ピーター・F・ドラッカーがビジネス社会に残した功績は数えきれないが、その中の一つは間違いなく目標管理の体系化であろう、とドラッカー理論の研究を続けて50年になる著者は言う。
ドラッカーは、目標管理をマネジメントの哲学であると断じたが、その目標管理は、日本に於いては正しく理解されていない。その為に、先進諸国の中にあって、日本のホワイトカラーの生産性の低さが指摘され続けている。
ノルマ管理ではなく、ドラッカーが説いた正しい目標管理を理解し、国家的な損失ともいえる不可解な状況を打破して生産性を上げる。これを目的として、分かり易さと読み易さを優先して書かれた本書は、中間管理職のみならず、目標をもって何かを達成したいと考えている人であれば必ず参考になるし、評価する側のモヤモヤ感と評価される側が感じる理不尽を解決するであろうと著者は自薦している。
Management By Objectives and Self-control.
これが、著者『現代の経営』に於いて、ドラッカーが初めて著した「目標管理」である。直訳すれば、複数の目標と自己管理によるマネジメント。つまり、本来ドラッカーが唱えた目標管理には、自己管理に本質があり、自発的に目標を設定して取り組み、その結果の評価についても自ら行なうことに特徴がある。上司から押し付けられた目標に対峙するものではない。組織の成長に貢献することが、個人の成長にも通じる「自己目標管理」なのである。
自己目標管理の基本ステップは、「目標設定」「プロセスの管理」「結果の評価」の三つで構成される。著者は、それぞれのステップに於けるポイントを幾つも掲げて細かく解説をする。
自己目標管理と言っても、自分一人で進めるものではない。管理者である上司と自らとでの目標設定から始まる。
ビジョン、ミッション、バリュー、全社目標、全社方針、部門目標、部門方針を上司とコミュニケーションを取って共有し、個人と組織の成長につながる定量的と定性的な目標を設定する。そして、目標達成の為の段階を踏んでいくのである。
多くの人は変化を避けて今の状態(コンフォートゾーン)に留まりがちだが、それでは大きな成長は望めない。コンフォートゾーンを脱し、自らが変化を起こし新たなことに挑戦しようとする状態(ストレッチゾーン)をつくることが大きな成長につながる。そのシフトチェンジの為に役に立つ考え方は、ドラッカーが唱える「人は貢献を通じて成長する」ということだと著者は訴える。
そして、その実現の為には管理職による部下への動機付けと、その後のモチベーションをキープさせる様にフォローすることも必須なのである。
徹底的にかみくだいた「自己目標管理」ドラッカーが本来伝えたかった目標管理
作者: 二瓶正之
発売日:2023年3月20日
メディア:単行本