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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】スマホは目的達成のためのツールでしかない! 『スマホ人生戦略 お金・教養・フォロワー35の行動スキル』

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今や誰もが持っているスマホ。検索やSNSなどの各種アプリや強力な機能が備わっている。強力すぎるあまりスマホを使いこなすことやスマホに依存することが目的になっていないだろうか。スマホというのは、あくまでより良い人生を送るためのツールの1つにしかすぎない。

スマホ人生戦略。タイトルの通り、この本にはスマホでできることの解説も多い。ツールを使いこなす方法も大事だが、前提としてこの本が一番伝えたいことは、あなたはスマホを使いこなす博士になるわけではないということだ。あくまでより良い人生という目的を達成するための1つの手法として、スマホという強力なツールを使いこなすのだ。検索にしろSNSにしろ、ただ惰性でスマホを操作していないだろうか。しっかりと目的を持ってスマホを操作するべきである。

スマホの使いこなし方の例。英語で「一次情報」を得ることが現代の成功の条件である。世界で刻一刻と変化する情報のスピードについていくためにはリアルタイムから遅れてくる日本語訳ではなく直接、英語の情報に触れるべきである。評者もこの部分を読んでから、英語の情報に触れるようにした。具体的にはTwitterで英語のニュースアカウントをフォローして読んでいる。ぱっと見で意味が分からなくても翻訳ボタンを押すだけで何となくの意味が分かる。もちろん厳密な意味は精査する必要があるが、英語で発信しているアカウントをフォローする、ただそれだけで普段から英語の情報に接することができる。英語を用いて引用リツイートで発信することを習慣にするだけでも、英語への抵抗感というのはずっと少なくなる。

著者の堀江貴文氏は日々スマホを使いこなしている。仕事もスマホで完結するようにしているし、パソコンは長い間、触っていない。より良い人生を送るため、1秒でも無駄にしないためにスマホを使いこなすべきだと多方面で説いている。

最初にも述べたが、スマホは本当にツールでしかない。より良い人生という目的を達成するための1つのツールだ。ただスマホをいじっているだけで貴重な時間を浪費しがちな評者にとってはとても大事な視点だと感じた。強力すぎるツールのあまり、本来の目的を忘れていないだろうか。本書を読むことで1人でも多くの人が、より良い人生を送るためにスマホと付き合えることができれば幸いである。

 

 

【書評】人生は虚無感との戦いだ。『トカトントン』

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太宰治が感じていた虚無感がひしひしと伝わってくる作品である。読中は悲劇っぽく感じるのだが、読後、全体を俯瞰してみてみるとやはり喜劇に思える。なんとも中毒性がある作品だ。

本作は1947年に発表された、太宰治の短編である。主人公の青年がある小説家へ書いた、書簡体小説となっている。

主人公がなにか新しいことをはじめようとして、その情熱がまさにピークに達するとき、いつも金槌を打つ音が聞こえてくる。

トカトントン

するとなにもかもがあほらしく、どうでもよくなり、主人公は途端にやる気を失ってしまう。なにをやっても、その繰り返しである。

時代背景は戦後間もなくだ。日本は軍国主義から、GHQ支配下の元、民主主義へと移行する。前へ習えの状態から、自分たちで考えて行動すべき時代への変化。

絶対視されていた国の価値観なんてものは結局のところぶれぶれで、何を頼りにしていいのかわからない。虚無感が沸き起こるのも無理もない。きっと著者自身の戸惑いや絶望が表れているのだろう。

主人公は常に虚無感に支配され、終いには何一つ手につかなくなる。死のうと思ったときでさえ「トカトントン」が聞こえてきてその気を失う。そこで救いを求めて、ある作家へと出したのがこの手紙である。

急速に熱が入って、急速に冷めていく主人公の気持ちが、評者にはとてもよくわかる。元々の性格が冷めているせいだと思っていたけど、もしかすると単純に、もう一歩踏み込む勇気が足りないということなんだろうか。ほんと、どうしたもんかなあ。

