HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】次回作の脚本家募集中!!『軍産複合体のアメリカ~戦争をやめられない理由』

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今年に入って、イランのソレイマニ司令官が米軍によって殺害された。トランプ大統領はその正当性を主張。その後イランによる民間機の誤射などいろいろなことがあり、これを書いている1月16日時点では戦争には突入しなさそうだ。私は司令官の殺害の報を聞いて戦争モードが高まりつつある時に、こう思ったのだ。「軍産複合体からトランプ大統領に圧力がかかったのかな」と。

軍産複合体とは軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体を指す概念である。当然それぞれの私企業は、それぞれが経済活動をして会社を成り立たせているわけである。そういった企業は戦争の時のみに突如として出現するわけではない。普段から存在しているのである。すなわち普段から危機を煽り、武器を売るために紛争をけしかけて、あわよくば戦争を起こすなどをして需要を保つ必要があるわけだ。でなければ倒産の可能性がある。

本書はそんな軍産複合体アメリカの政治と切っても切れない関係にあるということを書いている。軍産複合体アメリカ政府とのロビー活動は絶やさない。他国を無理やり敵国に仕立て上げて、世論を誘導し、戦争を仕掛ける。そうすることで軍産複合体は潤う。現にイラク戦争では、大量破壊兵器が見つからなかったのに、当時も無理やり戦争をしたではないか。それはまさしく軍産複合体からの圧力があったのではないかと。そんな金儲けの理由で多くの人命を殺めるような戦争を行うのかと思われるかもしれないが、アメリカの軍需産業が巨大すぎてあながち嘘とも思えなくなってくるのだ。

著者である宮田律(おさむ)氏は日本のイスラム研究者。イスラムや中東、中央アジアに関する分析の本を多数書いている。イスラムの紛争やイスラム過激派の研究をする中で、今回のテーマに辿り着いたのではないかとも思われる。今年のイランの際にも、報道番組等で呼ばれていたりするので興味のある方はチェックしてもらいたい。

私は、軍産複合体軍需産業に関する本をよく読んでいた時期があった。そのため、アメリカに限らず他国で戦争や紛争が起きているニュースを見るたびに、「これも軍需産業の営業の成果かな」とか「この戦争の脚本家は誰なのかな」とかそんな偏った見方ばかりしてしまう。全部が全部そうではないとは思うが、そういった要素も多分にあるのではないか。戦争というものに対して今までとは違う見方をしてみたい人にオススメだ。

 

軍産複合体のアメリカ―戦争をやめられない理由

軍産複合体のアメリカ―戦争をやめられない理由

  • 作者:宮田 律
  • 出版社/メーカー: 青灯社
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】こんな奴は応援したくない! 『マンガで分かる心療内科 依存症編(ネット・スマホ・ゲーム・ギャンブル・ポルノ)』

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本書はマンガで分かる心療内科シリーズの一冊であり、依存症の中でも行為依存について紹介している。物質依存である(酒・タバコ・薬物)の巻もあるので、興味のある人はそちらも読んでもらいたい。本書も他の巻同様、マンガで面白おかしく解説されていて、読み終わる頃には依存症について知り、解決方法まで頭に入れることができる。

ネットはヘロインと同じ。ネットが麻薬と同じだって。そんな馬鹿なと思いたいが、1998年のロンドンの研究では50分間ゲームをするとドーパミンの放出が2倍に増えていたという研究結果がある。覚醒剤を静脈注射するとドーパミンの量は2.3倍になるとのことだ。また、中国でネット依存症の青少年17人とそうでない16人の脳を比較したところ、ネット依存症者は脳の前頭前野に神経繊維の損傷が見られることが多く、これは麻薬中毒者と同じ所見を満たしていたとのことだ。麻薬と同じぐらいの効果が出るなんて、にわかには信じがたいが、おそらく事実なのだろう。そこまでは、やっていないと思うが自分も注意しなければ。

依存していることをやめる方法。大切なのは最初からやらないことだ。何を当たり前なことを、それができたら依存してないって。でもそれが大事なのさ。「ちょっとだけで終わらせられない自分は何て意志が弱いのだ」とか後悔する必要は無い。やらなければ後悔しないのだから。「ちょっとだけ」という気持ちが命取り。数分程度のつもりでも気がつけば数時間になってしまう。これを続けたらヤバイかもと思うものは、ちょっとだけ行おうと考えるのではなくて、一度断ち切ってみよう。

