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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】逃げちゃダメな場所なんてない。居場所は自分で選択できる。『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』

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2017年11月、著者はがん告知を受けた。
そしてその年の12月、著者はブログに本心を綴った。「自分の人生は幸せだった」と。わざわざことばにして書いたのは、周囲の人たちへの牽制だった。

著者は3年間という余命宣告を受けた。
これからの3年間、自分なりに前を向いて生きていこうとしているというのに、周囲から「かわいそう」と言われ、憐れみの目で見られる。その目がどんなに鬱陶しく、失礼で邪魔なことか。だから思いの丈をブログに綴った。

そうしてブログでがんを公表すると、応援や批判メッセージに混じって、「感謝」のことばが多いことに著者は驚いた。感謝を述べる彼らに共通するのは、主語が「わたし」であることだった。そして気付いた。「そうか、みんな話を聞いて欲しかったのか。」と。

そこには、誰にも言えない苦しみを抱えている人が多くいた。

著者は彼ら一人ひとりに、丁寧に対応した。彼らの話を聞いて、自費出版でもいいから本を出そうと決めた。その結果出来上がったのが本書である。

そしてそれは正義感による行為ではなく、がん患者に限らない、「こころが蝕まれていくプロセス」を知りたいという好奇心による行動だった。

辛い放射線治療が終わり、ようやく歩けるようになった著者は、再びカメラを構え、旅に出た。

その旅をして気付いたこと。
苦しむ彼ら彼女らに共通すること、生き辛さの根底にあるのは、人間関係であり、「家族」だった。さまざまな立場の人が抱える生きづらさの原因をたどっていくと、ほぼ間違いなく親子関係に行き着いたそうだ。

生きるとは、「ありたい自分を選ぶこと」だ。「家族」だって、自分で選んでいい。もしも改善の余地がない関係だったら、たとえ親子であっても、その関係を断ち切ってかまわないと、著者は今思うそうだ。

気の合う人が周りにいないと嘆く人が多くいるけれど、それも自分が選んだ結果なのだと思う。我慢して時を過ごしても何一つ残らない。自分にとって楽しいことは必ずある。それを探すことが人生なのではないだろうか。

そしてこれだけ多くの傷ついた人たちがいるということは、傷つけた人たちがいる、ということを誰しもが忘れてはいけないのだろう。

だけど想像力のない人間は、自分が人を傷つけていることに気づかない。むしろ彼らにとっては善意や正義感による行動や発言だったりするから、余計にタチが悪い。だからこそ、付き合う人は自分で選択するべきなのだろう。

正直かなり重く苦しい内容の本なので、読中はきついし、読後も心にずっしりとしたものが残る。評者はしばらく引きずりそうだ。けれどきっと、誰もが自分の人生を考えるきっかけになる本だと思う。

今現在生きづらさを抱えている人はもちろん、逆に、生きづらいと言う人の気持ちが理解できない、そんなのは甘えだ、と思っている人にも、是非読んでもらいたい。

 

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。