『新・装幀談義』著者:菊池 信義(白水社、2008/3/1)
装幀・装丁・装釘・装訂。全て「そうてい」と読み、文章に表紙やカバーをつけ、外形を整えることをいう。本書はこれまで1万冊以上の装幀を担当してきた装幀家の菊池氏による装幀についての本である。また、本書は1990年に発売された『装幀談義』の続編となっている。
『装幀談義』書評→https://goo.gl/DMD5fC
ところで冒頭にあげたが、装幀という言葉にはなぜこれほど多くの漢字があるのだろうか?。おそらく装幀家は本、そして言葉と毎日向き合う職業だからこそ、色々な漢字があてがわれて来たのだろう。そんな装幀家の菊池氏も同様に本に関する言葉をいくつも本書の中であげている。
“本は人の心をつくる道具”
“本というものはつぼみであり、読んだ人の数だけ花が咲く”
“本は手の中ではじまる劇”
どれも、菊池氏が30年間装幀家として、本と向き合った結果生まれた言葉なのであろう。本で人の心が作られ、何かがはじまる。良い本は人の心をつくり、人の幅を広げそして社会をも変える力があるという。
また、菊池氏は装幀家とは「本を初めて評する人」と、表現している。作者・編集者以外で初めて本を読むのが装幀家だからだ。そして、装幀の役割は「本を目にした人の心を読者へといざなうこと」だという。
装幀は単なるデザインではない、著者の過去の作品から著者のイメージと合う装幀を、類似の本と比較し著作の位置付けからデザインをイメージし作る。本書では菊池氏が何を考えどのように装幀を行ってきたかのネタバレとともにいくつもの装幀が写真とともに紹介されている。
また本書の装幀は非常にシンプル。そして手に取ると非常に触り心地が良い材質となっている。昨今電子書籍柄流行りつつあるが、このような「情報」としての本でない、「作品」としての本、「もの」としての本はこれからの時代こそチャンスがあるのではなかろうか。また、本書を1ページめくるとそこには「著者自装」と書かれてあった。
「本を目にした人の心を読者へといざなうこと」が装幀であるように、「書評を読んだ人の心を読者へといざなうこと」が書評であると思う。この書評をもとに新たな花が咲けば幸いである。