自分でそれが熱中していていいものなのか、依存していてダメなものなのかの判断に自信が無くなったら、知人に置き換えて考えてみよう。知人が同じことをしていた時に応援ができるのかどうか。応援できないものだったら、自分もそれを止めた方がいい。

私も時々YouTubeの関連動画を流し見したり、Twitterを漫然と見ていたり、将棋アプリを指しすぎたりとネットに依存してしまうことがある。やり始めている時にはとても楽しい気がしているのだが、気がつくと多くの時間を浪費してしまい、後悔する。本書にも書いているが、自分の意志の力で何とかしようとすることはとても無謀なので、無益なことをしそうだなと感じたら、何もしないで眠ろう。

 

 

【書評】何度も読んでしまう推理小説『名探偵の掟』

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本書を推理小説と呼んでいいのかどうかは意見の分かれるところかもしれない。とはいえ、探偵が事件を解決していくので推理小説ということでいいだろう。通常の推理小説は何度も読み返すということはない。1回読んで、その後の答え合わせのためにもう1度振り返って読むぐらいだろう。しかし本書は、時々読み返したくなってしまう。

本書は名探偵である天下一大五郎が、大河原警部とともに難事件を解いていく。12の事件があり、それぞれが天下一シリーズの1つの事件ということになっている。
ストーリーは、事件が起こり、天下一と大河原警部が、探偵と警察としての関係性の会話をする。その後、場面が止まり、登場人物である天下一と大河原警部がこのストーリーはどうなのか、このトリックはどうなのかと私見を話し出す。ある程度の私見が出たところで、再び場面が動き出して2人とも役を演じ切る。要は、作中で登場人物の視点を感じ取ることができるということだ。この作品に限らず、ドラマでも映画でもいいのだが私含めほとんどの人は作品を1つのものとして全体で見ていると思う。そうではなく、登場人物視点で1つの作品を感じ取ってみるという見方も面白いのではないかという気づきが得られる。

正直、読者は犯人を当てることなんてどうでもいいという指摘が出てくる。私も推理小説を読み始めの頃は、それなりに犯人を推理し、トリックも考えて読み進めていたこともあったがなかなか当たることがなく、いつしかその作業は行わなくなり、推理小説も読み進めるだけになっていた。もちろんその考えでも良いとは思うが、作者としてはできるなら読者にも推理をしながら読み進めてほしいと思うのだろう。読者が読者なりに推理をして、それを上回る視点のトリックを作者が示し喝采を浴びる。それこそが推理小説を発表する作者の喜びなのかと感じられた。

本書の作者である東野圭吾といえば、出す作品が軒並み映像化される、いわゆる小説界のヒットメーカーだ。そんな華やかな東野圭吾の作品群を考えると、2009年にドラマ化されたとはいえ本書は異端である。いつも真面目な作品を書いている東野圭吾にもこんな一面があったのかと思わずニヤリとしてしまう。

上にも書いたが、登場人物の視点や読者への要望など、普通の推理小説では分からない気づきが得られる。また、東野圭吾の意外性が感じられる。そして何より、天下一大五郎と大河原警部のやり取りや、トリックが面白くて何度も読んでしまうのだ。真面目な推理小説に飽きた方にオススメしたい。

 

名探偵の掟 (講談社文庫)

名探偵の掟 (講談社文庫)

 

 

【書評】大昔から知られていた、失語症『失語症の源流を訪ねて 言語聴覚士のカルテから』

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主に脳血管障害の後遺症として発症する失語症。スムーズに話すことができない非流暢性失語、話すことはスムーズだが意味の通らない言葉を言ってしまう流暢性失語などいろいろなタイプがある。本書は、その失語症の解説もさることながら、失語症の源流すなわち失語症の歴史についてまとめられている。失語症の解説本は多く出ているが、歴史について詳しく触れている本は少ない。失語症について昔はどのように考えられていたのか、その変遷が分かる一冊だ。

高度救命医療により、それまでの時代では救えなかった命が救えるようになった。それに伴い、それまではあまり見られなかった後遺症が目に見えるようになってきている。そういった事情から、失語症の歴史自体はとても浅いものではないかと思っていた。しかし、紀元前17世紀のものと推定される古代エジプトの医療に関する書物には言語障害に関する少なくとも5例の記載があるということ。その時の原因はいわゆる頭部外傷であり、現代の原因として多い脳梗塞脳出血ではないが、そんな大昔からも言語障害に関する知見がある程度蓄えられていたことに私は驚いた。

