コロナによる不景気、リモートワークの増加、終身雇用・年功序列の廃止…など、日本の会社員を取り巻く事情は変わってきている。その一方で、会社から評価されるビジネスパーソンが持つ本質的な部分…人から信頼を得る方法や、仕事との向き合い方・知識などは変わっていない。
本著は、これからの時代に、あなたが会社や周囲から評価され、ビジネスを通して生き生きと働いていくための、ポイントがまとめられた本である。入社1年目の会社員をメインターゲットとしているが、経験を積んだ先輩、上司層に対しても部下指導の参考になる本となっており、職種・業界・性別問わず、スラスラと読める内容となっている。
ビジネスをする上での基本的な問題、例えば「上司への情報の伝え方ってどうするのが正しいの?」「決裁をとるにはどう根回しするのがいいの?」等、ビジネスマンとしての基本的な仕事への考え方がまとめられている。また、オヤジ臭く泥臭い仕事の本質について、最近の若者にも、「仕事って楽しいんだな」と感じてもらえるよう書かれている。
その中でも、"第3章 「単純作業」に仕事の真髄がある"では、「電話営業」「議事録作成」など、一般的に「つまらない」とされる仕事にスポットを当て、仕事の持つ意味や考え方を言語化しているところは、さすがである。
著者は田端信太郎氏。NTTデータからリクルートを経て、LINE、ZOZOの役員などを歴任し、現在はオンラインサロン「田端大学」の塾長も務めつつ、様々な企業の顧問として活躍している。田端氏は、「家事は1日1時間で終わる」「過労死は自己責任」など、twitterでの過激な発言で炎上することも多い。しかし、本著を読むと、彼が1人のビジネスマンとして、多くの問題に立ち向かい、顧客の要望を聞き、それを乗り越えて来た経験の重み・深み・男らしさが感じられる。
この本を取り上げた理由は、評者個人が、「ビジネスパーソン」としての田端信太郎氏が好きだからである。(「炎上芸人」としての田端信太郎ではなく…)彼個人に対しての好き嫌いはそれぞれあると思うが、世間の批判の的にされても、困難に立ち向かい、自分の意見を貫き、それを乗り越えてきた人間のカッコよさがあるのではないか。
最後に。まだ本著を読んだことがない人へ。
「彼のことが嫌いだから読まない…」「彼のようにブランド人として名を上げたいから読みたい」と、著者本人にスポットを当てるのではなく、本著を読むことで、ビジネスの楽しさを知ってほしいし、これからの時代に生き生きと働くビジネスパーソンになってほしいと願う。