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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】 企業戦国時代の教科書、これを知ればあなたもプロのリーダーが求める人材になれる!『日本人が知らないプロリーダー論』

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終身雇用と家族的な人間関係を良しとしていた日本の企業文化が、海外企業の企業買収(M&A)によって、
突然、真の資本主義経済、合理主義の嵐の中に投げ込まれた!その時どうすべきか?新しいルールはどんなものなのか?生き残るためにはどうしたらいいのか?

日本人でありながら、数々の企業の経営改革や経営再建の場という、ビジネスの戦場で結果を出し続けてきた筆者だが、従来の日本のリーダーが通用せずに退職してゆく様に心を痛め続けていた。そして、次世代のリーダーたちに向けて、正直に、そして非常に分かりやすく自分の経験を通じて学んだことを語ってくれている、これからのビジネスマンの必読書。

本書の特徴は、ある日本企業の一部門がM&Aで海外企業に買収されたという架空の設定の中で、アマチュアリーダー(一般的日本企業の上司)とプロリーダー(海外の企業再建のプロ)の二人のリーダーが、企業再建の道のりを共に歩んでゆく様子を緊迫感のあるストーリーとして見せると同時に、この二人の本質的な違いを丁寧に説明しているところだ。

二者の違いを簡単にまとめるとこんな感じになる。アマチュアリーダーは、まず、個々の部下の精神面をフォローして、人間力でチームをまとめ、部下が失敗するのも人生経験だと思いあたたかく見守り、失敗を活かして次の目標に向かってゆけるように励ます。
だが、プロリーダーは短期間で営業利益を黒字化させなければすぐクビになる。すでに収益を出すための専門的な手法は技術として確立していて、その技術と経験を身に着けているプロなのだ。利益が上がるかどうかが全ての判断基準となる。チームの目標と将来のビジョンを明確に立て、それを部下に理解させる。失敗や目標未達は徹底的に原因究明し、二度と同じ失敗をさせない。個々の部下の精神的なフォローは仕事に含まれず評価は目標達成率という数字のみで行う。目標達成率に比例した特別賞与を出すことでモチベーションを高める。

「海外のプロリーダーは、短い期間でも確実な成果を出せる能力と技術を持っているが、一方、日本のよきリーダーは、長期的に会社を存続させることに長けている。次世代の成長のために、会社の文化を醸成する高い能力を持っている。」著書は、最後にこのように分析して締めくくっている。
最終的には、文化の違い、人生の優先順位の違いというものが、ビジネスとの向き合い方や心構えの違いになっているということなのかもしれない。特にM&Aや、人生の中でのその他の緊急事態でもそれらの違いが明確になる。

この本は分類としては、ビジネスリーダー論だが、まさしく世界の資本主義経済勢力(収益至上主義)の中に飲み込まれて葛藤している日本の精神文化、日本の企業文化の現状を見せてくれていると思う。
私としては、効率や数字で見える結果を出したい部分にはこの考え方やテクニックを応用し、それとは全く違う数字では測れない何か、つまり「幸福」や「満足感」などには、「神道的」「仏教的」あるいは何か別の全く次元の違う思想を利用して得る必要があるだろうと思っている。「日本のよきリーダー」となる人々が、よりよい企業文化を創り上げてゆく道のりを心から応援したい。