 

トカトントン

トカトントン

 

 

【書評】逃げちゃダメな場所なんてない。居場所は自分で選択できる。『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』

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2017年11月、著者はがん告知を受けた。
そしてその年の12月、著者はブログに本心を綴った。「自分の人生は幸せだった」と。わざわざことばにして書いたのは、周囲の人たちへの牽制だった。

著者は3年間という余命宣告を受けた。
これからの3年間、自分なりに前を向いて生きていこうとしているというのに、周囲から「かわいそう」と言われ、憐れみの目で見られる。その目がどんなに鬱陶しく、失礼で邪魔なことか。だから思いの丈をブログに綴った。

そうしてブログでがんを公表すると、応援や批判メッセージに混じって、「感謝」のことばが多いことに著者は驚いた。感謝を述べる彼らに共通するのは、主語が「わたし」であることだった。そして気付いた。「そうか、みんな話を聞いて欲しかったのか。」と。

そこには、誰にも言えない苦しみを抱えている人が多くいた。

著者は彼ら一人ひとりに、丁寧に対応した。彼らの話を聞いて、自費出版でもいいから本を出そうと決めた。その結果出来上がったのが本書である。

そしてそれは正義感による行為ではなく、がん患者に限らない、「こころが蝕まれていくプロセス」を知りたいという好奇心による行動だった。

辛い放射線治療が終わり、ようやく歩けるようになった著者は、再びカメラを構え、旅に出た。

その旅をして気付いたこと。
苦しむ彼ら彼女らに共通すること、生き辛さの根底にあるのは、人間関係であり、「家族」だった。さまざまな立場の人が抱える生きづらさの原因をたどっていくと、ほぼ間違いなく親子関係に行き着いたそうだ。

生きるとは、「ありたい自分を選ぶこと」だ。「家族」だって、自分で選んでいい。もしも改善の余地がない関係だったら、たとえ親子であっても、その関係を断ち切ってかまわないと、著者は今思うそうだ。

気の合う人が周りにいないと嘆く人が多くいるけれど、それも自分が選んだ結果なのだと思う。我慢して時を過ごしても何一つ残らない。自分にとって楽しいことは必ずある。それを探すことが人生なのではないだろうか。

そしてこれだけ多くの傷ついた人たちがいるということは、傷つけた人たちがいる、ということを誰しもが忘れてはいけないのだろう。

だけど想像力のない人間は、自分が人を傷つけていることに気づかない。むしろ彼らにとっては善意や正義感による行動や発言だったりするから、余計にタチが悪い。だからこそ、付き合う人は自分で選択するべきなのだろう。

正直かなり重く苦しい内容の本なので、読中はきついし、読後も心にずっしりとしたものが残る。評者はしばらく引きずりそうだ。けれどきっと、誰もが自分の人生を考えるきっかけになる本だと思う。

今現在生きづらさを抱えている人はもちろん、逆に、生きづらいと言う人の気持ちが理解できない、そんなのは甘えだ、と思っている人にも、是非読んでもらいたい。

 

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。
 

 

【書評】大切なのは真実を知る勇気を持つこと。そしてまずは自分が変わること。『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』

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マックルモア&ライアン・ルイスの「Same Love」という曲は、"小学生のころ、俺は自分がゲイだと思っていた"という言葉から始まる。

この曲は、マックルモアが彼の地元ワシントン州で、同性婚法が成立したことにインスピレーションを得てつくったものだ。また、彼の叔父さんがゲイだったことも動機のひとつで、シングルジャケットには叔父さんとパートナーのポートレイトが使われている。

男性優位主義がはびこるヒップホップの世界において、当時LGBTQをサポートする曲をつくることは極めて異例であり、大きなリスクを伴うことだった。

「SameLove」というタイトルには、
「不安や恐怖を取り除けばそこには同じ愛がある」というメッセージが込められている。また、曲全体がメッセージソングとして非常に緻密な構造となっている。とても良い曲なので一度聴いてみてほしい。ミュージックビデオも短編映画を見ているようでとても素敵だ。