それでは日本ではどうだろうか。日本では故大橋博司氏が1967年に『失語症』という本を記した。また、1982年には秋元らがヨーロッパにおける神経心理学の主要な研究論文を19世紀にまで遡って直接参照し、訳出した。そのおかげで日本における失語症の分野が発展したとのことである。ということは日本における失語症の学術的な歴史はまだまだ浅いといえるだろう。それまで失語症状を示す患者はいたはずだが、日本では失語症という概念が無かったために記憶障害や認知症等と混同されていたのだろうか。本書だけではそれが分からない。

著者の小嶋知幸氏は失語症の認知神経心理学的アプローチを提唱し、数多くの失語症に関する書物を出している。正に失語症の専門家であり、失語症分野に関わる人で彼を知らない人はほとんどいないだろう。失語症の解説や分析に関わる本は数多く出しているが、本書は失語症の歴史に焦点を当てるという他の本にはない構成となっている。

本書は普通に買うと3500円+税ということで、なかなか高めの本ではある。失語症領域やリハビリ領域の本ということを考えると特別高いわけではないが、一般的には高いだろう。失語症について目に見える症状だけではなく、俯瞰して学んでみたいという方にオススメだ。また、この書評では歴史についてばかり書いたが、大脳局在論、古典的言語情報処理モデル、認知神経心理学失語症状の説明など解説部分も充実している。失語症領域に関わる人以外には敷居が高いかもしれないが、歴史などの読み物としても読めるので、本屋で少し手に取ってみてはいかがだろうか。

 

失語症の源流を訪ねて: 言語聴覚士のカルテから

失語症の源流を訪ねて: 言語聴覚士のカルテから

  • 作者:小嶋知幸
  • 出版社/メーカー: 金原出版
  • 発売日: 2014/05/19
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】目の前の人を飽きさせるな!『堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン』

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私は今週、とある講演を行うことになっている。そのために資料の準備やシミュレーションをしているが、イマイチ自信が無かった。そんな時にこの本に出会った。正に今の私にピッタリの本である。私のように何らかの発表を控えている人や定期的に発表の機会がある人にはもちろん読んでもらいたいし、なかなか人前で話す機会がない人も、この本を読むことで変わってもらいたいと思う。それぐらいエッセンスが詰まっている。

相手に伝わらなければ意味がない。発表の際によくあることではあるが、緊張して早口になってミスをして恥ずかしくて退散をしてしまう。よくあることだが、凄く意味のないことだ。発表者が伝えたいことを伝えられなかったという点もさることながら、一番は目の前で聞いている人の時間を無駄にしたということだ。時間泥棒にならないためにも、しっかりと準備をして自信を持って、目の前の人に伝えよう。

なぜわざわざ発表をするのか。目の前で聞いてくれる人がいる。そもそも、この人達はなぜここに集まっているのだろう。ただ内容を知りたいだけなら、わざわざ会場まで来ずにメールでもチャットでも動画でも事足りるだろうに、なぜ私の目の前に集まってくれているのか。そのような視点を持ち、常に目の前の人を考えて、飽きさせない発表をする必要がある。

本書は堀江貴文氏の著書としては珍しくハウツー本である。プレゼンの技術や心構えを記している。今すぐにでも使える技術があるので、機会があったらそれぞれの技法をぜひ試して自分のものにしてもらいたい。

3分あれば、だいたいのことは伝えられる。なるほど、しかし私に与えられた講演時間は40分のようだ。どうしようか、でも基本は同じである。3分だろうが40分だろうが、まずは目の前の人のことを考えて伝えたい内容を飽きさせずに提供する。そうすればきっと、ゼロがイチになるだろうよ。Good luck!

 

堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン

堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン

  • 作者:堀江 貴文
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】僕はここにいてもいいんだ! 『マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編』

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本書は、アドラー心理学を漫画で楽しく笑いながら会得しようというものである。真面目にアドラー心理学を学びたい人は、『嫌われる勇気』などの類書を読めばいいだろう。本書はちょっとコミカルだが、読み終えるころにはアドラー心理学の何たるかを感じ取れるはずである。

物事は原因論ではなく目的論。人は過去の失敗から行動を制限してしまう。本人の中では過去に何らかの失敗をした。そのため、二度とあんな失敗をしたくないと考えて、同じような場面を避ける。一見、理にかなっているようにも思えるが、アドラー心理学ではそれを明確に否定する。失敗のトラウマに引きずられて行動できないのではない、本人が失敗したくないという明確な目的意識を持っているというように解釈するのだ。

