HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】なんてこった。このシリアスな気分——恋した!『ルードボーイ』

 

骨太なヒューマンドラマ、反時代的な主人公の言動という作品が多い狩撫麻礼だが、本作は何故か知らねどちょっと違い、あんまり思想的な感じは無く、どうしちゃったのかは分からないが、全体的にユーモラスですらある。
それら骨太系の作品に先んじて読んだのが功を奏したのだろうか。ええと、狩撫麻礼原作のモノとしては、制作順関係無しで早めに手にした筈。確か『青の戦士』の続いての二冊目だった筈。私にとっては、本作はそれでも十分インパクトがあったのだ。だから、当時何度も読んだっけ。
何にインパクトを感じたのかと言えば、ひとえに主人公の性格である。ざっくりしていて且つ、大胆。基本、行き当たりばったり。
それに加えて惹かれたのが作品の構成力。何の説明も無い始まり方から、こういう事件(?)があって、ああ、なるほど。ほう、そうなるのか、とドンドン物語が進行していく。

作画はこれも谷口ジロー。この頃になると絵柄も垢抜け始めてきている。大分見易くなって、また、テンポ、センスもイイ感じだ。
実は私としては、この頃からの谷口ジローの作画が好みだ。晩年の柔らかくも緻密な作画も勿論素晴らしいが、劇画作品にはこの頃のそれが相応しく思える。本書が気に入ったのにもかなり絵的な魅力の影響が大きい。

放浪、出会い、追跡、恋慕、対話、ひとときの悦び、ヤクザ親分襲名、諦め、サヨナラ、抗争、未練、暗殺、高飛び、シンクロニシティ
なんのこっちゃか分からないだろうが、実は一種ファンタスティックな恋愛モノなのだ、本作は。多分。
或る状況から逃れたくて彷徨う若い男と、長い体裁だけの夫婦生活に終わりを告げ、新生活を始めた元女優の女。
そこに、他に類を見ないモチーフを取り合わせることこそが、狩撫麻礼作品の真骨頂だ。
ルードな性格の主人公の破天荒な恋バナ。
何はともあれ、好きだなぁ、こういうの。

ルードボーイ
作者: 狩撫麻礼谷口ジロー
発売日:1984年12月20日
メディア:単行本

 

 

【書評】定年後でも遅くない『40歳を過ぎて英語をはじめるなら、TOEICの勉強は捨てなさい。』

 

「英語を話したいけど、40歳を超えたので習得できるか不安‥‥」そのように思う人は少なくないはず。しかし、「学ぶのに遅すぎることはない」と著者はいう。
ただし、「TOEICのような資格に固執するのではなく、自分の得たい結果を考えて学習方法を工夫することが大切」だという。

40歳まで英語と無縁の生活を送ってきた著者が英語の勉強を始めたキッカケは「大好きな外国製のバイクを日本で販売したい」「外国人とバイク談義をしたい」だった。
ほぼ英語能力ゼロの状態から10か月間でビジネスの場でコミュニケーションが取れるようになった著者の勉強方法は“選択と集中”。
限りある時間内に結果を得るために、始めから捨てるところを決めて勉強に取り組んだ結果である。

ネイティブスピーカーの速い会話を聞きとるにはリスニングに多くの時間を割く必要がある。著者はそこに時間を割くくらいなら「ゆっくり話して下さい」と相手に伝えることで、この部分に必要な時間と労力を節約した。
また、大量の単語をインプットしても話しをするとき言葉は口をついてでないものである。であるなら、単語を覚えるのではなく、短いセンテンスを暗記して会話に使うときにカスタマイズする覚え方を徹底していた。

