本書は新型コロナウイルス感染症によるインフォデミックそれに伴う緊急事態宣言発動からの経済破壊について、特にテレビのワイドショーが強い影響を発していたという著者の主張が中心である。ただ、ワイドショーの批判に終始することはなく過去の感染症の歴史、感染症への向き合い方、死生観、日本と諸外国の衛生意識の比較、ウイルスについての知識、経済の大切さなどについても分かりやすく表現されている。特に衛生意識の比較については漫画だと本当に分かりやすいと感じた。本書を読むことで現在も続いている状況を再認識し、インフォデミックについて恐れずに対応してもらいたい。
小林よしのり氏によるゴーマニズム宣言。今までは歴史に関する巻も多かった。評者は、そもそも自分が生きていない時代のことなんて本当かどうかも分からないし、確かめようがないという気持ちが強く、ゴーマニズム宣言を積極的に読むことは避けていたのだが、今回のコロナ論に関してはパラパラとめくっているうちに率直に読みたいと思った。コロナ論で描かれていることは我々が現在進行形で体験しているリアルであり、調べれば正しい知識にも辿り着くことができる状況だからである。
危機管理の基本は融通性があること。一度決めたことだからと、ただ続けることは恐ろしい。なぜ新型コロナウイルス感染症は他の指定感染症と比べて危険度がかなり低いのに指定感染症から外すことができなかったのか。これは評者も思うが、謎である。指定感染症になっていることで隔離など様々な私権の制限、感染経路の調査や消毒など多方面に大きな影響を及ぼす事態となっている。感染者に対する差別がよく問題となるが、指定感染症のままで現在の強力な措置を続けている以上は、多くの人が警戒してしまっても仕方がない。もちろん差別はいけないことだが。評者自身、急に検査を受けるように要請される事態となって陽性だった時(仮に偽陽性だったとしても)のことを考えると恐怖でしかない。新型コロナウイルス感染症流行の初期の頃はどういう感染症か把握できていなかったので指定感染症に含めることはやむなしだったが、それ以降はどういう感染症か分かってきたはずなので、暑い時期に指定を見直すなどの融通性をとることはできなかったのか。
今後、同じようなことが起きた時に今回のような混乱を起こしてはならない。それはまさしくその通りだが、具体的にはどうするべきだったか。テレビのワイドショーでの煽り報道や、怪しいデータから推測をする専門家の存在という背景はあったものの、この混乱の決定打となっているのは緊急事態宣言や指定感染症の継続といった、すなわち政治家の判断であろう。数年後にこのコロナ騒動は笑い話になっていてほしいと思うが、どういったプロセスを経てこのような混乱が引き起こされたのか、もっと融通性のある危機管理の仕方はできないものかなど1人1人がよく調べて分析する必要がある。1人1人なんていう大層な主語を使ってしまうと抽象的で無責任になってしまうが、本当にそうなのだ。決定打ではあるものの結局、政治家の判断の中には有権者の多数に支持されるだろうという思惑もある。有権者の投票によって働くことができている職業だから。だから正しく分析できる有権者が多ければ今回ほどのことは起こりにくい。現在進行形の危機への対応、未来の危機への備えのためにこの本を読もう。