HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】今は味わえない世界『たった一人の熱狂』

 

「読書という荒野」に引き続き、見城徹さんの著作。前作でもエネルギーをもらったが、それが中毒になって本作も読んでしまった。「圧倒的な成果を出して周りを 捻じ伏せろ」。本作も一歩踏み出す勇気、批判に負けず踏ん張る力を与えてくれる。

本作は755というSNSで、見城さんが読者の質問に本気で回答した内容を元に構成されている。各章の扉絵で見城さんがSNS風に呟いている演出が心温まる。最近のネット事情に疎い見城さんが、不器用なりにも真剣に若者達と向き合っている様子が伝わってくる。その様子がカッコいいと思うと同時に、なんだか可愛いなとも思えてしまう。

前作は見城さんがこれまで読んできた本を元にかなりディープな話をしていたが、本作はそれに比べるとライトに感じた。むしろディープな内面を持つ見城さんが、ライトな若者達と接するとこのようなコントラストが生まれるのかという面白さがあった。個人的には前作のようなハラワタを曝け出すような話が好きだが、これはこれで新鮮だ。

オススメするのは、やはり今の生活に物足りなさを感じている若者だろう。楽しいけれど何か足りない、不自由はないけれどもっと冒険したい。そんな人は一読してみると、新たな世界が広がるかもしれない。今の時代では味わえない、奇天烈で情熱的な世界を見城さんが垣間見させてくれる。

癖になるのでぜひ。

 

 

【書評】青野くんは付き合って2週間で死にました『青野くんに触りたいから死にたい』

 

主人公は男性経験ゼロの女子高生。男の子と喋っただけで「彼氏できちゃうのかもしれない!!」となるような天然だ。初めて喋った男の子に告白し、交際を始めるが、2週間後彼氏は交通事故で亡くなってしまう。

その後彼氏は幽霊となり、主人公と一緒に過ごすことになる。「触れ合えない2人のラブストーリー」。一見そんな王道恋愛マンガに見えるのだが、なにか違和感。不可解な事件も起こり始める。ホラー?

ブコメからホラーへ展開。かわいい少女マンガ風の絵柄も無機質で怖く見えてくる。彼氏の目がやはり死んでるというか。

本作は作者の椎名 うみさんが息抜きでTwitterに投稿した「幽霊の男の子と付き合ってる女の子」の話を原型とする。

一途な女子高生が作り出す狂気・暴走。今後の展開がまるで読めない。暑い夏のお供にホラー漫画はいかがでしょうか?

 

 

【書評】本は先生、先生は選び放題!『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』

 

著者は、フランスの原子力庁で研究者として勤務し、またMENSAの会員になることにより世界中の多くの「頭のいい人」たちと出会った。世界に通用する頭のいい人は、どんな人で、どんなことを心がけているのか。またそのような人のようになるには、どうしたらいいのか。著者の専門でもある脳科学の分野から見ても理にかなっている彼らの行動はどのようなものなのか。

本書で紹介する頭のいい人の一人は、爵位を持ち20カ国語を操り、大学で言語学を教えるイタリア系ユダヤ人。そんな肩書きとは裏腹に、幼い頃から恵まれず過酷な時代を送った。また、自由にできる財産はないのに、継ぐべきものを狙う人から身を守る苦労が絶えなかったそうだ。周りには誰も味方がいなく、心が折れそうな時も負けない心を持つことができたのは、世界中の多くの本があったから。

良い先生や上司、尊敬できる人に恵まれることは稀であり、誰も味方がいなく一人で悩みを抱えながら過ごすことになったとしても本を読めば、生きる指針や、前向きに生きるコツ、また友達さえもその中から見つけることができると、彼はある教師から教わった。いつでも好きな時に、好きな分野を自分のペースで読むことができ、新しい世界を知ることができる本のおかげで、たった一人でも強い意志を保ち続けることができたそうだ。

著者が感じた世界に通用する頭のいい人は、ただ秀才というのではなく、逆境も自分の味方にして生き抜いていくことであり、それは特に日本人には欠けていると感じたそうだ。しかしそれは、頭の良し悪しではなく、意識を変えるだけで誰でも習得でき、また世界で通用するスキルは、日本でも通用するはずだと考え本書が作られた。著者によると本書は、世界基準の自分を目指す人が自らを磨くために楽しめる本なのだという。