著者は英語を学ぶ場所に「日本から一番近い英語圏」「物価の安い」フィリピンを選択した。
授業は先生と1対1のマンツーマンレッスンが中心であり、かかる費用は滞在費用を含めても1か月10万円程度。
リゾート地にあるキャンパスを選べば週末はビーチでリゾート気分を味わうことも可能。また、宿泊施設にプールがついていれば簡単に気持ちをリフレッシュすることもできる。
著者は、日本の会社を副社長に任せながら時間を捻出しつつ日本とフィリピンを行き来して、求めるスキルを手に入れ活躍の場を世界へと広げた。
また、英語が話せるようになったことで、付き合う人が変わり人生が大きく好転したという。
著者の人生を変えたフィリピン留学。多くの方の人生を好転させたいと考えセブ島に語学学校(QQイングリッシュ)を開設。現在は800人の先生を抱えるフィリピン屈指のマンモス校となっている。

TOEICで高得点をとるのには、問題の傾向を知ること」。ネイティブでも引っ掛け問題に気づかなければ高得点をとることはできない。
そもそもTOEICは就職や転職に必要なスコアを示すもので会話力と異なる。
英語を勉強する目的が「外国人とのコミュニケーション」であれば、細かいルールを気にするTOEIC対策に時間を使わないことが上達の秘訣なのである。

「相手の話していることの70%が理解できれば会話は成立する」。完璧な受け答えができるようになってから受け答えするのではなく、70%以下の能力で見切り発車させながら実践の中でスキルを磨くことが上達の近道である。

QQイングリッシュは1日単位で留学を受け入れているので社会人でも日程調整しやすい。しかし、いきなり留学しても話せない自分に直面するだけ。どうせ行くならオンライン英会話でベーススキルを高めたあとに留学に挑戦して欲しい。

『40歳を過ぎて英語をはじめるなら、TOEICの勉強は捨てなさい。』
作  者:藤岡頼光
発売日:2016年11月11日
メディア: ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

 

【書評】僕はつまずかないぞ。僕だけは今後も決してつまずかない。『青の時代』

 

知人が、三島由紀夫が好きだと言う。
そう言えば読んだことなかったな、と思ったので読むことにした。
存在や死に様は知っていたし、どういう経緯で出演したのかは存じないが、彼が主演した日活アクション映画も観たことはあったものの、いかんせん執筆したものには全く詳らかではない。
ということで、書店で書棚を暫し眺めて、なんとなくこれにしようと手にしたのが本書である。
こういう時に、私はあまり悩まない。直感が大事派だ。

1923年、千葉県の海に近い町であるK市で生まれた川崎誠が主人公である。K市は由来低能児の多い町であるが、その地域一帯の中に於いて、川崎家の一族は、血統にしても、知能にしても、道徳的潔癖にしても極めて格上であった。
物語は、誠の幼少期から始まり、小学生、中学生と、エピソードを重ねてゆくが、厳格な父親との心理的対立が主に描かれている。と同時に、ひねくれと反省癖、つまり取越苦労を繰り返す誠少年の心模様こそが見逃せない。
父親の誠への愛情と、それを理解出来ない子の対立の姿。やがて飛び級で名門高校に入学し、上京してからは新しく知己を得た人々との付き合いを中心とする話となる。
戦争を挟んで、一気に六年後。誠は東大生ながら、数少ない友と共に会社を興す。平たく言えば高利貸業である。
事業を拡大していきながら、進むに進まないねじくれた恋愛劇も並行していく。
やがて事業に翳りが見えてきた・・・。

前書きに於いて、著者は主人公を「疑う範囲を限定しておいて、それだけを疑う。真理や大学の権威を疑っていない。疑わない範囲では、彼はしばしば自分でも気のつかない卑俗さを露呈する。ところが滑稽なことは、疑わない範囲の彼の卑俗さが、疑っている範囲の彼のヒロイックな行動に、少なからず利しているかもしれない点だ」と評す。
主人公にはモデルがある。光クラブという高利貸しを経営していた東大法学部三年の山崎晃嗣銀行法違反、債務整理、二十七歳で服毒自殺。
著者は、この事件を元に、主人公像を作り上げた。だからこそ、自尊心の強い少年の孤独の姿から積み上げる姿勢を採ったのだろう。
著者自らの気質から離れた抽象的なデッサン。それが本書なのである。

