著者は去る6月6日の朝、最後まで病と戦い亡くなった。痛みに耐え、携帯を持つことも辛いはずなのにTwitterやnoteに想いを綴り、大学のオンライン授業も病室で参加し、体が衰弱しても歩行訓練に挑み未来のために前向きだった。
そんな著者が自分に残された可能性を選択し挑戦した日々の記録だ。死の恐怖と戦っていたはずなのに最後まで諦めない姿に、きっと良くなると皆んな願っていた。
本書では、死生観について考えさせられた。今健康な人でも身近な人の死や震災などで直面することがあるかもしれない。実は誰しもが明日死ぬかもしれないのだ。変わらぬ日常が明日もやってくのが当たり前で疑いもしなかった。でも、これは全ての人に言えるのだ。
"生きたいように生きる。それが叶う時代、叶う国に生きている。そのことを嚙みしめなければならない。はっとした。もし、本当に死ぬことになったら。俺はそれでも最期の一瞬まで、生きたいように生きて死にたい。"
著者以外の生と死の狭間のエピソードもいくつか登場する。生きることは理不尽な形で突然世界が変わることもある。著者はそんな人達の思いの分も生きようと誓い、私たちにその姿を見せてくれた。
ハタチという若さで自分に訪れる「その日」最後の日を覚悟する。著書のタイトル『「がんになって良かった」と言いたい』はきっと彼の生きる願いであり、"この世に生きているということが、どれほど素晴らしいかということについて、これだけの経験をしたのに、まだ何も分かっちゃいない。"僕はおそらく、とんでもない力によって生かされている。"と中盤に書かれている。
一見「がん」は好天的には捉えられないが、その事で得られた彼の素晴らしい経験が著者を通して読者へのギフトへとなるだろう。私は丁度仕事で「命」について考える機会があった。迷いがあったが
私らしく生き、今当たり前のように生きていること、選択出来る日々に感謝したいと気付かされた1冊だ。
きっと今感じたことは少しづつ薄まり私も日常へ戻っていくだろう。死に直面しなくても今を悔いのないように歩み明日を新しくスタートさせるためにも、命をかけて彼が残した生きた証を忘れないで行きたいし、みんなにも届いて欲しいと願います。