本書は、混迷するアメリカの社会情勢のなかで不正を告発し、人権の尊重を訴え、偏見や差別の撤廃を求めるミュージシャンたちの闘いの記録である。

私たちは未知なものや、自分と関わりが薄いものに対して、恐怖や不安を抱いてしまう。そしてその不安が積もり積もって、差別や偏見に繋がることは少なくない。

「自分は差別とかはしないし。関係ない。」ではなく、まずは知ろうとすること。その責任が私たちにはあるのかもしれない。無関心もひとつの罪なのかもしれない。本書を読んでそう思った。

 

ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック

ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック

  • 作者:高橋 芳朗
  • 発売日: 2020/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【書評】自分の納得した人生を送るために『空気が支配する国』

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本書では、空気や同調圧力とは何なのか、また空気を生むその原因と向き合いかたについて書かれている。著者は学習塾を経営しているそうだが、コロナ渦や台風被害を経験し、「空気」や「同調圧力」を感じ、様々な制限を強いられたそうだ。

世界でも日本は同調圧力が強いのではと言われているが、アメリカの心理学者の研究によると、自己主張をするアメリカ人でも同調圧力に弱く、日本人と変わらないそうだ。実験結果から、日本人は個人にとって重要な他者には同調的であり、赤の他人には無関心で冷淡であり、また敵対的でもあるそうだ。

世の中を見ていると、確かに頷ける部分もある。普段は病気をすることもなく、風邪もあまりひかないので、病院に行くことはあまりないのだが、親が自粛し過ぎて病院にかかった際に感じたのが、医者の言うことはすべて正しいと言う圧力だ。

病院もビジネス、利益を得ないとやっていけないということはわかるが、患者の意志や症状に関わらず、治療期間が定められている国のルールは理解できない。

海外では、日本の国民健康保険のシステムは素晴らしく、とても羨ましがられるが、患者の意志が通らず、意見できない圧力の中では、意味のないものになる。医者といっても人それぞれ、患者の回復を第一に考える人もれば、利益優先の人もいる。特に利益にならず面倒な処置のある高齢者には、顕著にあらわれる。

良くなるのも悪くなるのも、病院や医者を選択をする段階で決定するといっても過言ではない。医療や介護の面では、早いうちから手立てを見つけないと、お金を払って命を操られてしまいかねないのが日本の現状だ。

健康だったら気づかない、医療や介護の現実を嫌というほど見せつけられてしまった。医療、介護、仕事といくつもの解決の糸口が見つけられない課題が山積し、正直自分のことどころではなくなってしまったが、その反面、世の中の現状に直面できたことは、自分にとっても大きな学びとなった。

 

空気が支配する国(新潮新書)

空気が支配する国(新潮新書)

 

 

【書評】歴史はいらない学問?『それでも日本人は「戦争」を選んだ』

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今年話題になった学術会議の任命拒否。結局納得のいく理由説明はなされなかった。そこで外された6人に興味をもった。その人たちの言動や研究が政権にとって好ましくないとしたら、その6人について知れば、今の政治を逆側から投影できるかも知れない。そこでそのうちの一人である、加藤陽子先生の有名な著作を手に取った。
 
「それでも日本人は戦争を選んだ」このタイトルには現在の日本人が戦争の反省をもとに教育されており、「なんであんなバカなことをしたのか」という視点からしか歴史を見てこなかったことに対するアンチテーゼが投げかけられている。

 本書の中では、学生たちとの対話の中で、世界の歴史上の有名な出来事を、史実や歴史的記述から読み解いている。

人文科学は有用ではないから、国立大学には必要がないと言われたり、実験をしないから歴史は科学ではないと言われたりと、歴史という学問の地位が揺らいでいるが、掴みにくい歴史という学問のエッセンスや、歴史の現在及び未来への活かし方がわかりやすく書かれており、歴史の入門書としてもノンフィクションとしても優れた本だと思う。