青の時代
作者: 三島由紀夫
発売日:1971年7月15日
メディア:文庫本

 

 

【書評】一流のチャンピオンとは、言葉に絶望した果てに拳の雄弁さに賭ける男のことだ。『ナックル・ウォーズ』

 

狩撫麻礼谷口ジローのコンビで描くボクシング漫画は、『青の戦士』以来だ。
三度目の監獄は、男を徹底的に苛まさせた。恐怖に打ち克つ為には信仰が必要だった。ボクシングという名の。
その男の名は森山。刑期を終えた森山は、尚も尾行を続ける警察に向かって言った。
「これからはカタギの商売さ。世界チャンピオンを育てるんだ!!」
元手はヘロインの取引で稼いだ30億円の隠し財産。問題は超一級の才能を持ち合わせる素材を見つけること。

たまたま車で通りかかって目にした草サッカーの試合場にそれは居た。
絶対に点を取らせない俊敏なゴールキーパー。しかもそのキックは100mを越す先の相手ゴールを直撃した。
眼にはオートバイ用のゴーグル。一種異様なその出立ちは、自意識の表れか、外界を拒む為か。
「なんて野郎だ。たった一人でゲームをする気か」
彼を追った森山は、尋常ではない光景を眼にする。
中央高速道路で奴は自転車に跨った。全力疾走する奴に並走して森山は声をかけた。
「ボクサーになる気は無いか!?」
そしてメーターに眼をやれば、それは時速90kmを指していた。
奴の名は三上乱。自分が何者であるのかの旅の途上に在る、あと二ヶ月で十七歳になる少年であった。
将来を夢想し、一人悦に入る森山に反発を示しつつ、乱は「試せ」と言う森山の求めに応じ、真夜中の後楽園ホールで、全くの素人ながら現役ランカーとの対戦のリングに立つ。
無防備な乱をプロのパンチが襲う。
ダウンした乱に森山は問う。
「今までに人を殴ったことは?」
「・・・・・・無い」
「殴られたことは?」
「無い」
「ボクシングに興味を持ったことは?」
「無い。いや・・・・・・無かった」
強靭な下半身とそれを支える腹筋。「ハンディキャップ有り」ながら、ズブの素人である乱は、三発の連打でボクサーをマットに沈めた。

面白いのは、森山の強引で強気な性格だけでなく、ルックスまでもが『LIVE! オデッセイ』に於けるキーマン、下村にそっくり、というかそのまんまだということだ。恐らく狩撫麻礼は、下村のことがよっぽど気に入り、彼の再登場を願ったのだろう。
『青の戦士』の主人公である礼桂(レゲ)は、セリフはなんと全編で二言だけというくらいの凄まじい寡黙さであったが、本作の主人公の乱もそこまでではないにしても口数は少ない。
それは、寡黙というよりは無口というものであったが、やがてそれも森山によって変えさせられる。
「ストイズムが行きつける境地などは、たかがしれている」
精神的な弱点を克服させてやると言う森山は、乱から自意識を消させる。
性格までをも変え、リングに挑む乱は悲劇的にも見えた。
森山は言った。
「不憫な奴・・・」と。
しかし、更なる悲劇が二人を待っているのだった。
二人が行き着く先とは?

