マックルモア&ライアン・ルイスの「Same Love」という曲は、"小学生のころ、俺は自分がゲイだと思っていた"という言葉から始まる。
この曲は、マックルモアが彼の地元ワシントン州で、同性婚法が成立したことにインスピレーションを得てつくったものだ。また、彼の叔父さんがゲイだったことも動機のひとつで、シングルジャケットには叔父さんとパートナーのポートレイトが使われている。
男性優位主義がはびこるヒップホップの世界において、当時LGBTQをサポートする曲をつくることは極めて異例であり、大きなリスクを伴うことだった。
「SameLove」というタイトルには、
「不安や恐怖を取り除けばそこには同じ愛がある」というメッセージが込められている。また、曲全体がメッセージソングとして非常に緻密な構造となっている。とても良い曲なので一度聴いてみてほしい。ミュージックビデオも短編映画を見ているようでとても素敵だ。
本書は、混迷するアメリカの社会情勢のなかで不正を告発し、人権の尊重を訴え、偏見や差別の撤廃を求めるミュージシャンたちの闘いの記録である。
私たちは未知なものや、自分と関わりが薄いものに対して、恐怖や不安を抱いてしまう。そしてその不安が積もり積もって、差別や偏見に繋がることは少なくない。
「自分は差別とかはしないし。関係ない。」ではなく、まずは知ろうとすること。その責任が私たちにはあるのかもしれない。無関心もひとつの罪なのかもしれない。本書を読んでそう思った。