HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】新時代の人の動かし方『世界のトップコンサルが使う 秒速で人が動く数字活用術』

 

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時間をかけて信頼関係を築くなんてもう古い。大切なのは論理と数字だ。そう語る著者が、どのように数字を活用して相手に動いてもらうのか、過去の自分の経験をもとにこの一冊にまとめている。

人を動かすためには、相手の心に刺さる説明をすること。その方法として、危機感を煽ることはとても有効である。数字を使って周囲との差や過去との比較をグラフで見せれば、あなたが置かれた現状はこうで、このまま動かなければまずい、ということを相手に気づかせることができる。危機感を感じると人は簡単に動くのだ。

しかし、単に部下を動かすだけではだめである。部下が間違った方向に進まないように指示してあげることも上司の役目で、その時も数字は非常に有効だ。過去の業績を要素分解することで、何が足りてて何が足りていないのかが明らかになり、論理的に部下を正しい方向へと誘導することができる。

私も職場において、数多くの数字を扱っている。今まではより美しく、より見やすいようにとデータをまとめていただけで、相手の心に語り掛けるという点は意識すらしていなかった。この本で学んだ数字の使い方は明日にでも使える方法であり、早く実践したい気持ちだ。

情報があふれ、多くの数字が行き交う現代。その数字を生かすも殺すもあなた次第である。

 

 

【書評】グロくてカオスな女の世界、とくとご覧あれ!『かわいそうだね?』

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「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」の二編を収録。どちらもこれでもか!というくらいに女の世界を緻密に描く。女性は大いに共感し、心のもやもやを言語化できる喜びを味わい、男性は驚きと恐怖を感じるかもしれない。

表題作の「かわいそうだね?」は、元彼氏の隆大の家に居候する、求職中の元彼女アキヨと、隆大の現恋人である樹理恵の戦いを描く。

設定からしてもうカオスだ。週刊誌連載時から話題を呼んだというのも納得である。最初はなんとかして自分を納得させようと努めていた樹理恵だったが、とうとう我慢の限界がくる。そして元彼女と同棲中の彼氏の家へと突撃する。

そこからはもう、抱腹絶倒である。本能をむき出しにした女は怖くて面白い。野生に帰った女にとってはもはや男なんてどうでもいい存在になる。タイトルの「かわいそうだね?」の意味を、是非本作から探って楽しんで欲しい。

もやもやとした内容ながらも、最後は明るく痛快で、喜劇として楽しめる作品である。それにしても人間なんて矛盾の塊だから、人を愛することってほんとに難しい。もはや神業な気がする。

二作目の「亜美ちゃんは美人」は、
”さかきちゃんは美人。でも亜美ちゃんはもっと美人。”という文からはじまる。
完璧な容姿をもち、どこへ行っても人気者になってしまう亜美ちゃんと、いつも彼女の影に霞んでしまうさかきちゃん。さかきちゃんは内心亜美ちゃんのことをうっとうしく感じ、嫌いだとさえ思っている。けれどなぜか、高校ではじめて出会った時から、亜美ちゃんはさかきちゃんを心から慕っていて、決してそばを離れようとはしない。

そんな二人の関係性が、多感な少女の時代から大人へと成長していく中でどのように変化していくのか。著者の見事な心理描写と情景描写によって、読者もさかきちゃんと亜美ちゃんそれぞれの目線で、女たちのカオスな世界に没入できる。そして最後は他の作品にはない感動が待っている。

これは本当に読んで欲しい作品だ。久しぶりにものすごく感動してしまった。女同士の複雑な人間関係を見事に描いていて、納得させられる。評者は「なるほど」と思わずため息をついてしまった。

仲良し女子二人組の実態。本音と建前の乖離。高校生女子グループの形なきカースト制。妬み。ひがみ。そして人気者の孤独。女は本音を隠すのがうまい。だから本当の意味で理解し合うにはとても時間と体力が必要なのだ。

どちらも100ページ前後の短い物語なのに、これだけ読者の心をうごかす著者の力量に感服する。こういう、心を揺さぶられる瞬間に出会いたくて、読書してるんだよなあと改めて気づく。とくに評者が気に入った、「亜美ちゃんは美人」はこれからも繰り返し何度も読みたい作品である。

 

かわいそうだね?