嫌われてもいい。人からどう思われるかなんて気にするな。君がやりたいことや、良かれと思って何かをした結果、嫌われても気にするな。君の行動に対する他人の反応など千差万別。それこそ他人が思っていることなんて分かりようがないし、他人の反応を気にしての行動ほどむなしいものはない。何よりそれは君の人生ではなく、他人の人生を生きていることになってしまう。他人の反応なんて気にせずに、思いっきり行動しよう。

本書は、マンガで分かる心療内科シリーズの一冊である。原作者は精神科医のゆうきゆう氏、他にも多くの巻数を出している。裏表紙からその巻の内容が把握できることが多いので、裏表紙を見ながら興味のありそうなテーマの巻を読んでもらいたい。

「僕はここにいてもいいんだ!」書評のタイトルにも書いたが、私には新世紀エヴァンゲリオンのテレビアニメ版の最終回のこの言葉ならびに世界観が、アドラー心理学と妙にマッチするように感じている。私自身も昔は、他人の目を気にする行動をとっていた時期もあった。しかしそれは、ひどく窮屈で鬱々としていた。他人のための人生じゃない。自分のための人生を生きよう!

 

 

【書評】可愛いくて、ためになる♪ イラストで読むワイン教本』『ワインは楽しい!』

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この本とは、たまたま都内のおしゃれな雑貨屋さんで出会った。ワイングラスコーナーを眺めていたら、その間にさりげなく数冊のワイン本が立て掛けられており、その中の一冊だったのだ。

手に取ってみると大きくて、ずっしりと重たい。開いてみたら思わず「わぁ!」と小さく叫んでしまう。このボリュームなのに、全てがイラストで構成されていて、見た瞬間に感動してしまったのだ。

また何といっても内容がおもしろい。ワインに関する「A to Z」の全てが網羅されており、一般的なワイン本にはなかなか出てこないような類のトピックも多い。

例えば洋服についてしまったときのシミ抜き方法とか、「うーん、このワインは実に肉付きのいい太ももをしている!」と表現されたときの”太もも”ってどんな太ももだろうかと、5パターンの太もものイラストと共に「ブルゴーニュピノの赤ワインはこれだね」みたいノリである、たのしい♪

「ぶどうの果粒から品種まで」のページでは、その品種がどんな原材料で構成されているかが一目瞭然だ。例えばシャルドネなら、レモン・ライム・リンゴ・アーモンド・洋ナシなどが全てイラストで表現されているので、文字で説明されるラベルや店頭POPより、明らかに頭に入ってきやすいのだ。

まだ全てを読み切れていないが、ゆったり過ごせる時間に少しずつ読みたい。収穫期や醸造方法のページも興味深いし、個人的には「世界のワイン産地」ページや「料理とワインの組み合わせ」ページがお気に入り。(残ったワインをどんな料理にするかページも含めてね)

どっからどうみてもエグゼクティブ向けのワイン本ではなく、ふつうの人が日常気楽にワインを楽しめるよう、敷居を下げてくれる一冊だ。しかしながら内容は申し分なく素晴らしいため、グルメ通もワイン好きも「こんな本が欲しかった!」という人は多いのでは?

実はわたし、それほどアルコールを飲めるタイプではないのだが、この本のお陰で間違いなくワイン好きに近づいた。少しでも関心があれば是非、一家に一冊ご常備を♪

 

 

ワインは楽しい!【増補改訂版】-絵で読むワイン教本-

ワインは楽しい!【増補改訂版】-絵で読むワイン教本-

  • 作者:オフェリー・ネマン
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2018/10/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【ランキング】今週読まれた書評【2020/1/5-11】

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 1位

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2位

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まんがでわかる D・カーネギーの「人を動かす」「道は開ける」 (まんがでわかるシリーズ)

まんがでわかる D・カーネギーの「人を動かす」「道は開ける」 (まんがでわかるシリーズ)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/04/09
  • メディア: 単行本
 

 

3位

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超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド

超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド

  • 作者:鈴木 祐
  • 出版社/メーカー: 鉄人社
  • 発売日: 2018/05/22
  • メディア: 単行本
 

 

