれば、恐怖心が入り込む隙間はありませんし、過去にとらわれることもありません。
“どこに集中するか”を考えることで消すことができます。
行動を起こす前に、自分が失敗したときのことを勝手に想像するくらいなら、計画を立て、目の前のすべきことを具体化して集中して取り組むべきなのです。

最後に、もし、拒絶や失敗に対する恐怖心が生まれたときは、感謝の気持ちで自分を満たすことが最良の方法になります。なぜなら、人間は恐怖心と感謝の気持ちを同時に持つことができない生き物だからです。ぜひ、一読ください。

 

一瞬で恐怖を消す技術 ~恐怖を力に変える7つのステップ~

一瞬で恐怖を消す技術 ~恐怖を力に変える7つのステップ~