ナックル・ウォーズ
作者: 狩撫麻礼谷口ジロー
発売日:1988年3月29日
メディア:単行本

 

 

【書評】コミュニケーションは無視することで機能する『他人の言葉をスルーする技術』

会社に勤めていると気が滅入ることが多い。
突然の人事異動、ご乱心状態の上司の世話、説明過多を求める部下。
あぁ、やってられない。おそらく、地球上の全会社員がそう思っているに違いない。

特に可哀想なのが病んでしまう中間管理職だ。
迷走する上司の世話に苦しみ、意味の無い会議で発言を求められ、そうしている間に力をつけた部下に突き上げられる。
昨今のトレンドはコミュニケーション力であり「会話が大事」など押し付けられてしまうので嫌いな人間と距離が取れない。
さらに明らかに意味不明でその場の思い付きで発せられた言葉にも「何か意味があるのでは?」と深堀りをするが大抵無駄に終わり、来週には「俺そんなこと言ったっけ?」と言われる始末である。

そこで重要なのが真に受けない技術、「スルーする技術」である。

大事な部分を引用すると、優秀な社員は無能な上司の曖昧な指示を無視してやり過ごしているから会社が成り立っている。ということである。つまり、やり過ごしているのだ。

所詮、出世したばかりの上司や人事異動したばかりの人間なんぞ1年間は迷走するに違いないし、そんな不勉強な人間の言葉に振り回されても消費するだけなのだ。

この本にはいかに人間の言葉が無意味で無価値なのかがはっきり書かれているので振り回されっぱなしの人にはオススメする。
コミュニケーションは無視することで初めて機能するのだ。

 

 

【書評】‥‥敷居の低いストック収入『レンタルスペース投資の教科書』

 

新型コロナウイルスによる経済活動の自粛。長引くウクライナ情勢によるモノの値上げ。
平均寿命が延びているのに賃金が上昇しないことで発生した“老後2000万円問題。
世間の関心は確実に貯蓄に向いている。

バブル崩壊後30年間、日本の平均給料は横ばい。
労働の対価として得られるフロー収入が上がらないのであれば、株や不動産のような資産が生み出すストック収入を得ることを模索する必要がある。
しかし、ストック収入を得るには「大量の株を保有して配当金を得る」「不動産を人に貸すことで家賃収入を得る」必要がある。つまり、収入を得るには多額の元手が必要となるうえに、失敗したとき巨額の損出を被ることになる。

著者は、手元資金を多く出せないビジネスパーソンがストック収入を得る方法としてレンタルスペース投資を勧めている。
レンタルスペース投資とは、賃貸で借りた部屋をパーティースペースやビジネス、撮影場所として利用者に時間貸しする転貸ビジネスである。
必要な投資資金は100~200万円。不動産投資に比べると利益率が高いうえに失敗したときの損出も限定的。ローリスク、ミドルリターンのビジネスモデルである。
もちろん、「利便性の高い物件を借りて、派手な広告を打てば儲かる」話ではない。
エリアに適した物件選定、家具、家電の設置及び使いやすいレイアウト、適切な値付けやコスト管理、利用者への上手な告知や注意喚起。といったように多くのクリアしなければならないハードルもあるが信頼置ける業者を選ぶことで問題の多くは解決できるという。

著者は都内で撮影スタジオを運営していた経験を持つ。つまり、カメラマンである。
自身がレンタルスペース投資をする傍ら200件以上の物件の撮影を請け負うことで依頼物件の稼働率を高めた実績をもつ。
利益を高めるには部屋の稼働率をあげる、稼働率をあげるのには、お客さんが利用したくなる写真を掲載する。ここに力を入れることが投資の肝だという。

不動産は株やFXと比べると身近なモノであり、素人でも案件の良し悪しが分かりやすい投資である。
もちろん始めるにはまとまった資金を投下することになる。興味がある人はしっかりとこの書籍で情報を集め知識武装してから次のステップに進んで欲しい。

『レンタルスペース投資の教科書』
作  者:阪口康司
発売日:2022年7月1日
メディア:自由国民社

 

 

【書評】‥‥敷居の低いストック収入『レンタルスペース投資の教科書』

 

新型コロナウイルスによる経済活動の自粛。長引くウクライナ情勢によるモノの値上げ。
平均寿命が延びているのに賃金が上昇しないことで発生した“老後2000万円問題。
世間の関心は確実に貯蓄に向いている。