 

 

【書評】眺めるだけで楽しい『死ぬまでに観たい映画1001本』

 

漫画で書評を描いてみようのコーナーです。
さて、この本、観たことある映画・無い映画、へー、そんな評価をされてるんだな、そんな話だったっけ?有名だけど観たこと無いな等々…。ジブリではアレが入っててアレは入ってないです。

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【書評】会計がわからんで経営ができるか。『稲盛和夫の実学―経営と会計』

 

経営者は、自社の経営の実態を正確に把握した上で、的確な経営判断を下さねばならない。そのためには会計原則、会計処理にも精通していることが前提になると、著者の稲盛和夫は言う。
稲盛氏は、27歳の時に京セラを創業し、ゼロから経営を学んでいく過程で、企業を長期的に発展させるためには、企業活動の実態が正確に把握されなければならず、また、経営に関する数字は、すべていかなる操作も加えられない唯一の真実を示すものでなければならない、と結論づけた。
本書は、「人間として正しいことを追求していく」という経営哲学をベースに「会計の原則」を確立したという稲盛氏が考える経営の要諦、原理原則を会計的な視点から表現したものである。
また、本書の後半には、氏が塾長を務めていた盛和塾に於ける、塾生たちである経営者たちとの「経営問答」が掲載されており、会計的な実際の悩みに対し、幾多のアドバイスを与えている。

「筋肉質経営の原則」
固定費の増加を警戒すること。間接人員は増やさない。余裕を持って持ち堪えられる範囲で固定費を増やし、利益率の低下には注意しなさい。

「土俵の真ん中で相撲を取れ」
商機に際し心配なく手が打てるように、常日頃から余裕が持てるように経営をすすめなさい。

話題はやがて、数字としてだけではない「目標設定」にも及ぶ。
経営者が会社について誰よりも真剣に考え、私心をはさむことなく、自らの意志で決断し、つくっていくものが経営の目標というものです。
高い低いではなく、まずは、経営者としてあなたが「こうありたい」と思う数字を持つことです。そのうえで、決めた目標を社員全員に、「やろう」と思わせるかどうかなのです。
不思議なことに集まる人間の数が多いほど、新たなものに挑戦しようという気持ちは隠れてしまいがちになるのです。経営者は、人間の持っている挑戦したいという新鮮な気持ちを表に引っ張り出すことができなければなりません。それにはやはり、思い切った目標でなければならない。
人は高い目標を掲げ、さまざまな困難を乗り越える中でこそ、喜びや、やりがいを感じることができるものです。

氏は、経営者のもっとも大事な仕事とは、将来に向かって大きな夢を描き、仕事の意義を明確にし、従業員の心に火をつけることだと言う。これこそがリーダーに与えられた大きな役割だというのだ。


稲盛和夫実学―経営と会計
作者:稲盛和夫
発売日:2007年11月7日
メディア:文庫本

 

 

【書評】なぜ自分の「価値」を高めればいいのか 『お金2.0』


従来の資本主義が限界を迎え、「価値主義」というものに世の中が移ってきていることを非常に分かりやすく解説した本だ。本書が出版されたのは2017年11月。もう4年近く前である。今更読んでいるのが恥ずかしいが、恥を捨てて紹介する。
価値主義でいうところの価値とは、利用価値(役に立つもの。資本主義でも扱われているもの)、内面的価値(愛情、共感、興奮、好意、信頼など)、そして社会的価値(社会全体の持続性を高める活動)の3つだ。そして世の中は、お金の価値が相対的に下がり、内面的価値、あるいは社会的価値の重要性が増している。分かりやすい例で言うと、お金が無くても人望が厚くネットワークがあればクラウドファンディングでお金を集められる。つまり価値は換金可能なのだ。
この話を妻にしたところ、「それでもお金がないとモノは買えないよね」と言われた。まぁたしかに今はそうなのだが、将来は分からない。ベーシックインカムが導入されれば、お金の価値はさらに下がる。個人レベルでも金余りが起こる。その時に向けて準備を始めた方が良さそうだ。いやというよりも、もっと自由に生き始めて良さそうだ。
「なんとなく今の時代、内面的価値とか利他の気持ちが大切というのは分かるけど、なんかしっくりこない…」という人にはオススメだ。私はすごく腹落ちした。「自身の価値を高めていく」という一つの指針は、モヤモヤしていた視界をさっと開いてくれた。
ぜひ同じ体験を皆さんにもしてほしい。

