HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】早目の準備が肝心『老後資産はドルで増やしなさい』

著者は、外資系の証券会社を20年間渡り歩いた日本人女性。
現在は、将来のお金に不安を抱いている方々に、お金の管理や増やし方について教える学校を主催するお金の先生。

2019年に世間をざわつかせた「老後2000万円問題」、老後資金が足りなくなる根拠は下記の通り。
年金の受け取り額22万1227円、月の支出27万円。
不足する月額5万円×12ヵ月=年間60万円。
65歳で定年退職したあと、100歳まで生きると60万円×35年=2100万円。
「毎月不足する5万円は自助努力で何とかしてください」

著者は、以下2つの理由により倍の老後資金を準備することを推奨している。
①    総務省の公表している支出額に遊興費が含まれていない上に全国平均を採用しているため、都会で生活する人はそれ以上の生活費が必要となる。
②    月22万円の年金を受給できる人は、現役時代に相当な高所得者であり、厚生年金の平均受給額は男性17万円、女性11万円弱。
現状と乖離している金額であるため、現実はさらに厳しくなる。

これに対抗するための対策は以下の2つ
①    日本年金機構から送付されてくる「ねんきん定期便」で自分の受給できる年額を確認する。
②    不足分を補うために、できるだけ早く「米ドル建て終身保険に加入する」。
毎年、保険料控除を使うことで支払う税金を軽減しながら、基軸通貨である米ドルで資産を形成する。

本書では、米ドルに資産を預ける理由はもちろん、引き出すとき、ドル安だった場合の考え方などが分かりやすい言葉で書かれている。
個人的に読み応えがあったのが、4章「何が為替を動かすのか」である。
為替の仕組み、価格が変動する要因、金利と為替の関係など、外国為替の仕組みがとても理解しやすかった。

老後の準備は早ければ早いほど、有利にことが運ぶ。
まずは、現状を知るためにも一読し、対処する方法を頭に入れておきたいものである。

作  者:浦井 麻美
発売日:2021年3月1日
メディア: かんき出版

 

 

【書評】ノーベル文学賞、発表ほやほや!『全ての白いものたちの』

先週、2024年10月、韓国で初のノーベル文学賞作家が誕生しました。日本では村上春樹の受賞が長年期待されてきただけに、隣国のライバルである韓国人の受賞は、私たち日本人にとっていくらかモヤる結果だったと推察されます。SNS上では急に村上春樹の作品批判が始まり、作家志望者としては胸が苦しくなりました。
しかし、作品の批判はむしろ作家の存在感を照らすので、村上作品はしばらくこの逆風の中で読まれるでしょうし、村上氏がその現象にインスパイアされる流れを私は期待します。

ハン・ガンの受賞を聞いたとき、私個人としては、韓流POP文化が世界のエンタメを席巻していることと合点が行き、答え合わせができたような気持ちになりました。また、同じアジア人女性として勇気づけられました。ここ最近、ノーベル文学賞は女性の受賞が続いています。私もぜひそれに続きたいです、笑。

本書を手にとったものの、どなたかの書評を読んで、既に満足してしまった感があり、すぐには、入ってゆけませんでした。でもさ、購入したから、読んでなくても書評を書くことを許して欲しい。これからはさ、一を聞いて十を知っちゃうスピード感が必要な時代なんだし、私は「積読書評」を推進していきたいと勝手に思っています。
読むより、積読が大事じゃない?!

白にすら、なる前の。

購入は、読むことよりも、作家にコミットしていると思うから。

===

って、書いた後に、ご本人のノーベル賞受賞インタビュー記事を読み、彼女が子供の頃から韓国文学に囲まれて育ち、またこの作品が自伝的小説であることを知りました。そしてこの本の題材は、日本で今、ケアの声が広がりはじめたばかりの「周産期喪失(ペリネイタルロス)」です。これらの認識を踏まえて、もう一度スタートをきって、読んでみました。

「ドア」は要らない。
「おくるみ」から始めればいい。
その次に「私」。
私なら、そういう風に置く。

初学者の、初見の、感想。

これから、ゆっくり滋養(あじ)わいながら、読みたい作品です。

 

 