バブル崩壊後30年間、日本の平均給料は横ばい。
労働の対価として得られるフロー収入が上がらないのであれば、株や不動産のような資産が生み出すストック収入を得ることを模索する必要がある。
しかし、ストック収入を得るには「大量の株を保有して配当金を得る」「不動産を人に貸すことで家賃収入を得る」必要がある。つまり、収入を得るには多額の元手が必要となるうえに、失敗したとき巨額の損出を被ることになる。

著者は、手元資金を多く出せないビジネスパーソンがストック収入を得る方法としてレンタルスペース投資を勧めている。
レンタルスペース投資とは、賃貸で借りた部屋をパーティースペースやビジネス、撮影場所として利用者に時間貸しする転貸ビジネスである。
必要な投資資金は100~200万円。不動産投資に比べると利益率が高いうえに失敗したときの損出も限定的。ローリスク、ミドルリターンのビジネスモデルである。
もちろん、「利便性の高い物件を借りて、派手な広告を打てば儲かる」話ではない。
エリアに適した物件選定、家具、家電の設置及び使いやすいレイアウト、適切な値付けやコスト管理、利用者への上手な告知や注意喚起。といったように多くのクリアしなければならないハードルもあるが信頼置ける業者を選ぶことで問題の多くは解決できるという。

著者は都内で撮影スタジオを運営していた経験を持つ。つまり、カメラマンである。
自身がレンタルスペース投資をする傍ら200件以上の物件の撮影を請け負うことで依頼物件の稼働率を高めた実績をもつ。
利益を高めるには部屋の稼働率をあげる、稼働率をあげるのには、お客さんが利用したくなる写真を掲載する。ここに力を入れることが投資の肝だという。

不動産は株やFXと比べると身近なモノであり、素人でも案件の良し悪しが分かりやすい投資である。
もちろん始めるにはまとまった資金を投下することになる。興味がある人はしっかりとこの書籍で情報を集め知識武装してから次のステップに進んで欲しい。

『レンタルスペース投資の教科書』
作  者:阪口康司
発売日:2022年7月1日
メディア:自由国民社

 

 

【書評】人々の行動を分析してお金に変える『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』

 

著者は吉本興業のお笑いコンビ、キングコング西野亮廣氏。
累計発行部数70万部を記録した絵本『えんとつ町のプペル』の脚本・監督を務めている人物。

この書籍は、絵本をヒットさせるために超分業制を取り入れて各クリエイターの得意技を合わせることで作品のクオリティを高めたこと。
発売前にクラウドファンディングにより1万冊の予約販売、発売後のプロモーション活動の布石を打ったこと。
広告費を使わずにマスメディアに取り上げられる、各種SNSに露出する戦略など、著者が使った手法が惜しげもなく公開されている。

著作がヒットした要因は、知名度がある芸能人の作品だったこともあったと思う。
しかし、販売前から「絵本を購入する客層」「消費者が絵本を手にするプロセス」「AmazonなどECサイトリアル書店を駆逐している現状を捉えた販売戦略」など綿密にマーケティングをして対策していたことが大きい。
また、発売後にTwitterなどにつけられたアンチコメントさえ拡散力に変えてしまう西野氏の先見力、度量の大きさに驚愕。

絵本製作や販売の裏側以外にも「そもそもお金とは何か?」「現代の著作権の在り方」「インターネットが浸透することで実力が露わとなるエンタメ業界」など少し先の世界について気づきを得られる。

世の中の仕組みはもちろん、大衆のとる行動を論理的に予想して販促力に替えてしまう、天才の発想を知れる驚きの一冊。

『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』
作  者:西野亮廣
発売日:2017年10月4日
メディア:幻冬舎

 

 

【書評】コミック版!境界知能とは?『ケーキの切れない非行少年たち』

 

ケーキがあります。3人で食べるにはどうしたら良いでしょうか?
りんごが5つあります。3人で食べるにはどうしたら良いでしょうか?