かわいそうだね?

 

 

【書評】さしあたる事柄のみをただ思え。過去は及ばず、未来は知られず。『ほんとうの心の力』

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天は自ら助くる者を助く。
たとえば、右見れば繚乱たる花園があり、左見ればゴミや糞がごろごろと転がっている。右見てれば、目にうるわしい花が己をたのしませてくれるのに、左ばかり向いていて、なんてこの世は醜いもんだと考えてる奴があったら、その人間を褒めるかい?

自分が嫌な運命のなかに生きてる場合でも、注意がもっと良い運命の方に振り向けられていれば、たとえどんな運命のなかにいたってそれを気にしなくなる。
本当の幸福が味わいんだろ?

いつもニコニコしている人に病弱の人がいますか?笑顔で悲観している人や、その精神を消極的にしている人がいますか?笑顔の人のそばにいると、何となくチャームされ、多少の悩みや悲しみがあっても忘れてしまうでしょう。
笑いは無上の強壮剤であり、また開運剤なんです。

倦まず弛まず屈せず。
実際に歩き出す。実行にうつせ。
悩みは無意味なもの。
すべてのことに感謝しよう。
たった一人でも正当は正当。
みだりに生きない。

これらの言葉を聞いて、貴方はどの様に捉えられるでしょう。綺麗事だと感じるでしょうか。
私にとっては、中村天風は我が心を支えてくれた、唯一無二の存在であると言えます。
その、常に積極的態度で生きることを掲げる天風哲学は、自らの体験によって生まれたもので、決して宗教などではありません。
では、強く生きるには一体どうすれば良いのか。
本書に限らず、是非一度著者の本を手に取って、ご自身で感じ取っていただきたいと思います。

すべては心が生み出す。
あなた方の心のなかの思い方、考え方が、あなた達を現在あるがごときあなた方にしてるんだ。

 

ほんとうの心の力

ほんとうの心の力

 

 

【書評】会議に白熱するような議論は不要!『ゼロから学べる!ファシリテーション超技術』

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ファシリテーターとは、ただ会議を進行する人ではなく、”場づくりを演出する人”のことである。会議をデザインし、会議をリードし、参加者にとって心地よい場づくりをすることが求められる。みんなの頭の中の情報をいかに引き出せるか。安心安全の場をいかに演出するかが重要になる。

そもそも、いったい何が「いい会議」なのだろうか。
「実のある会議ほど、ヒートアップするものだ」と思い込んでいる人がいるがそれは大きな勘違いである。会議に白熱するような議論は不要なのだ。ではヒートアップするときとはどんなときだろうか。

それは”自分の意見の正しさ”を示したいときではないだろうか。勝ち負けや正誤に話がすり変わると、建設的な議論からはどんどん離れていく。

会議がだらだらと長引いたり、結局何の成果も出なかったりする原因は、「いきなり、問題の解決策をみつけようとすること」にある。そのせいで原因と解決策がごちゃまぜになり会議は”ごった煮”の様相を呈する。

 問題→原因の洗い出し→解決策の話し合い

これが正しい順番である。つまり、「問題」に対する解決策ではなく「原因」に対する解決策を考えることが会議を成功に導く大前提なのだ。

問題解決ステップを具体的に並べると、

 問題発見→原因分析→解決策の選定→計画の策定

となる。そしてこれらは絶対に”混ぜるな危険”である。だから会議を正しい流れに導くファシリテーターの存在が必要不可欠なのだ。

本書では、それぞれのステップにおける具体的な手法やポイントが詳しく丁寧に解説されている。そして全体を通して著者がとても大切にしていることは、”会議における雰囲気作り”である。