【書評】人生を好転させる、一瞬で相手を引き込む『奇跡の声トレ』

著者は、累計4万人の受講生の声と人生を好転させてきたボイストレーニングスクール代表。
「声を変えるだけで、人生が変わるの?」と思う方もいると思うが、声が変わると間違いなく人生は変わる。
蚊の鳴くような声で高額商品を売る営業マンが、やり手営業マンの話し方に変わるだけで、成約率が高まり収入も高くなる。つまり、人生が変わるのである。
そもそも、アメリカ大統領に立候補する人でボソボソと話す人はいない。
大衆は力強い声と共に発せられる言葉に感銘を受けるから、候補者に票を投じるのである。

本書は、冒頭に読者の声のタイプを3つに分け、本編でタイプ別の問題点と解決策を提示している。
例えば、「虚弱声タイプ」の人は、腹式呼吸を意識することで、遠くへ通る声を意識して使うことで説得力のある声に変える。
「もごもご声タイプ」の人は、表情筋や舌を鍛えて、噛まずに話せるようにする。
「不愛想声タイプ」の人は、一本調子で話すのではなく、言葉に緩急や大きさを持たせることで、聞きやすくする。

人と人がコミュニケーションを図る際、相手に与える影響を数値化した“メラビアンの法則”によると、「見た目・表情・しぐさ」55%に対して、誰もが気にしている「話す内容」は7%。
多くのビジネスパーソンが、第一印象を良くするために服装や見た目に気を使っているが、“メラビアンの法則”で「声の質・口調」の割合は38%。
ライバルと差をつけるのに、声を磨くことが効率のよい改善策であることがわかる。
こっそりと一読して差をつけたいものである。

作  者:秋竹 朋子
発売日:2024年9月26日
メディア:Gakken

 

 

【書評】京都の洛中ではこう伝える!?『エレガントな毒の吐き方)』

京都の伝え方で、近所のピアノが毎日聞こえてくる時に「ピアノ上達しましたね。」なんて伝えます。
ピアノがうるさいのですが、直接はっきり伝えません。

家を買って、これからもローンが長いのであまり隣と仲を悪くするのが嫌で伝えられない。
そんな時には、京都式の伝え方を学べばいいんですよ。

京都のいけず文化、嫌味を伝える文化は同じ関西でも嫌われることもあるんですが、本書を読めば理由はわかります。(※嫌われる理由もわかります)
京都の嫌味はにこりと笑顔で相手の心に届いて離れません。もし、伝わらないのであれば、後で笑われることになります。(だから嫌いな人もいます。)本書では、脳科学者の中野信子が京都のいけず文化をわかりやすく解説しています。なるほどなぁ・・。でも私も笑われているんだろうなぁと。納得してました。

京都の文化的な背景からなぜ今、京都のいけず文化を本にしたのかを解説してますが、ロンパ王が流行っている中での真反対のマーケティングをしている本書は書店で思わず手に取ってしまいました。
考え方が分かれば、今までの嫌味を思い出せますね。反省もできます。
うーん、と一汗かきながら思い出を堪能しました。

本書は、コミュニケーションをしっかりととる実業家には必要な内容です。もっと早く知っていればと。
著者はテレビでもよく見る「中野信子先生」です。脳科学者です。YouTubeでも検索したら出るので、私がここで書かなくても大丈夫な知名度です。脳科学者の視点で解説するのですが、思わず2度ミスるような話かと思いきや、普通の話をされるタイプです。お時間がある方は一度試聴をお勧めします。ちなみに、丸と三角のメガネをかけた方といい、科学者でテレビに出られる方は、結論がまともですね。話始めが驚きますが。

昨今のコミュニケーションが取れずに家出している少年少女たちに学校の授業としてお届けしてほしい。まず、腹が立っても誉めるなんてしたことない人も多いでしょう。受験勉強には必要ないですが、学校教育には必要な知識と技術です。本書を読んでコミュニケーションを活発化させたいので、本書でのスローリーディングをぜひ。

 

 

【書評】日本文学の権威としての『坊ちゃん』

こんなものを子どものうちから読ませるなんて、日本の教育者はばかなんだろうか。こんなものから学ぶから、「女には学がない方が尊い」だとか、「田舎はださい」だとか、自称インテリたちの間で価値観が醸成され続けてきたのではないか。教育学部附属の生徒が実習の先生をいびる例が後をたたなかったのも、本の読み過ぎでばかになっていることの好例なのではないか?