4位

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 5位

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6位

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7位

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8位

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9位

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10位

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【書評】職場の空気は業績との相関あり。クチコミデータから見えた強い組織の条件とは?『OPENNESS(オープネス) 職場の空気が結果を決める』

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社員若しくは元社員が評価コメントを寄せている企業のクチコミサイトを見たことはあるだろうか?「風通しのよさ」何点、「人材の長期育成」何点、「法令順守意識」何点で「待遇面の満足度」が何点・・・ そう、あれだ。

それら各項目の評価点から総合的にみえてくるものは、その「職場の空気」であり、「職場の空気」は業績結果を決める。

ひと昔前は「実際に働いてみなければ分からない」といわれた職場はいま、可視化され、企業はウソがつけなくなった。例えば表向きには「20代の成長環境がある」と言いながら、実態はそうでないと評価が下されれば、その企業の未来は厳しい。人材が確保できなくなるからだ。

起業するも良し、海外で働くも良しと働く人の選択肢は増え、何を重視し仕事を決めるのか、働く人の価値観も多様化している。そんな中、経営陣やリーダーは何に向き合い、どこに手を付ければ良いのか。本書はこうしたことを、数々のデータを用いその根拠を示しながら”職場の空気を科学し”具体策を講じる一冊だ。

平成30年間の中で時価総額を増やした企業と減らした企業とでは、評価項目のどこがどう違ったのか。また平成元年時点では未上場だが、令和元年時点では時価総額トップ20に入る3社の共通項は何か?

これらの分析から特に「風通しのよさ」「社員の士気」などは、結果を出す職場の空気を決定付ける重要項目と浮かび上がってくる。つまり、結果を出す職場の空気はこの3つの定義が高いというのである。

①経営開放性
②情報開放性
③自己開示性

著者はこの3つの定義こそがオープネスだという。

本書の前半はデータ分析を進めながら「オープネスとは何か」を考察し、後半ではオープネスをどう高めどう活用していくか、具体的な組織戦略に話が及ぶ。

読者がもし組織の一員であれば、自分の職場に重ねあわせながら、とても興味深く読めると思う。管理者の立場なら早速手をつけるべきことが見えてくるはずだ。ぼんやりと、でも間違いなく存在する「誰もが感じていること」にクリアな答えを示した1冊だ。

 

OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める

OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める

 

 

【書評】人生の最後に何を食べたい? 『最後まで口から食べるために①』

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過去には、飲み込みの機能が落ちたら胃瘻等の経管栄養を選択するというケースが多かった。対して現在は、何とか最期まで口から食べさせてあげたいという支援が流行となっており、少しでも食べられる可能性のある人には希望の持てる時代に変わってきている。
本書は、口から食べる支援の科学性と、対象者の立場を重んじた人間性を両立させた支援の必要性を軸として飲み込みに困難を抱える方との接し方、考え方を解説している。

本書の特徴としてイラストや見やすい図が多くて読みやすいことが挙げられる。パラパラとめくって最後のページまで見ることができるし、図の色合いもいいため記憶に残りやすい。他の摂食嚥下機能に関わる本はいかにも専門的な本であるという内容で文章量も多く、頭に入りづらいが、本書のように本当に伝えたいことをシンプルにまとめていると、これだけ分かりやすいのだなと感じられる。

誤嚥性肺炎で入院となりむせ込みが目立つから、ソフト食やミキサー食しか食べられない。本当は食べたいのに、何で食べられないのかと、生活への意欲が低下してしまう。本書でも具体例として触れられているし、私自身もそういったケースに触れることがある。もちろん食べたいからといって、全ての人が食べられるようになるわけではないが、本人の希望に沿えるような試行錯誤や、評価のやり直しなどを行う必要性を本書は与えてくれる。

著者である牧野日和氏は、博士(歯学)、言語聴覚士認定心理士の3つの立場より、食べる障害を有する対象者とその家族に、科学的視点と人間味あふれる視点を両立させた支援を実施している。人生の最後に何を食べようかという「お食い締め」という言葉も提唱している。

本書は著者の想いを世に広めるためか、分かりやすく書かれている。既存の飲み込みに関わる本は、看護師やリハビリ職などの医療職に向けたものが多いが、現場の栄養士や介護士または対象者の家族にも伝わりやすい内容だと思う。普段、飲み込みに障害がある方に関わらない人にとっては、どこまで理解しやすい内容と言えるかは分からないが、他の本よりは分かりやすいので、少しでも興味があれば読んでもらいたい。