ファシリテーターにはどこまでも「中立的である」ことが求められる。そのためには、参加メンバーを100%信じ、受け入れ、尊重することが基本となる。会議において最も大事にしたいのは「メンバーの納得感」である。

そのためにはいったん個々の考えを認めること。そして考えのみならず「その人」自身も受け入れるようにする。ファシリテーターのそうした心がけが、”安心安全の場づくり”に繋がる。

 他者への関心、尊敬の念、
 それぞれの人に対する時の丁寧なコミュニケーション
 相手のことをしっかり思いやって喋ること

そしてこれらのことは人生におけるすべての場面で、一人ひとりが大切にすべきことではないだろうか。

「ファシリテーリョンを学ぶ」ということは「人間関係を学ぶ」ことにもつながる。むしろロジカルに学べるという点において、人間関係を諦めているような人ほど学ぶといいかもしれない。

 

ゼロから学べる! ファシリテーション超技術
 

 

【書評】メモの魔力で自分探し。『メモの魔力』

 

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冒頭からメモの大切や前田式のメモの書き方など、メモの話が多岐に渡ります。
後半は内容が一変して自己分析の話に飛躍していきます。自分が本当は何をしたいのか。
「自分探し」がキーワードになってきます。
巻末には自分を探すための質問1,000問。
と言う体育会系な付録までついています。

メモの取り方と言うよりも、思考の深め方を教えてくれています。何でもない日常の出来事からも、より多くの気づきを得ることが大切。そしてそこから新たな行動に移す事が最も大切。その足がかりになるのがメモです。

作品の終盤では、筆者の前田裕二さんの幼少のカミングアウトまで描かれています。
幼少期の頃からメモ魔で、夢中になってそれをやり続けた結果、大きな力に変化していった。connecting the dotsなエピソード。

自分探しにお勧めの書籍です。
最近悩んでいる人や自分が何をしたいのか分からない。そんな方はぜひ手に取って見てください。自分への問いが、自分を見つける最短の手段です。

前田裕二さんの印象としては穏やかで頭の良いイメージでした。書籍は後半に行くに従って前田さんの熱い思いが作品に乗り移り、まさに「魔力」。不安になっている人に対して強く背中を押してくれる作品です。

 

メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

 

 

【書評】神様…私はタピオカが好きなのに、タピオカ屋さんが減っているんですけど…『人生に悩んだから聖書に相談してみた』

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コミカル聖書決定版。キリスト的読み易さ。そして神様の悪魔的優しさ。

なにが悪魔的優しさかというと「SNSで映える写真を撮りたいのですが…」という質問にまで神様が答えているからです。

一番重要なことを先に伝えるとこの本の巻末にはキリスト教への勧誘も洗脳も誘導する宣伝も何もありませんので安心してください。
キリスト教を親しみやすく』をモットーの著者が悩める現代人のために書いたコミカル聖書になります。

6人に1人はうつ病になるといわれている現代人。
その悩みの解決の糸口を聖書で見つけていくのが本書になります。
そもそも悩みというものは人生において障害物なのか?という疑問に対し聖書では「悩みは幸福への道である」と言い換えます。

悩みは幸福への道であり、悩みを幸福に変換できるかが生きていくうえで大事であると伝えます。
聖書は『人間の取扱説明書』であり 」『悩みを幸福に転換する考え方』の書物になります。

読者の皆様に神の恵みがあらんことを・・

 

 

【書評】やりがい搾取系企業の行く末は?『「辞める人・ぶらさがる人・潰れる人」~さて、どうする?~』

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本書は、医師であり、経営コンサルタントの著者が、数多くの企業の社員や組織管理者の声を聞き、そこから得られた情報を経営学、医学、心理学の専門知識をもとに、組織の問題点を科学的に分析する。

多くの組織がかかえる人材の悩み。退職者が相次ぐ組織を例にあげ、ストレスに弱い社員が多い『砂の城系』、働きがいにより、業務負荷をごまかす『やりがい搾取系』、働きやすさを過度に追求する『ぬるま湯系』に分類し、その解説と対策がまとめられている。

