本書は、アフリカで起業し、ガーナ初のオンラインショッピングサイトが立ち上がろうかと言う矢先に舌がんを患った著者が、帰国するところから始まる。
術後、少しゆっくりとしたらガーナへ戻ろうと思っていたものの、転移の可能性が高く、頻繁な通院が必要であったため、日本に拠点を移さざなくなる。
常にベストを尽くして生きるのが当然だと思って生きてきた著者は、そんな気の張った生き方では、気づかぬうちに心身に負担をかけてしまう。そんな生活は続けることはできない。つまりサスティナブル(持続可能)ではない、と考えが至り、舌がんは体からのSOSだったのかもしれないとも思う様になる。
いきなりの方向転換を余儀なくされた著者は、がんの再発予防のために体に取り入れるものに注意を払うなかで知った、ガーナでは「奇跡の木」と呼ばれるモリンガという植物を元にした商品を輸入販売することを思い立つ。
第1章から第3章までは、モリンガビジネスについて、その立ち上げ、本当のオーガニックについて、商品化に関して如何にしてガーナと日本間での役割を決めたか、日本の顧客の広め方とその関係性などが語られ、そのなかで、モリンガに関してのあれこと併せて、サスティナブルに関することについても度々表現されていく。
と、ここまでは、同じくBtoDビジネスを手掛ける私にとって共感を得るところはありつつも、なんだかんだ言ってモリンガビジネスの紹介の本なんだな、と思っていた。そして、サスティナブルという言葉も無理に多用されている様にも感じされていたのだが、第4章以降はその様相がどんどんと違っていく。
幼少時代からを振り返り、恵まれてるとは言えなかった家庭環境、就職、転職、タイへの海外勤務、MBA取得のためにオランダへと渡ってビジネススクールへ入学、そこで出会ったガーナ人と卒業後にガーナで起業するまでの第4章。
そして第5章では、アフリカでの生活の中で学んだこと、それによって現れた著者の心境の変化が描かれ、俄然面白くなってくる。
物質的には、日本に比べれば「何も無い」アフリカという地で、著者の心は却って豊かに、楽になっていくのだった。
生きている、今ここにいることに意味があるのだと。
サステイナブル・ライフ
アフリカで学んだ自分も社会もすり減らない生き方
作者:大山 知春
発売日:2021年4月1日
メディア:単行本