本作はベストセラーとなった新書のコミック版である。全5冊、是非多くの人に読んでいただきたい本だ。

本作ではIQが70-85の境界知能と呼ばれる人々について書いている。このIQは全体の14%だ。つまり35人クラスなら5人はいることになる。
この5人は知的障害者と呼ばれることはないが、社会で生きることが苦しいことがある。

そのため、社会から理解されず。また、気づけば犯罪にまきこまれていたり、気づけば、人を殴ってしまったりしてしまうことがある。

現実に起きている犯罪というのはこの境界知能の人々であることもある。しかし、社会では知的障害者とは認められてはなく、問題となっている。

是非本作品はいろんな人の目に届き、協会知能への理解を深めるための一冊になって欲しいと思う。

 

 

【書評】すべての歌はラブ・ソングである! そして限りある者のみが愛について歌い、語る資格を持つ。『LIVE! オデッセイ』

 

漫画原作者である狩撫麻礼には、幾つかのテーマが苔の様にこびりついている。
ボクシング、ジャズ、ブルース、レゲエといった音楽、そして遁世。
或る日、行方をくらましていた男が突然帰ってくるというパターンは少なくない。本作もその一つである。
インディーズながら一部の熱狂的なファンにとってはカリスマ的存在であったバンドのボーカリスト“オデッセイ”は、五年前にアメリカへ逃亡してしまった。その彼がやおら日本に戻ってくるところから物語は始まる。
かつてのバンドメンバーが成田空港で迎えた主人公オデッセイは、極端な空腹時からの深酒と飛行機食を他人の残した分まで食い漁り、胃痙攣を起こして憔悴。ボロボロ状態であった。
英雄の帰還?
果たして、またバンドは出来るのか?!
ところが、元メンバーたちは肩透かしを喰らうこととなる。
オデッセイはバンド再結成などする気は無いらしく、彷徨の日々を送る。
なんとか歌わせようと仕組むメンバーたちにオデッセイが語る。
ニューヨークの場末の酒場で聴いた80歳過ぎの黒人ブルースマンの歌に、オデッセイはショックを受けた。自分はニセモノであると歌を封印したのだ、と。
ということで、前半はまったくこの先がどうなるのか分からない様な単発のエピソードが続く。
なかなかにワガママ、強気な自己中心的キャラ全開というオデッセイと、狩撫麻礼独特の様々なモチーフを以て現れる登場人物たちとのあれこれも楽しくはあるが、内なる衝動、「歌いたい」という思いを認め、黒い封印を解きステージに復帰する後半がやはり本作の見どころだ。
バンド再結成のライブは場末のビアガーデンであったが、ここで出会ったのが某レコード会社のディレクターである下村龍雄。この下村のキャラクターがまた強引且つ大胆と来ており、会った途端に会社は辞め、あんた方のプロモーター兼マネージャーになると言い放つ。
クソみてえに安手な青春論や人生観を甘ったるいソプラノで歌うスレッカラシばかりがもうけている音楽業界。
だが、下村は強気だ。
オデッセイと下村。共犯関係の成立。
確信犯的な戦略の数々を経て、オッデセイバンドは急速に音楽シーンを席巻する。
だが、繰り返しを許容しないオデッセイのモラルは、その代償に己自身を疲れ傷つかせるのだった・・・。

オデッセイはその後の狩撫麻礼作品にも現れるワガママ主人公のハシリかもしれない。
前半では、画とセンスにまだ粗さが伺えた谷口ジローの作画であったが、後半はノリを見せつけてくる。
バンドがロック界の頂点に駆け上っていく様は正にup tempo、勢いに溢れている。しかし、その結末は?
それは是非読んでみて、直に味わって欲しい。

LIVE! オデッセイ

 

 


作者: 狩撫麻礼谷口ジロー
発売日:1987年3月28日
メディア:単行本