そもそも、坪内逍遥の『小説神髄』で必死の小説擁護が唱えられる以前には、小説は子どもに読ませるべきでないと言われていた。資本主義における、刺激的で新しいメディアは、ーー漫画もテレビも、ゲームもYouTubeも、「教育によくない」と言われながらも、寄り切って社会に受け入れられてきた。

もしも、若いうちから小説を読みたいのなら、先に小説、すくなくとも物語を書いてみることだ。そしたら作者がどんな計算をもって書いているかが少しわかるだろう。小説を読んで得られた感情のほとんどは、緻密に計算された、させられ体験でしかない。自分がたぶらかされ、洗脳されそうになっていることに、いつもハリセンボンみたいに針をおっ立てながら読むことだ。殊、自己の体験が少なく、批判的能力がない子どものうちから、顔がお札になったり、ノーベル文学賞を貰っているような文学者の小説を、ありがたかって読むのは危険が伴うと思う。物語に酔いしれるって素敵なことではあるけれど…。

誤解は新たな誤解を産み、言葉は新たな思考回路を産み出し、私達の価値観は進化しているように見えて、ある側面では、訳のわからない所に着地しているようにも思える。私たちの価値観や美意識、あるいは本能さえも、言葉によって更新されつづけている。
こんな時代に、変わらないものなんてない。あるとすればそれは、小説に書いてあることなんかじゃなくて、石や、樹や、水だ。ある時代において先端にいた文学者を神格化するのは、程々にしておいた方がいい。私たちをたぶらかす、悪魔である。しかもどうせただの「坊ちゃん」である。

 

 

【書評】普遍性を感じる『現代語訳 学問のすすめ』

約150年前の明治に70万部も売れた名著を教育学者の斉藤孝さんが現代語訳され、スッと入ってくる内容です。
訳者は「学問のすすめ」は現代を生きる我々にも読む意義が十分にあると力説されてます。

まず男尊女卑の色濃い明治下で福澤諭吉は女性に不公平な社会を徹底的に不合理な事だと批判し、現代のSDGs的な情勢を見極める目を持ってるところは意義深いです。

またAIなどの技術革新で仕事しなくても済むような現代を福澤流に言えば「衣食住を得るだけでは蟻と同じ」とバッサリ斬り「独立の気概ない者は、必ず人に頼るようになり、その人を忘れ、へつらうようになる」と説き、生活維持するだけではダメで社会参加の意識は必要なことを明言してます。

さらに現代のSNS社会において福澤流に言えば「交際」ということになり「関心を様々にもち偏らず色んな人から刺激を受けながら、多方面で人と接しよう」と説いているのは、まさにHIUの行動指針に似た内容と言えます。

最後に翻訳者斉藤孝さんの解説として福澤諭吉の言葉は、学校の教科書とは違い一個人が責任をもって自分の声、体ごとで表現されている。また温かさと迫力があり親しみがもてる文体は権威を振りかざさず、美辞麗句を嫌い論理的。さらに人柄はざっくりとして快活、保身や嫉妬なく、是々非々で物事を考える本質を見極める「筋力」があると評してます。

読めば読むほど現代版ビジネス書としても捉えられる一冊で、数ある堀江さん本にも通じる所が随所にあり普遍性を感じさせます。

発売日:2009/02/10
著者:福澤諭吉
訳者:斉藤孝
筑摩書房

 

 

 

【書評】全力で生きなくっちゃ -  『無人島のふたり(山本文緒)』

末期の膵臓癌と診断された著者の亡くなるまでの5ヶ月弱の日々の日記。
素直な言葉で綴られているからこそ吸い込まれるように一気読みしてしてしまった。そして凹んだ。

人間の「生」と「死」がリアルに伝わってきて感情揺さぶられた。カフェで読んでたら泣きそうになってしまって少し変な人になってしまったかもしれない。
でも周りが見えなくなるほど全身で著者の生きた証を感じられた気がする。

本著は残りのページと残りの命がイコールなので、読み進めるほどに病状は悪くなり死へと向かっていく。
私の受け取った印象としては3段階を経て死へ向かっていくように感じた。
「動揺/不安」→「受容」→「意識の錯乱/混沌」

特にショックだったのは(全てショックだったけど)、最後の錯乱/混沌期だ。
痛い、辛いより良いのかもしれないけれど、どんどん人間としての尊厳がなくなっていく気がしてショックだった。
人間としての尊厳なんて考えたことがなかったけど、美味しいコーヒーを飲んでホッとしたり、この本を読んでしょんぼりしたりも全て人間だから感じるのだなぁと。。

著者の山本文緒さん、
実は本著が初めて読んだ作品でした。もう亡くなっておられますが、他の作品も読んでみたいと思います。

 