さらに、社員の定着度と満足度を表す「パラダイス」「荒野」「ステップ」「ぶら下がり」という「組織活性4分類」により、自分が所属する組織が現在どのような状況にあるのかチェックできるのだ。

このようにして、対応すべき過大を明確にし、効率よく解決する。それが、本書の活用方法だそうだ。

評者の勤める企業は、トップが高齢ということや、行政にかかわる特殊な仕事という理由もあるのか、新しいことを取り入れることが難しく、人材も定着しない。

結果として少人数で運営する社会貢献性の高い事業であるため、『やりがい搾取系』に属すのだろう。

ここ最近でも、長期勤務していた経理の人たちが業務から外れたことにより、企業のとんでもない経営状況が発覚した。よくこのような状況で会社が成り立っていたのかと不思議に思う。

会社の先行きは不透明。改善策を模索中。これまで、それほど悩みやストレスもなく過ごしてきたが、今後は好きなこと、楽しいことも継続できるかわからない。しかし、できるうちは、思う存分楽しもうと思う。

また、考え方を変えれば時間もでき、新たなことを始める機会ともなるのだろうか。このような折に、本書と出会ったのも、何かの縁なのかもしれない。

 

「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?

「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?

  • 作者:上村 紀夫
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【書評】絵本がもたらしてくれる”目覚めたまま見る夢”のなかで、子どもは確実に成長していく。『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』

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”植物はある日突然芽を出します。種を蒔いたことを忘れてしまうくらい、長い期間、土のなかで必要な水分と養分を吸収した種は、準備が整った瞬間、ひょっこりと芽を出します。そしてにょきにょきと生長を始めます。土のなかでじっとしている時間は、何も起きていないように見えて、大きなことが起きているのです。”

物語というのは、即効性がない。大人はいつも先が不安だから、つい焦ってしまい、子育てにおいてもすぐに役に立ちそうなものばかりを求めてしまう。早くから英語を学ばせようとしたり、とにかく読み書きができるようにと強制したり、学習ドリルなどたくさんの教材に手を伸ばしたりしがちである。

しかし本書の著者である齋藤孝氏は、なによりも絵本の読み聞かせの時間を作ってあげてほしいと語る。

強く勧めるのが、毎日15分の絵本の読み聞かせである。

子育てには「これをしておけば大丈夫」という明確な基準がないから、大人はいつも自信を持てなかったり、不安を抱えていたりする。そんな方に著者が明示してくれている基準が、

「読み聞かせ毎日15分」+「絵本100冊」
である。

100冊と聞いて「そんなに?」と驚くかもしれない。でも100冊はあくまで最低限のラインであり、理想をいえば200冊くらいはほしいのだという。

ある調査では家庭の蔵書数と子どもの学力は比例する、つまり本がたくさんある家庭の子どもほど学力が高いという結果が出ている。

そしてこの傾向は、絵本と子どもの心の育成についても同じことが言える。絵本がたくさん揃っていて、いつでも絵本の世界に手が届く環境が、子どもの想像力や創造力、好奇心を育んでいく。

絵本、それも繰り返して何度も読みたい絵本が100冊あるのは、子どもが没入して体験できる”ワールド”が家庭に100あるのと同じことなのである。

0歳から6歳ぐらいまでの間に100もの絵本への”心の世界旅行”を体験できれば、子どもの心のなかはとても豊かになっていく。そしてそれは子どもが成長していくなかで、自分を支えてくれる貴重な財産となる。

そうして毎日15分、親子で絵本を楽しむ時間を持てば、子どもの「心」はしっかりと育つ。変化の時代にも、しなやかに自分の力を発揮できる本当に頭のいい子が育つ。そして大人は自信を持つこと。その自信が子どもの土台をつくる。

この基準を満たしていれば、他にあれこれ心配せずとも大丈夫だと、著者は自信を持って勧めている。

評者も子どもの頃、母が絵本を読み聞かせてくれる時間が最高に好きだった。「絵本読んで」とあまりに言うので、母からうっとおしがられるくらい、毎晩読み聞かせをせがむ子どもだった。読んでいる母の方が先に寝落ちしてしまう、なんてこともしばしばだった。

