2019年の統一地方選挙に合わせて、地方の政治を深堀りする取材をしたいという企画が立ち上がり、全国の3万2450人の地方議員(都道府県議会議員、市区町村議会議員)へ議員の活動に関するアンケートを実施した。各議会の事務局宛に人数分送付し、そのうちの59.6%にあたる1万9325人から回答を得た。本書は、そのアンケート結果からの地方議会の分析が主である。「地方議員は必要か」というタイトルなので地方議会に関わる人にとっては挑発的に思えるかもしれないが、「メディアは議員の不祥事の時しか報道せず良い活動はほとんど報道できていない」という思いもあり、全体的には地方議員に期待することや頑張ってほしいことが多く書かれている。
なるほど、そうだったのか・・・。評者はこの本の第1章を読むまで首長と地方議員の役割の違いが分かっていなかった。違いが分からないまま、選挙で投票し続けていた。どういうことかというと、首長には自治体の予算案を提案するという役割があり、対する地方議員は首長が提案してきた案を修正したり、質問や意見および議決することで一緒に作り上げていく役割はあるものの、地方議員の提案がそのまま直接、自治体の予算に反映されるわけではないということだ。それゆえに首長が選挙公約に挙げることは直接的に実現されやすいが、各議員が選挙の時に「こんなことを実現したい」と言うのは、私が当選した暁には、「首長に働きかけてそれを実現できるようにします」ということである。分かっている人には当たり前のことかもしれないが、私は今までその違いがよく分かっていなかった。
第5章には、議員のなり手不足について書いている。評者は地方議員のなり手不足問題は、当選時は良いにしても落選時に無職になってしまうという状況にあると思っている。平日の日中に議会が開催されるところが多いため、一般的な会社員が兼業しながら議員を行えるという環境は全国的にほとんど整っていない。そんな中でも長野県南部の喬木村議会では平成29年12月から夜間・休日議会を開催している。開催した上での検討点等は「休日・夜間議会の取り組みに関する議員検証アンケート取りまとめ結果」という言葉で検索してもらうと喬木村議会の資料が出てくるのでそれを見てもらいたい。夜間・休日議会を開催すること、それだけで、なり手不足の解消につながるわけではないようだが、なり手不足解消の有効な手法の1つにはなるのではないかということが示されている。その他の手法も組み合わせればより多くの人が自分が議員になることを考えやすく、活発な議会運営につながっていくのではと思う。
アンケートの分析からは、「そんな変な議員がいるのか」と驚くようなものもあるが、本書は全体的には地方議員の役割に期待するという内容である。地方議会に興味がある人、地方議員になりたいと思っている人、現に地方議員である人などにオススメできる。