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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】なんてこった。このシリアスな気分——恋した!『ルードボーイ』

 

骨太なヒューマンドラマ、反時代的な主人公の言動という作品が多い狩撫麻礼だが、本作は何故か知らねどちょっと違い、あんまり思想的な感じは無く、どうしちゃったのかは分からないが、全体的にユーモラスですらある。
それら骨太系の作品に先んじて読んだのが功を奏したのだろうか。ええと、狩撫麻礼原作のモノとしては、制作順関係無しで早めに手にした筈。確か『青の戦士』の続いての二冊目だった筈。私にとっては、本作はそれでも十分インパクトがあったのだ。だから、当時何度も読んだっけ。
何にインパクトを感じたのかと言えば、ひとえに主人公の性格である。ざっくりしていて且つ、大胆。基本、行き当たりばったり。
それに加えて惹かれたのが作品の構成力。何の説明も無い始まり方から、こういう事件(?)があって、ああ、なるほど。ほう、そうなるのか、とドンドン物語が進行していく。

作画はこれも谷口ジロー。この頃になると絵柄も垢抜け始めてきている。大分見易くなって、また、テンポ、センスもイイ感じだ。
実は私としては、この頃からの谷口ジローの作画が好みだ。晩年の柔らかくも緻密な作画も勿論素晴らしいが、劇画作品にはこの頃のそれが相応しく思える。本書が気に入ったのにもかなり絵的な魅力の影響が大きい。

放浪、出会い、追跡、恋慕、対話、ひとときの悦び、ヤクザ親分襲名、諦め、サヨナラ、抗争、未練、暗殺、高飛び、シンクロニシティ
なんのこっちゃか分からないだろうが、実は一種ファンタスティックな恋愛モノなのだ、本作は。多分。
或る状況から逃れたくて彷徨う若い男と、長い体裁だけの夫婦生活に終わりを告げ、新生活を始めた元女優の女。
そこに、他に類を見ないモチーフを取り合わせることこそが、狩撫麻礼作品の真骨頂だ。
ルードな性格の主人公の破天荒な恋バナ。
何はともあれ、好きだなぁ、こういうの。

ルードボーイ
作者: 狩撫麻礼谷口ジロー
発売日:1984年12月20日
メディア:単行本