今年話題になった学術会議の任命拒否。結局納得のいく理由説明はなされなかった。そこで外された6人に興味をもった。その人たちの言動や研究が政権にとって好ましくないとしたら、その6人について知れば、今の政治を逆側から投影できるかも知れない。そこでそのうちの一人である、加藤陽子先生の有名な著作を手に取った。
「それでも日本人は戦争を選んだ」このタイトルには現在の日本人が戦争の反省をもとに教育されており、「なんであんなバカなことをしたのか」という視点からしか歴史を見てこなかったことに対するアンチテーゼが投げかけられている。
本書の中では、学生たちとの対話の中で、世界の歴史上の有名な出来事を、史実や歴史的記述から読み解いている。
人文科学は有用ではないから、国立大学には必要がないと言われたり、実験をしないから歴史は科学ではないと言われたりと、歴史という学問の地位が揺らいでいるが、掴みにくい歴史という学問のエッセンスや、歴史の現在及び未来への活かし方がわかりやすく書かれており、歴史の入門書としてもノンフィクションとしても優れた本だと思う。
任命拒否の6人の共通項と政治的意図のありかという私の問いは、まだ解決されていないが、1人ずつおさえていきたい。