そしてその時間はまさに夢のような、至福の時間として記憶に残っている。もちろん、だから自分は頭がいい、なんて言うつもりは全くない。評者の周りは自分より賢い人だらけだ。だけど読み聞かせって、子どもの成長や人格形成に一体どんな影響を及ぼすのだろう?と純粋に疑問に思い、本書を手に取った。

頭がよくなったかどうかはともかく、母に絵本を読み聞かせてもらったことは、とても大切な記憶として、しっかりと心に残っている。その頃の絵本の世界でのドキドキワクワクした感動は、今でも鮮明に思い出せる貴重な財産である。

そして本書を読んで、もう一度懐かしい絵本の世界に触れたくなった。本書の中でも、大人が読んでも考えさせられる、おもしろそうな絵本がたくさん紹介されていたので、片っ端から手に入れて読んでみようと思う。

 

1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる

1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる

  • 作者:齋藤孝
  • 発売日: 2020/06/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【書評】どうせ人間なんて無意味な存在なんだから、神様に身を委ねてみれば?『人生に悩んだから「聖書」に相談してみた』

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人の脳は、放っておくと悪いことばかりを探し出す。つまり不幸になる。だから不平不満を募らせ、愚痴ばかり言っている人、不幸を嘆き続けている人というのは、幸せになる努力を怠っているということだ。彼らは考えているように見せかけて、実は何も考えていない。幸せとは権利でななく、義務なのである。

著者のMARO氏はクリスチャンである。しかし宗教って信仰していない人にとっては、ちょっと敬遠したくなる存在かもしれない。それも「神様」だとか言われると、「うげえ」と拒否反応を示したくなる気持ちは、とてもよくわかる。

だがこの本のコンセプトは「聖書で悩みを解決してみる」または「解決の糸口をつかんでみる」であり、「聖書について学ぶ」でもなければ「キリスト教を信じる」でもない。だからこの本を読んで「キリスト教に勧誘されちゃうんじゃないか」とか「洗脳されちゃうんじゃないか」といった心配はまったく無用である。

著者に言わせると、聖書とは神様が書いた「人間の取り扱い説明書」なんだとか。
だけど聖書って言葉が難解で、何を言っているのかよくわからないイメージがある。そんな私たちのために、著者はわかりやすい言葉に書き換えて聖書の言葉を教えてくれる。

本書の例をいくつかあげてみよう。

「主がよくしてくださったことを何一つ忘れるな」
気に入らない点を気にするよりも、気に入っている点をもっと押していったら?

「白髪は栄えの冠。それは正義の道に見出される。」
老いは神様から与えられる冠なんです。それを受け取らないのはもったいないです。

「あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、皆に仕える者になりなさい。あなたがたの間で先頭に立ちたいと思う者は、皆のしもべになりなさい。」
リーダーとして一番必要な資質は「人に仕えること」であり、リーダーの仕事とは仲間が最高のパフォーマンスを発揮するための環境を整えることだ。「召使い」に徹したときに、メンバーは心からあなたを尊敬し、あなたの望むパフォーマンスをしてくれるようになる。

「自分を知恵のある者と考えるな。主を恐れ、悪から遠ざかれ」
正義を実現したいなら「俺は正しい。だからお前らも正しくなれ」と自分の正しさを人に押し付けるのではなく、ただ自分が悪いことをしないように気をつけていなさい。人に「変われ」と言っても、無駄なことで、できることは自分が変わることだけです。

「信じない者ではなく、信じる者になりなさい」
相手に証拠を求めるということは「私はあなたの言葉を信用していません」と言っているようなものです。相手を信じること、これが人間関係の基本です。

「いつまでも残るのは信仰と希望と愛、これら三つです」
不安じゃなくて希望を持て。意識的に希望を持つようにする。人間の脳みそは放っておくと不安ばかり考えるんだから。

