秋元康さんの推薦文を読めば、きっとこの本を読みたくなる。「見城徹の読書は血の匂いがする。ただ、文字を追って『読了』と悦に入っている輩など、足下にも及ばない。書を貪り喰ったものだけが知る恍惚の表情を浮かべている。著者の内臓を喰らい、口から真っ赤な血を滴らせている」。おそらく誰もが自身の読書を反省させられたのではないだろうか。僕もこの文句にやられて本書に飛びついた。
この本は見城徹という編集者の人生が、いかに読書によって形作られたかが描かれている。虐めという現実から逃避するための紀行記、学生運動の最中に精神的支柱となっていた本、編集者として関わった大物・新人作家の作品など。単なる作品紹介ではなく、本が一人の人間の生き方にダイナミックに作用していることが伝わってくる。
個人的に読んでほしいのは「意識が高い」と自覚のあるビジネスマンだ。読書を情報収集と捉え、いかに効率良くアウトプットを高めながら読めるかを重要視している方々。僕もその一人だったが本書を読んで、勿体ない読み方をしていたかな、と反省した。効率重視も悪くないが、人生はもっと奥深いのではないか。もっと五感を研ぎ澄まし、非効率な生き方をしてもいいのではないか。その体験をさせてくれるのが読書ではなかろうか。
自身の読書の仕方に疑問を持ったら、ぜひ読んでほしい。