HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

【書評】ものを知れば知るほど世界は味わい深くなる『漫画方丈記』

 

 

本書は、日本三大随筆の一つ『方丈記』の漫画版。800年以上にわたり読み継がれ日本最古の災害文学と言われている。また、物事は変わらないことが常識だと思われていたその時代、火災、大地震、竜巻、遷都等、大きな出来事により日本は変化した。それはまるで現在の世の中のよう。人々は、このような出来事が訪れても相変わらず悩みは尽きず、まるで誰もが自分の姿を恥じるように自分と人を比較し、身分の違いや噂話を気にしながらより生きづらく心休まらない日を過ごしている。

 

これを書いた鴨長明は、出世もうまくいかず全てのものが嫌になったが、他人からどうみられるかより心の自由を求めた。ものを知れば知るほど世界は味わい深くなり、それはとても幸せなこと。どんな世の中であっても自分の心を夢中にさせるものを求め、周りと比較せず今あるものに感謝し、心配ごとなくただ穏やかに過ごした。心が安らかであることが重要であり、何事も心の持ちようで決まる。どんなに珍しいものを持っていようと、どんな立派な家に住んでいようと意味をなさず、お金の有り無しや、見た目の良し悪しで付き合う相手を選ぶのはとても虚しいと言う。

 

世の中とは逆行する道を歩み、鴨長明の住む「方丈の庵」は、シンプルで快適さがわかるワンルーム。4畳半から6畳ほどの広さだが、そこには生活の間、仏道修行の間、芸術の間にわかれ、外には懸樋もあり必要最低限のものだけで工夫次第で機能的で快適に過ごすことが可能なのだ。

 

ストーリーの合間の「もしも長明が現代にいたら」では鴨長明がYouTuberになる。承認欲求を満たすためにフォロワー数を増やし、あっという間に人気インフルエンサーとなったが、権力者との繋がりがばれて大炎上。なかなかユーモアに溢れている。さらに、巻末には『方丈記』の原文が掲載されているため漫画版との違いや、より内容を深掘りしてみたり、自分なりの解釈をしてみるのも面白いだろう。