 

 

【書評】やっぱキングダムよりこっちかな。『三国志』

 

大昔の中国の戦記物。その代表格とされているのが三国志である。
国を三つに分けた国盗り合戦であり、その三つとは曹操の魏、孫権の呉、そして劉備の蜀である。
本作では、蜀の劉備を主人公と捉えて描かれているのだが、昔の中国では、国ごとに各々の歴史を書したものを遺しており、三国志については蜀史をベースにしているからというのがその由縁だ。
なので、本来の三国志とは、日付と何が起きたかの記録史であるのだが、その後に物語性を加えられ世に現れたのが、通俗歴史小説三国志演義である。
本書も含め、通常知られている三国志とは、この三国志演義が元になっているのである。

確かに、劉備には主人公たり得る素地は多い。
まず、貧しいものの、家柄は前漢の王様の末裔。
滅んでしまった漢を復興させようという至極真っ当な志。
張飛関羽との出会いから、「我等三人生まれた月日は違えども、同年、同月、同日に死せん事を願わん」と、有名な桃園の誓いによって義兄弟の契りを結ぶ、というドラマ性。
そして、徳の人という善人イメージを前面に出しているという具合。
でも、劉備は意外にも窮地の際にはことごとく家族を捨て去って逃げの一手だったりもしているのだけれども。
まぁ、この時代の中国に於ける「義」というものは、現代社会から考えると理解できない類いのものなので、これも仕方がないのかもしれない。
例えば、劉備達三人が、一夜の宿を求めて老人と娘の二人っきりの民家を頼る。
食卓に娘が姿を見せぬことを不思議に思い、老人に尋ねると、老人は「折角お寄りいただいたのに食事も出せないのでは申し訳ない。その為に娘は・・・」と言うのである。
劉備たちの腹に収まったのは娘の肉という訳で、これに劉備達も感激する、という挿話があったとどこかで読んだか聞いた記憶がある。これを当時の「義」というのだと言うのだが、ちょっとしたオカルトであり、さすがに現代の三国志ではカットされている。

それにしてもさすが中国で、物語のスケールが兎に角でかい。この当時の中国は、現代に比べてみれば、その国土とされた範囲は相当に狭いとは言え、それを三つに分けたのだから、関わる人員もそれぞれ膨大である。
一度の出兵で何万人もが死ぬ。たった一日の小競り合いで数千人が死ぬ。
そして一旦始めた戦は永年続く。
この三国志にしてみても、日本で言えば卑弥呼邪馬台国の時代から始まって、100年以上続く物語であるのだ。
日本に於ける最大規模の闘いであった関ヶ原ですら、実際の戦に要した時間は八時間に過ぎない。
しかも、この三国志は、劉備曹操孫権の時代までしか描いておらず、その後の展開が面白みに欠けるという理由によって、結局どの国が全土を治めたのかまでキッチリと書くことを放棄して終わっているのだ。
なんとも壮大な、世紀を股にかけた戦史なのである。
ジョン・ウー監督の『レッドクリフ』などという、アホっぽいふざけた映画を観て満足していてはならない。

なお、三国志は数多くの作家が小説を書いているが、今回取り上げたのは吉川英治版である。
戦時中の1939年から1943年まで新聞連載されたもので、当時絶大な人気を博した、ザ・三国志とでも言うべきものである。

三国志
作者:吉川英治
発売日:1989年4月11日
メディア:文庫本

 

 

【書評】本当に大事なものは目に見えない『星の王子さま』

 

本書は半世紀を超えて愛され続ける世界的名著であるが、随所に描かれた挿絵や表紙のイラストも著者によるものだ。また、ここ最近あちらこちらで本書が話題になったことから、何か今の自分に意味があるのではと思い読んでみることにした。

