本書は半世紀を超えて愛され続ける世界的名著であるが、随所に描かれた挿絵や表紙のイラストも著者によるものだ。また、ここ最近あちらこちらで本書が話題になったことから、何か今の自分に意味があるのではと思い読んでみることにした。
訳者によると本書の魅力は、人間性をないがしろにした大人の世界と子供のこころ。そしてそこに向かい合う王子様の発するメッセージ。また評論家からは社会批判の書とも呼ばれているが、世の中のことがわからなくなった時、恋や愛を考えた時にも本書を読むと、新しく豊かな気持ちになるため、繰り返し読むことにより毎回新たな気づきが得られるそうだ。
ストーリーは、飛行士でもある著者自身が不時着した体験が元になっている。自分の住む小さな星を離れた王子様が訪れたのは、自分の権威を守る王様が一人で住む星、大物気取りの男が一人で住む星、自分の恥を忘れるために酒浸りになる男が住む星、自分を有能だと思い、数や所有することを重要に考える実業家の星など、よくいる典型的な大人像を表しているが、王子様にとっては理解できない人ばかり。そして最終的にやってきた地球で真の友人と出会い、勘違いの元となる言葉は使わず、心でものを見ることの大切さを教わった。
また、心から分かり合える人に出会うことができないまま生きてきた主人公は、王子様がかけがえのない存在となり、一緒に過ごすうちに人生で大切なことを思い出した。誰しもかつては子供だったが、そのことを忘れずにいる大人はあまりいない。子供ごころを失わずにいる人は、物事を見る目に曇りがないという。本書を読むことにより、大人に子供ごころを取り戻させ、この世をもっと明るくしようと考えたそうだ。