 任命拒否の6人の共通項と政治的意図のありかという私の問いは、まだ解決されていないが、1人ずつおさえていきたい。

 

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)
 

 

【書評】村上ファンドとホリエモンのおはなし 『マンガ 生涯投資家 』

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2006年ライブドア事件インサイダー取引をしたということで、逮捕、有罪判決を受けた村上ファンドの村上氏の書いた『生涯投資家』。本作は漫画ver。

本作は村上氏が小学生に投資について授業をしながら自分のことを紹介するようなストーリーだ。

村上氏は100万円を小学生の時に親からもらいそれを元にお金を増やしていった。

株式市場として正しい状態にすることを使命に、挑戦的な投資を次々と行なっていったことで有名だがそれはどういうことを考えて行なっていたのか、彼の哲学が本書から知ることができる。

そして本作を読んで何かが蘇ってきた。評者は は高校生の頃に株の仮想取引が趣味で、20歳の誕生日に株式口座を開き今も趣味で株を買ったりしているが、その原点は村上氏だったということが。

そういえば『堀江貴文』ってかいたライブドアの株券、実家のどこかにあるはずだけど、どこだろう。

 

マンガ 生涯投資家 (文春e-book)

マンガ 生涯投資家 (文春e-book)

 

 

【書評】心あたたまるひとときを『7人のシェイクスピア(2)』

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劇作家であり、詩人であるウィリアム・シェイクスピア。代表作には『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』などがある。演劇のみにとどまらず、エンターティメントの世界で大活躍したが、個人的な情報は謎に包まれている。

巨大な屋敷に暮らす謎の人。そしてそこに集まる個性ある人々。ビジネスに長けた者、芝居の世界に魅せられ、脚本を書く者、素晴らしい詞を書く者、歌がうまく、どんな楽器も弾けてしまう者、それぞれの才能が次々と明らかになっていく。

そして本作では、また新たな隠し持っていた才能が開花していく。屋敷にあった楽器をふと手に取り、皆が驚くような音色を奏でる彼女はいったい何者なのか?

評者にとって音楽は、全くと言っていいほど縁がない。しかし、今でも心に残っているのは、「ピアノ」だ。子供の頃、友達が習っていたことにも影響されたのか、ピアノには強烈に惹かれていた。

どうしても習いたいとピアノ教室にも訪れたが、自宅での練習が必須とされていた当時、マンション住まいだったため、やむなく諦めさせられてしまった。そんなこともあり、音楽の授業では、ピアニカやアコーディオンを練習し、何とか鍵盤に触れる機会はあったものの、両手で弾くピアノとは訳が違う。

一体どのようにしたら、両手で弾けるのだろうか。また、左右違う動きができるなんてとても器用で感心してしまう。そのため、ピアノを弾いたり、練習している人は、非常にすごいと尊敬し、興味をそそられてしまう。それほどピアノを弾くことは、簡単ではなく、かなりの練習量も必要だと、誰にでも容易に想像がつくからだ。

さて、本作第2巻では、才能ある人々のそれぞれの能力を発揮し、ついにあの『ヴェニスの証人』が完成する。観客が望むのは、音楽のある芝居。音楽は人の心をつかむ。

脚本ができ、劇中歌も生まれ、絶対的な自信作として完成したが、その期待を裏切るかのように、どこの劇団からも全く相手にされない。今後どうなってしまうのだろうか?

