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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】変化する世界で求められている「意味の価値」『すべてのビジネスに、日本らしさを。』

 

ジャパン・アズ・ナンバーワン
そう言われた時代は遠い過去となった。それは何故なのだろう。
かつての日本は、先進諸国の技術に倣い、それを凌ぐ様な「低価格」、「品質」、「安定性」を以て、世界市場を席巻したのであった。だがその地位は、やがて下請けとして扱っていた近隣アジア諸国の台頭により奪われてしまったのである。
では、世界のマーケットに於いて、日本はこれからどうすれば良いのだろうか。それは、過去に於いて日本の躍進によって消費財のマーケットで苦しめられた欧米諸国が取った戦略をなぞることなのかもしれない。
即ち、「安さ」や、「通俗的」な面に頼ることなく、他者には真似の出来ない自分らしさを前面に打ち出し、それを価値化することだ。
それでは、日本らしさとは具体的に何だろうか。著者は、それを次の四つであると言う。
天命を知り追求する「求道心」
歴史に培われた「伝統的資産」
他者を受け入れる「調和の精神」
豊かな感受性による「美意識」
これらの日本らしさをビジネスに備えることが、これからの社会、世界、時代に於いて、多くの人の心を動かし、応援される価値の創造に繋がると考えていると言うのであった。

「安全」で「便利」なものが溢れている世の中で、人々が天秤にかける基準とは何か?
それは「意味」。
人々はそれを買う理由に求めている。
であれは、我々日本企業は、日本らしさを商品に備えさせることこそが「意味」を具有させ得る方途であろうと言うのである。
そして、海外向けのビジネスをしていない企業だからといって、決して無関係なことではないとも言う。なぜなら、「日本らしさ」は日本固有の魅力でありながら、現代社会で忘れられつつあるものだからだ。
均一化されたブランドが並ぶ現代のマーケットに於いて、失われた「日本らしさ」を再現できれば、多くの日本人の心に響くはず。「新しい」「美しい」「懐かしい」と反応があると言うのである。
本書では、「ミッション」、「ストラテジー」、「アイデア」、「エグゼキューション」という手立てを提示し、著者が手掛けたプロジェクトの数々を実例として挙げ、その手法を紐解いていく。

ただ、それらのほとんどが京都を舞台にしたものであるが故なのか、「歴史あるもの」=「日本らしさ」という観点に寄っており、はてさて、これを古都以外に存する中小企業が自分ごととして捉えられるのかは疑問だ。
マインドを以て「日本らしさ」を語り、現代を生きる中小企業へソリューションをもたらす内容を想像していた私にとっては、やや肩透かしであり、且つ、この本を読ませたいターゲット層はどこなのだろう? と頭を捻ってしまったのもまた事実である。

しかし、日本人のDNAに訴えかけ、かつての日本の良さを蘇らせ現代社会にアップデートすることで、新たな価値を持った「意味」のある商品づくりが可能となるのであれば、まさに日本人として本懐ではある。
方法論としてはともかく、概念を理解しておくことは損にはならないだろう。
少なくとも私にとっては、「本質的な価値を見つけ、それを必要とする人に出会わせること」という意見には腹落ちしたのである。


すべてのビジネスに、日本らしさを。
作者:各務 亮
発売日:2021年4月11日
メディア:単行本

 

すべてのビジネスに、日本らしさを。

すべてのビジネスに、日本らしさを。

  • 作者:各務 亮
  • 発売日: 2021/04/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)