訳者によると本書の魅力は、人間性をないがしろにした大人の世界と子供のこころ。そしてそこに向かい合う王子様の発するメッセージ。また評論家からは社会批判の書とも呼ばれているが、世の中のことがわからなくなった時、恋や愛を考えた時にも本書を読むと、新しく豊かな気持ちになるため、繰り返し読むことにより毎回新たな気づきが得られるそうだ。

ストーリーは、飛行士でもある著者自身が不時着した体験が元になっている。自分の住む小さな星を離れた王子様が訪れたのは、自分の権威を守る王様が一人で住む星、大物気取りの男が一人で住む星、自分の恥を忘れるために酒浸りになる男が住む星、自分を有能だと思い、数や所有することを重要に考える実業家の星など、よくいる典型的な大人像を表しているが、王子様にとっては理解できない人ばかり。そして最終的にやってきた地球で真の友人と出会い、勘違いの元となる言葉は使わず、心でものを見ることの大切さを教わった。

また、心から分かり合える人に出会うことができないまま生きてきた主人公は、王子様がかけがえのない存在となり、一緒に過ごすうちに人生で大切なことを思い出した。誰しもかつては子供だったが、そのことを忘れずにいる大人はあまりいない。子供ごころを失わずにいる人は、物事を見る目に曇りがないという。本書を読むことにより、大人に子供ごころを取り戻させ、この世をもっと明るくしようと考えたそうだ。

 

 

【書評】意識の高いビジネスマンへ 『読書という荒野』


秋元康さんの推薦文を読めば、きっとこの本を読みたくなる。「見城徹の読書は血の匂いがする。ただ、文字を追って『読了』と悦に入っている輩など、足下にも及ばない。書を貪り喰ったものだけが知る恍惚の表情を浮かべている。著者の内臓を喰らい、口から真っ赤な血を滴らせている」。おそらく誰もが自身の読書を反省させられたのではないだろうか。僕もこの文句にやられて本書に飛びついた。
この本は見城徹という編集者の人生が、いかに読書によって形作られたかが描かれている。虐めという現実から逃避するための紀行記、学生運動の最中に精神的支柱となっていた本、編集者として関わった大物・新人作家の作品など。単なる作品紹介ではなく、本が一人の人間の生き方にダイナミックに作用していることが伝わってくる。
個人的に読んでほしいのは「意識が高い」と自覚のあるビジネスマンだ。読書を情報収集と捉え、いかに効率良くアウトプットを高めながら読めるかを重要視している方々。僕もその一人だったが本書を読んで、勿体ない読み方をしていたかな、と反省した。効率重視も悪くないが、人生はもっと奥深いのではないか。もっと五感を研ぎ澄まし、非効率な生き方をしてもいいのではないか。その体験をさせてくれるのが読書ではなかろうか。
自身の読書の仕方に疑問を持ったら、ぜひ読んでほしい。

 

 

【書評】心に火を灯せ 『死ぬこと以外かすり傷』


HIUでSALON DESIGNのライターをさせてもらったことから編集に興味が湧き、ミノ編に入った。ミノ編に入るならばということで、周回遅れながら本書を手に取った。
まず感じたのは、編集という仕事への誤解だ。なんとなく編集者というと、世の中の動きを読み、売れそうな本の企画を立て、著者にインタビューして良い本に仕上げるというイメージを持っていた。それはそれで間違っていないのだろうが、「著者と関係性を作る」というところが最も重要ではないだろうか。そして箕輪さんのように媚びずに全身全霊で著者と関係性を作るには、己を曝け出せるかどうかが鍵となる。まさしく人間力が問われる仕事だと感じた。
その上で、言うまでもないかもしれないが、箕輪さんは変わってるなぁと思った。高校生の頃は教室の机の上で亀を飼っていたらしい。また映画館では、ディズニー映画のクライマックスシーンでトイレに行きたくなったが、トイレに立ってその場を白けさせたくないと思いその場でコップの中に放出したそうだ。「人と違う何者かになりたい」という思いは様々な形で表れる。
読んでほしいのは、毎日に物足りなさを感じている人だ。編集者に興味が無くても全く問題ないと思う。何かに熱狂すると人生が変わっていく。それが端的にテンポ良く書かれているので一気に読まされてしまう。読後には「何かしたい」という思いが溢れているだろう。
心に火を灯したい方はぜひ。

 

死ぬこと以外かすり傷

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