この季節、日本でも音楽を楽しめる演劇がある。それはミュージカル『クリスマスキャロル』だ。歌あり、踊りあり、シェイクスピアの時代の演劇のように、食事も楽しめるエンターテイメント。世界中が殺伐とした状況に陥ってしまった現在、このクリスマスのシーズンに心あたたまる時間を味わおう。

ミュージカル
『クリスマスキャロル』
https://christmascarol.jp/

 

 

【書評】グラミー賞に込められたアーティストの歌詞!!『ディス・イズ・アメリカトランプ時代のポップミュージック』

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近年のアメリカのポップミュージックの歌詞は、近年のアメリカ社会について描いている。

その背景には、毎年行われる「グラミー賞」がある。それをきっかけに多種ジャンルのアーティストがヒートアップ。トランプ大統領の発言などもありさらに加熱した。

この本は、2014年から2020年上半期までのアメリカ社会情勢やグラミー賞などについて書いている。その年のアメリカ社会情勢、最優秀賞、活躍したアーティスト、ヒット曲の歌詞に込められた意味に着目して欲しい。

恐らく、誰もが一度は耳にしたことがある曲や、ニュースで聞いたことがあるアメリカ社会情勢について書いている為、入り込みやすい内容だ。

何気なく聞いていたポップミュージックにも、歌詞に込められているアメリカ社会においての現状、訴えがあることがよく伝わってくる。

歌詞に注目して聴くと、近代のアメリカ社会がわかる。今後のグラミー賞の見方も変わるはずだ。

本書に記載されている曲を聴きながら、その曲のアーティストの顔を浮かべながら読むと、その曲の背景が見えてくるので、おすすめだ。

 

ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック

ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック

  • 作者:高橋 芳朗
  • 発売日: 2020/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【書評】とりあえず、ちょっとやろうぜ! 『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』

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ビル・ゲイツの前でプレゼンを行い、Windows95を世に送り出した著者の実体験を基に時間の大切さ、スピードの大切さを説いている。
”時間を制する者は、世界を制す”
”一度立ち止まって、時間の使い方に徹底的に向き合う”

何で仕事が終わらないんだ。期限内に終わらせるのさえ一苦労だし、仕事の途中に違う仕事が入ってきて、ますます収拾がつかなくなる。皆さんも一度は経験したことがあるだろう。私もそんな時にこの本を手に取った。本書は、最初に「終わらない仕事」はそもそもどういう原因があるから終わらないのかについて示し、そうならないような仕事との向き合い方、時間の使い方を解説している。安請け合いするな、全部でなくても少し取りかかってメドをつける、期限までの見積もりをする。どれも言われてみればそうだねと思えることではあるのだが、より深く理解して行動するためにも本書で客観的に自分の時間の使い方を振り返ることが大事だ。

“すべての仕事は、必ずやり直しになる”
著者は、作成したプログラムがうまく動作しないということを幾度となく経験してきた。また、現代のスマホのアプリがアップデートを繰り返す理由についても述べている。完璧なものは作れない、作成時点では良いと思っていても振り返れば不十分なところが必ず出てくる、だからやりながら改良を重ねていくしかない、それを前提として考えていくべきなのだと。こういったことは著者のようなIT業界に限らず、私にもあるし、皆さんにもあると思う。気合入れて取り組んでいたプロジェクトのウケが悪いことや、作り込んでいた資料がほとんど見向きもされない経験など。ついつい時間をかけて素晴らしいものを完成させようという気になってしまうけれど、必ずやり直しになるのだから、難しく考えずに勢いよく取り組んでしまおう!

著者は1960年北海道生まれ。高校時代からパソコン系雑誌の記事執筆やソフトウェアの開発に携わっていた。米国マイクロソフト本社の勤務時にはWindows95の基本設計を担当していた。著者は60歳であるが、若い人が読んでも十分に共感、納得できる要素が詰まっている。

“時間を制する者は、世界を制す“
最初に、もくじを見た時は何て大げさな言葉をと思っていた。しかし読み進めていくうちに、著者のキャリアや経験を基にした解説が腑に落ち、その言葉が大げさでも何でもないことに気づいた。ぜひ一度自分の時間の使い方と向き合って、世界を制してみよう!