 

【書評】ディックらしいカオスっぷり満載のSF小説。『火星のタイム・スリップ』

大昔のSF小説では、近未来には火星くらいには地球人も到達していて、植民地にしているだろうというのがいかにも当たり前的だった。
1964年発表の本作の舞台も火星であり、どうやって環境を整備したかは語られはしないが、普通に人類が大気の下に暮らしている世界だ。
優れたアイデア作家であるディックらしく、その設定は突飛というか、精神分裂病患者の中には、健常者とは異なる時間の進行の中で生きている者がおり、さらにその中には過去や未来を行き来できる者がいるとする学説がある、という前提が作品を支えている。
火星の或る街の実力者アーニイ・コットは、分裂病の上に自閉症で他人に心を開かない少年を利用することにした。
未来を予見して儲けようとしたのだが、それを実現させる装置を作る前に、地球から来た山師に先を越されて大儲けの機会を失ってしまった為に、今度は過去に戻ってやろうと考える。
しかし、少年の特殊能力は、単純なタイム・トリップではなかった。

ディックの作品は様々な登場人物たちが割と均等に描かれ、多層的に展開するものが多い。
本作も同様で、アーニイの企みに巻き込まれていく人々にもそれぞれドラマがあって、誰が主人公とかというのがはっきりしなかったりするし、途中まで何を描こうとしているのか判じ得ないまま読み進めることになる。
しかも、本作ではもう一人の主要人物であるジャック・ボーレンが、少年の影響で過去に経験した分裂病が再発しかけ、この二人の分裂病者による幻想が、物語を現実と悪夢が入り混ざった混沌とした世界にするので、なかなか複雑、そしておどろおどろしい感覚に包まれた独特の世界観を持っている。
評価も高く、読後感はスッキリとしたものではないが面白かった。
ちょっと翻訳がイマイチという感アリなのが残念。

火星のタイム・スリップ
作者: フィリップ・K・ディック
発売日:1980年6月30日
メディア:文庫本 

 

 

【書評】人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果てを描く『ともぐい』

明治後期、人里離れた山中で犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪は、ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つける。男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたと言うが…。
人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果てはーーー。
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舞台は明治後期の北海道。
主人公の熊爪は人と関わることを嫌い、仕留めた鹿や熊の肉や毛皮、山菜などを売りにいく時のみ、下界の町に足を運ぶ。

厳しい大自然の中での命のやり取り。
殺るか、殺られるか。
それが自然の摂理なのだ。

俗世から限りなく解脱していた生きてきた熊爪だが、自身の怪我や、ごく限られた人間関係の変化、政情の変化により、生きることへの葛藤を持ち始める。

熊爪はやがて己の死場所を求めるようになる。

と同時に、人の温もりが欲しい、欲情を満たしたいといった想いが湧き溢れてくる。

この山での最強熊である「赤毛」との死闘、目が不自由な女「陽子」とのまぐわい。

『死に損ね、かといって生き損ね....。ならば己は人間ではない。
人間のなりをしながら最早違う生き物、半端者だ』

熊爪の壮絶な人生を描いた1冊。
クライマックスでの行動は理解が全くできず、ただただ唖然とした。

河崎秋子さん作の第170回直木三十五賞受賞作品。獣臭く、血の臭いがした。

軽い気持ちで読みはじめるのはNG。読む人は気合い入れて読むべし!

ともぐい
作者:河崎秋子
発行:2023年11月20日
メディア:小説

 

ともぐい

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【書評】 舞台は北海道。 200億円を超える超巨額不動産詐欺の行方は⁇ 『地面師たち -ファイナル•ベッツ-』

Netflixで話題の地面師たち。
映像よりも活字派ということもあり、こちらの小説を読書。

IR誘致を見込んだ苫小牧の不動産詐欺計画。しかし、この詐欺計画は苫小牧でのIR誘致が難しいと判断するや、すぐに白紙となる。

大物地面師•ハリソン山中の新たな標的は釧路。“北極海航路開通による釧路の発展“と称し、シンガポールの財閥の御曹司ケビンがターゲットになる。200億円を超える、かつてない高額詐欺計画の行方は。。。

ニートラップあり、親友の裏切りあり、読んでいて人間不信になりそうだった。

面白かったので、
Netflixで配信中のの地面師たちも観てみようと思います。

地面師たち-ファイナル•ベッツ-
作者:新庄耕
発売日:2024年7月26日
メディア:文庫本