そしてその「希望」の根拠を神様に起きなさい、と教えているのが聖書である。

つまり「不安じゃなくて希望を持ちなさいよ!私がついてるんだから!」という神様からのメッセージが聖書なのだ。

そして聖書とは、「思いあがるなよ。お前だけの力なんてどうせ大したことないんだから。周りに頼りなさい。私に頼りなさい。肩の力を抜きなさい。」と言ってくれてるのかな、と評者は思った。だけど評者の場合ちょっと力を抜きすぎかもしれないから、気をつけよう。

評者は、とくに何かを信仰しているわけではない。しいて言えば、「アドラー心理学」が一番共感出来るところがあるなと思うくらいだった。けれど本書を読み、今まで堅苦しくて、どこか危ない印象だった宗教に非常に親近感をもてた。

宗教とは世界の教養、文化であり、これだけ多くのことを学べるものを見逃しているのはむしろ非常にもったいないと、今は感じる。だから入信する、というわけではないが、これからは偏見を持たずに宗教からも哲学からも人からも、いい部分を見つけ出して、いいとこ取りをしていこうと思う。

そしてそうやって探し出したいい部分は、よく見てみるとそれぞれに共通している考え方だったりするところも、また面白い。なんだか自分哲学が確立していってるみたいな感覚があって楽しい。改めて読書の楽しみがひとつ増えた気がする。

ちなみに、著者のtwitterアカウント「上馬キリスト教会」もとてもためになって面白いので是非フォローしてみてください。

 

 

 

 

 

【書評】経営戦略の常道とは?『経営者が語る戦略教室』

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本書は、自らの体験を基に、経営戦略の要点を語る日経新聞の連載をまとめたもので、22人の著名な経営者の記事が掲載されている。
それぞれ、業態も企業規模も社歴も異なるので内容も様々。参考になるものもあれば、そうでもないのがあるのも、読み手次第とも言える。

「業績回復に挑む」、「ITでニーズを掘る」、「新たな市場を拓く」、「グローバル展開に挑む」、「人材を育てる・生かす」、「「ものづくり」にこだわる」、「地方からのオンリーワン」と、七つの章に分けて、三社程度ずつ書かれており、また、各章の最後には大学教授の解説も付記されているので、興味のある章から読まれるのも良いかもしれない。

私にとって、気になった箇所のうちの幾つかを以下に記そう。

「客へのリサーチを基に新メニューは企画するな」
低カロリーメニューを求める声は多いが、実際に売れる商品は違う。

イノベーションとは常識を否定することから始まる。
「創造的破壊」。破壊が先で、後に創造が来る順番が大事だ。創造的破壊が新たな常識を生み出し、明確な需要として具体化していく。前例を捨てずに加えるだけの決断なら誰でもできる。
従来の枠組みを超えるサービスを打ち出せる会社が生き残る。そこで武器になるのは、専門性が裏打ちする知恵である。

一度知ってしまうと元に戻れない世界「不可逆性のある未来」。この不可逆性があれば、たとえ「いま」と「未来」の格差が大きくても埋めることが可能だ。逆に容易に実現できる未来を目指すと当事者の熱量が十分ではなく、失敗のリスクが高まる。

困難に見える分野への進出はだれもがためらうので、チャレンジャーには好都合だ。ビジネスにおける"土砂降り"はむしろチャンスなのである。

事実を積み上げ、推測される将来を、自分に都合が悪いからといって否定することはしない。熟慮の末に必要と判断したら、実現に多少の困難を伴っても迷わず実行する。
同じ場所にはとどまれない。何もやらないリスクは高い。

皆、実に挑戦的で魅力的に映る言葉たちである。
そして、経営学者であるピーター・ドラッカーは言うのだ。
「経営の根幹は、顧客創造」であると。

 

 

経営者が語る戦略教室 (日経ビジネス人文庫)

経営者が語る戦略教室 (日経ビジネス人文庫)

  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 文庫